捨てるではなく創り変える。循環型容器「edish」

捨てるではなく創り変える。循環型容器「edish」

テイクアウト需要が増え、資材包材への関心がこれまで以上に高まる中、商社の丸紅株式会社から誕生した循環型容器の「edish」が話題になっています。”循環型”の容器とはどんなものなのか、構想から1年でリリースを実現した、そのスピーディな開発背景を通じて、新しい食品容器の未来についてうかがいました。

お話をうかがった方

丸紅株式会社
担当課長
簗瀬 啓太 氏

“使い捨て”からの脱却
循環型容器「edish」とは?

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ー まずはじめに、循環型容器「edish」について教えてください。

循環型容器「edish」は、食品廃材を原料にした何度でも生まれ変わることのできる容器です。特徴のひとつが、これまでほとんど用途がなかった食品廃材を使用し、独自の技術で加工・成型している点です。製粉時に排出される小麦ふすまをはじめ、コーヒーやワイン、ジュースの搾り粕、竹など植物性の食品残渣であれば加工・成型が可能です。


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さらに、容器として利用した後は、食べ残しも合わせて堆肥に生まれ変わります。専用の回収装置に入れ、粉砕後に2〜3ヶ月かけて分解され堆肥化していきます。堆肥となった「edish」は再び畑に戻り、野菜を育てる養分となります。生育した野菜はさらに飲食店へと循環していく、2度のアップサイクルを実現したプロダクトです。


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ー 事業として容器に注目した理由は、皿の廃棄は環境資源を破壊する根っこであるという視点からだったのでしょうか?

そうですね。いまプラスチック製品への意識変化が高まっていますが、プラスチックから紙製の容器やストローに移行することがベストではないと考えています。紙容器も最終的には焼却処分をする過程で、CO2を排出してしまいますから。ですから、燃やさずに循環させていくということが、現状の最適解ではないかと。その点を解決するプロダクトを作り上げたかった背景があります。

また、食べ残しやタレで汚れた紙容器は、これまで捨てるしか選択肢がありませんでしたが、「edish」は食べ残しも含めたアップサイクルが可能です。使用後もさらに循環することで、ゴミの減量にもつながります。深刻化するゴミ処理問題と、年間612万トンにも及ぶ食品ロスの問題、こうした社会課題へのソリューションとして「edish」が誕生しました。


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構想からローンチまで1年。
既存事業で出会った技術からプロジェクト化

ー プロダクトの強みはなんといっても食品廃材を成形する技術だと感じます。その点は商社、丸紅のネットワークが功を奏したかたちでしょうか?

はい。私は元々紙パルプ関係の部署で、セルロースナノファイバーという新素材の開発に携わっていました。取引先であった、スピーカーの振動板を製造する企業の技術が、植物性の残渣を容器に成型するための独自技術とマッチングしたのです。また、全国の食品メーカーとの取引がありましたから、小麦ふすまの有効活用について相談をもらっていました。事業から出る食品廃材は量も多いですし、燃やすとしてもお金もかかります。その点をこの成形技術で解決できると気づいたんです。

また、生活者として体感したゴミ分別のストレスも事業を立ち上げる上で、大きな動機となりました。プラスチックゴミと燃えるゴミ、食品容器も食べ残しも一度にまとめて捨てられて有効活用できたら良いのに、という思いがありました。


ー 事業化のきっかけは、社内コンテストだったんですね。

2020年1月に社内のビジネスプランコンテストがあり応募したのがきかっけです。当時はサンプルを手作りで1種類作成した程度でしたが、その後事業ビジョンに共感してくださった株式会社ゼットン様をはじめ、パートナー企業とともにプロジェクトを進行していきました。2020年8月にオフィシャルサイトをリリースし、8月11日から株式会社ゼットン様と協同で葛西臨海公園での実証実験がスタートしました。

課題への気づきから、プロダクトのリリースまで、スピード感を持って進められたのは、丸紅ならではの幅広いネットワークがあったからこそ、実現可能だったのだと思います。持続型社会への取り組みとして新しいことにチャレンジしようと決めてよかったと思っています。


ー 運用していくなかで感じる課題などあったら教えてください。

新規事業は、やはり運用していかないと気づけない課題がたくさんあります(笑)。「edish」の場合だと容器として使用した後の2度目のアップサイクルの部分ですね。ゴミの量は日によって、季節によって変動します。種類、量、成分など廃棄されるゴミの量と、生み出される堆肥を高価値化し、安定供給するためのバランスが難しいです。また、コロナ禍で急増するテイクアウト、フードデリバリー方面で活用できると良いのですが、現状、個人の手に渡った後に、ゴミの集約ができる仕組みがまだありません。マネタイズ、ビジネスとしてスケールさせていくことの難しさを感じています。

ボトルネックではないですが、いま最大の課題は「認知」ですね。2021年は、とにかく使用してもらい認知拡大に注力していきたいと思っていて、さまざまな場所での実証実験を計画中です。
個人的に、マッチしそうだと感じているのは、キャンプ場などのアウトドアシーンですね。手ぶらでキャンプ場にきて「edish」を使ってBBQ。使用後は、食べ残しも一緒に回収BOXに入れれば、自然の中で土に帰っていきます。今後、地域と連携協力し実現できればと構想しています。

これまで廃棄していた貴重な資源を
今後は「どう活かすか」と考える未来へ

ー 最後に「edish」の発展を通じて、食品容器の未来をどのように創造していきたいと考えていますか?

予想以上に、食品廃材の有効利用への課題が大きいことを実感しています。実際に「廃材を活用してくれないか」とのお問い合わせが多かったんです。

背景としては、工場の立地など、地理的な条件のために処分するしか選択肢のない食品廃材や、自治体が頭を悩ませている放置竹林の存在があります。それらを「edish」の原料にすることで、これまで廃棄していたものを循環させていく未来の一端を担えたらと思ってます。

実際に2020年10月から11月には、静岡市・株式会社竹酔・里山保全団体アカリノワと提携し、市役所の食堂内で「edish」をお弁当容器として活用し、官民共同の地域密着型循環モデルの構築にも取り組みました。

食品業界ではモルト粕を飼料にするなど、できる取り組みは既におこなっていますが、活かしきれずにゴミになってしまう食品廃材がまだまだあります。「edish」のように、食品廃材をゴミにせず循環できる社会が実現できるよう、システムやルールが整っていくと良いですね。


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葛西臨海公園での実証実験では、実際に堆肥ができあがり、野菜や花、ハーブなどが生育しています。循環されたことが目に見えるとお客様の反応も変わって、そこに価値が生まれます。自分たちのアクションが「これだけ堆肥ができました、CO2を削減できました」につながったり、「edish」の事業ビジョンである「自分の食事が誰かの食事につながる」が可視化されたりしていくと、意識も変わっていくのかなと思います。

食品容器や食品廃材など、捨てることに対して、背徳感ではなく「次はどう使う」をみんなが考えていく。そんな未来を創っていけると良いですね。


▶循環型容器edish:https://edish-jp.com/
▶Instagram:https://www.instagram.com/edish_official/



writing support:Sayaka Takahashi



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