無印良品がペットボトルからアルミ缶に切り替えた理由

無印良品がペットボトルからアルミ缶に切り替えた理由

ストローにパッケージ、食品の容器まで、我々生活者の暮らしの中で欠かせないプラスチック。さまざまな環境問題への影響の大きさから、地方自治体によってはプラスチック製ストローの利用廃止が求められ、食品業界においてもプラスチックゴミ削減につながる取り組みが求められています。今回は、2020年7月から給水サービス「水プロジェクト」を開始し、2021年4月に飲料容器をペットボトルからアルミ缶に変更した、株式会社良品計画の商品開発担当部長である神宮氏にお話をうかがい、無印良品の環境問題に取り組む姿勢を学びます。

お話をうかがった方

株式会社良品計画
食品部 商品開発担当部長
神宮 隆行 氏

プラスチックゴミを減らす給水機設置から
ペットボトル撤廃へ

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▲2020年7月より、無印良品の店内に給水機を設置。誰でも利用できる給水サービスを開始。
113店舗でスタートし、現在300店舗を超える店舗にまで拡大しています。


ー 給水サービスの開始や、飲料容器をペットボトルからアルミ缶に変更するなど、プラスチックゴミ削減への取り組みは、どのように始まったのでしょうか。

以前、こちらの媒体でご取材いただいた時にご説明いたしましたが、良品計画では、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」という環境・社会に配慮した3つの視点を守りながら商品を開発しています。今回の取り組みも、昨今のプラスチックごみによる海洋汚染のニュースを目にして、無印良品の食品部として何かできることはないかと、考え出したのがはじまりです。

最初に立ち上がったのは「自分で詰める水のボトル」の販売と給水サービスの「水プロジェクト」です。今は水を買うのが当たり前になっていますが、以前自分たちが子どもの頃などは水道水を何の疑問もなく飲んでいましたよね。あの頃のように、水を売るのではなく給水できるスポットを作れば、プラスチックゴミを減らせるのではという視点でプロジェクトがスタート。

まずはお店に給水機を導入し、あわせてペットボトルの水の販売を止めることにしました。給水用のボトルは、店頭で「自分で詰める水のボトル」として販売はしていますが、ボトルをご持参いただいても、どなたでもご利用いただけます。給水サービスは東京都をはじめ多くの自治体が増やしたいという動きもあったので、まずは給水サービスとして徐々に拡大させていこうと考えたんです。その後、水プロジェクトが拡大し、他に飲料でできることはないかと考えた時に、次は飲料のペットボトル容器を他の素材に切り替えられないか、と検討がはじまりました。


ー 水の販売を止めるというのは、考え方によっては売上が減ってしまうかもと思ってしまうのですが、社内で反対の声はなかったですか?

弊社は「無駄をなくす」「使い切る」をとことん考えながら物作りをしていて、今回のプロジェクトは根元の考えにフィットしているので、そういった声はなかったですね。

給水機は店舗のスタッフが簡単なメンテナンスをおこなっていますが、作業負担になっているという報告もありません。どちらかというと、冷たい水が無料で飲めるので喜びの声の方が大きかったですね。

予想以上の反響。店舗によっては並び待ちも

ー お客様の反応はいかがでしたか?

思った以上に反響がありました。コロナ禍で当初の予定から少し遅れて2020年7月にスタートし、暑い時期に冷たい水を無料で給水できるとあって、非常に喜んでいただけました。水を買わなくなってゴミが減ったなど、プロジェクトの目的達成につながるようなお声もいただいているので、良い方向に作用していると感じています。


ー 利用されているお客様はどういった方が多いんでしょうか。

無印良品でお買い物をされるお客様は女性が多いので、ご利用者は自然と女性が多くなっています。設置したばかりの頃に何店舗か巡回したところ、若い世代のお客様も多くご利用いただいている印象を受けました。「無印良品 池袋」などは、給水機の前に列ができているときもあり、幅広い層に使っていただいています。

給水サービスと同時にリリースした給水量がわかる「水」アプリは、135,000ダウンロードを超えまして、アプリを使った計量によると、皆さまのご利用によって500mlのペットボトルで換算すると、約20万本(※2021年4月22日現在)もの削減に繋がっています。本当に水だけ汲みに来ていただいても構わないので、我々のプロジェクトを知って、参加してくださると嬉しいですね。


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▲水プロジェクトは自治体とも連携した取り組みもおこなっています。
2021年5月に熊本市と連携協定を結び、"水"を通じたSDGsの実現を目指した取組みを開始しました。


