
グローバルフードトレンド
急速に拡大する中国の輸入ベビーフード市場について
中国ではベビー用品市場が急速に拡大しています。その中でも注目すべきは、輸入ベビーフードの市場です。特に日本製ベビーフードは人気が高く、中国の親たちから支持を集めています。なぜ輸入ベビーフードが人気なのか、中国のマーケットに詳しいポリスター社に最新の市場情報と子育てにおける中国文化の両面から解説いただきます。
ベビー用品市場の黄金期
三人っ子政策をはじめとした産児制限の緩和や消費水準の向上、スマートフォンの普及などにより、中国のベビー用品市場の規模は拡大を続けています。
iiMedia Research(艾媒諮詢)の調査によると、2020年の中国のベビー用品規模は、4.08兆元(日本円で約69兆円)へ拡大しました。さらに2022年には5.58兆元(約95兆円)、2024年には7.63兆元(約130兆円)へと成長する事が予想されています。
需要拡大、輸入ベビーフード市場
ベビー用品市場が拡大していく中、注目されているのはベビーフード市場です。特に輸入ベビーフードの消費は大幅に拡大しています。
T-mallが運営する輸入品ECプラットフォーム「天猫国際」によると、最も売れたベビーフードは、粉ミルク・栄養補助飲料・離乳食・おやつ・調味料の5カテゴリーとなっています。それぞれ詳しくご紹介していきます。
1.粉ミルク
中国では、子どもの成長年齢に合わせた粉ミルクや、妊婦が胎児のために飲むマタニティ粉ミルクなど、用途が非常に細分化されています。さまざまなニーズが存在する「乳児用粉ミルクの輸入品市場」において、現在興味関心を寄せられている商品が「A2プロテイン」「母乳オリゴ糖HMO」です。
⇒ 特殊成分を配合したハイエンドな粉ミルク製品や、アレルギー予防に効果があるものとして注目されています。
2.栄養補助飲料
乳児用栄養補助飲料は、ベビーフード市場の中でも特に売上を伸ばしているカテゴリーです。子育てに熱心な若年層の親たちから強い関心を集めています。
⇒ 1歳未満の乳児向け栄養補助飲料の需要が広がる一方で、6~9歳の子ども向け栄養補助飲料の需要も根強い人気があります。中国の親たちは幼いころから質の良い栄養を摂取させることに熱心です。
3.離乳食
近年ではオーガニック製品が需要の拡大をみせていますが、特に急速に拡大した離乳食は「でんぶ」です。現在中国では、さまざまな栄養素を摂取させるために、複数の離乳食を組み合わせた食べさせ方が流行しています。その結果、混ぜ合わせやすい「でんぶ」が市場へ広まったと推測できます。一方、安定して売れている離乳食は、米粉を使用した離乳食です。
4.おやつ
おやつは子どもの味覚に合うものが選ばれています。一番人気のあるおやつは米で作られているパフや溶豆(※1)で、おやつ市場において最大規模となっています。また、海苔やソーセージといったニッチなカテゴリーの人気も急速に広がってきており、今後もバラエティに富んだおやつ市場が形成されていくだろうと予想されます。
子どもの味覚を満足させるためのおやつの市場は、異なる年齢層のニーズに応えるために、さらなる拡大が見込まれています。
※1 溶豆:ボーロのようなお菓子。
5.調味料
ベビー用調味料は、塩分や添加物の含まれた一般用商品を、子どもへ使いたくないという親たちのニーズに応えた商品です。ベビーフードカテゴリーの中でも最も急速に成長しています。主にベビー用の塩や醤油、ごま油やくるみ油といった調味料が市場に出回っていますが、乳幼児専用の調味料商品も増加傾向にあります。
ここまで、人気のベビーフードを5つのカテゴリーに分けてご紹介しましたが、ミルクひとつを取ってみてもさまざまな種類の商品が販売されていることが読み取れます。
次項では、何故このような商品の細分化が進んでいるのか、どのようにして輸入品ベビーフードに人気が集まったのかを中国文化から考察してみます。
子育てへの価値観
現在中国では、人口の約60%が子育てをしています。子育て世帯の中でも注目すべきなのは、1990年から1995年生まれの人々です。
彼らは乳幼児養育層の66%を占めており、最大の特徴は高学歴である割合が多いことです。最新技術が活用された新商品を積極的に購入し、子どもへの投資を惜しまず子育てをするため、企業は彼らのニーズに応えるべく、より細分化されたベビー用品を開発しています。
また、中国の「多子多福(※2)」と「敬老慈幼(※3)」といった「子どもを大切にする」という文化の根強さも、ベビー用品市場が大きく拡大する理由のひとつです。品質が良く、高くても良い物、良い食べ物を与えようという意識が非常に高いのです。
※2 多子多福:子沢山が福をもたらすという伝統的な考え方。
※3 敬老慈幼:古くからの儒教の教えで「親は敬うもの、子は守るもの」であり、「子の肉体は自分の血を分け与えたものであるから、子どもの存在は自己の存在の証であり、非常に大切なものである」という文化。
安心安全な日本製品への期待
ハイエンドな商品を求める親たちや、子どもを何よりも大切にする中国文化。加えて良い食べ物を与えたいという価値観によって、新たな技術で作られた諸外国の栄養食品や、安心安全のイメージを持つ日本製ベビーフードが求められるようになったと考えられます。
また前述したように、今後はベビー用品産業の更なる拡大が予想されます。それに伴い、輸入ベビーフードの需要も拡大していくことでしょう。特に日本製の持つ安心安全というイメージは、ベビーフード市場において未だ大きな需要があります。
次回は、中国におけるベビーフードの人気ブランドと商品の特徴について取り上げ、より中国の食育・食文化に迫ります。今後も目が離せないベビーフード市場をはじめ、中国のマーケット事情について、リサーチを続けていきます。
【参考文献】
・艾媒諮詢|2020年11月~12月 中国ベビー用品産業月次稼働・年末棚卸しデータ観測報告書
・「Tmall国際」輸入ベビー用品市場消費トレンド白書
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著者情報

- (株)ポリスター
- 日中双方のスタッフによる、日本企業様の中国進出のサポートをおこなっています。中国進出の戦略立案からリスク管理、消費者向けのブランディングやプロモーション、販路開拓などのサービスを提供しています。
https://www.polystar.yokohama/