ー 日常に使うお水を汲みに給水機を使うと、お店に行くのがより身近に感じそうですね。今後はどのように設置場所を増やしていかれる予定なのでしょうか。

現在、全国に約300台の給水機を設置しており、2021年12月末までに全店舗への導入を目指しています。当初の予定通り、お店だけでなく各自治体と協力して、広く給水サービスを普及させることを目指しています。2021年5月には熊本市と連携協定を結び、市内施設に6台の給水機を設置しています。今後は熊本市立の小中学校でマイボトルの習慣化を促進する出前教室のサポートや、水源をめぐるウォーキングイベントなども開催する予定です。


ー 環境問題を扱うときって大人主体になってしまいがちですが、未来を担う子どもと一緒に取り組むことも重要ですよね。

こうした活動を通して、子どもの頃から給水する意味を学校で学び、マイボトルを持つ暮らしが馴染めばいいですよね。環境を考えた行動をとっていくことが当たり前のようになっていけたらと考えています。


ー 水を汲むという動きだけでなく、周りの部分まできちんとフォローされているんですね。

水プロジェクトは「みずから始めよう」がコンセプトで、これは「自ら」と「水から」がかかっています。プラスチックゴミを減らすことを念頭に置いたプロジェクトですから、ただ給水器を置くだけではなく、皆さんが自分から考えて活動してもらえるようメッセージを発信して一緒に取り組んでいけたらよいですね。

アルミ缶を原料に選んだ理由

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▲2021年4月より、飲料全12種類の容器をペットボトルからアルミ缶へ変更しました。


ー 飲料のペットボトルの変更は、水プロジェクトから連動した取り組みなんでしょうか。

水プロジェクトをスタートさせて、ペットボトルの水は販売をやめたものの、無印良品ではペットボトルの飲料は他にも販売していていました。さすがにお茶やジュースは無料で提供できないので、ペットボトルではなく他の循環型の原料を使おうと、1年ぐらい前から構想をはじめました。


ー どうして、アルミ缶を使うことにしたんですか?

アルミ缶は国内でのリサイクル率が約98%あり、すでに循環の環境が整っていて、すぐにアクションを起こせたというのが大きな理由です。また、アルミ缶を再びアルミ缶として利用する水平リサイクル率が約70%と高く、再生アルミはバージン素材から製造する時と比べて、97%もエネルギーが削減できるなど、環境負荷の低さが大きなポイントとなりました。

加えて、アルミ缶は遮光性が非常に高く賞味期間も延びるので、フードロスの削減にもなるといった理由もあります。決して、リサイクルペットボトルを否定するわけではなく、私たちの求めるものとメリットがマッチしたので、アルミ缶の採用を決めました。


ー 変更の際に、パッケージや価格設定など苦労した部分はありますか?

ペットボトルと違って中身が見えないので、パッケージに原料のイラストを入れたり、果汁飲料ならそれをイメージさせる色を使うなど、なるべくシズル感が出るように苦心しましたね。広く流通している既存のアルミ缶は、ペットボトルで販売していたときと同じ容量のボトルサイズがなく、実質的な値上げにはなっていますが、大きく価格は変更していません。


ー デザインや価格をマイナスに感じている生活者は少ないと予想していますが、実際のところいかがでしょうか。

売上は大きな変化はなく、まだ発売して間もないのですが、ペットボトルを販売していた時と比較して好調に推移しています。興味をもってご購入くださる方はもちろん、先ほどの水プロジェクトのようにSDGsに配慮して選んでくださる方も多そうです。

あと、私たちは意識していなかったのですが、アルミ缶のほうが飲み口部分が冷たいこともあり、飲んだときに冷たく感じるという反応もあり、意外なところで好感をもっていただいています。

脱プラスチックの本当の目的は?

ー 今後も商品のパッケージの変更は検討されていますか?

飲料はたまたまアルミ缶に変更できましたが、菓子などの袋を変えるのは品質管理の面で一筋縄ではいかないので、できるところから検討していく予定です。

脱プラスチックのいい印象だけを捉えるのではなく、環境負荷についてさまざまな視点から検討しなくてはいけないという考えです。よく吟味しないと、食品の賞味期限が短くなりフードロスにもつながりかねません。目的を見失わずに適材適所で選択していきたいですね。

2つの取り組みの背景を通して、脱プラスチックのみを目的せず、フードロスなどさまざまな視点から根本にある環境問題を考えぬく良品計画の姿勢を知ることができました。今後の水プロジェクトの拡大にも、きっと企業のSDGsへの取り組みのヒントが詰まっていることでしょう。



writing support:Akira Fukui



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