使い捨てから脱却。Loopがアップデートする容器の未来

使い捨てから脱却。Loopがアップデートする容器の未来

2021年春、日本に上陸したアメリカ発の循環型ショッピングプラットフォーム「Loop(ループ)」。利便性とデザイン性の高さで、容器文化をアップデートする「Loop」のモデルについて、LOOP JAPAN代表のエリック・カワバタ氏にうかがいました。

お話をうかがった方

LOOP JAPAN
アジア太平洋統括責任者/日本代表
エリック・カワバタ 氏

標準化した”使い捨て容器”からの脱却
循環型という新しい提案

ー はじめに、「Loop」について教えてください。「Loop」は容器の使い捨てから耐久性のある容器に変える循環型のショッピングプラットフォームなのですね。

「Loop」は、従来の使い捨て容器の代わりに、耐久性のあるガラスやステンレス製の再利用可能な容器で商品を販売し、使用後の容器を回収・再利用することで、ごみを減らすプラットフォームです。

歴史的に見ると、1930年代頃までは、耐久性があり再利用可能な容器が標準でした。牛乳配達のように、中身を飲んだら容器を返却して使いまわすことが当たり前だったんです。ところが、1940〜50年代頃から使い捨て容器が登場し、安価で便利なものとして、使い捨て文化が広がっていきました。

使い捨て文化では、メーカーにとって容器はコストとみなされます。コスト削減のため、できるだけ安く軽くを追求していった結果、リサイクルが困難な容器と、多くの廃棄物が生み出されました。さらに、リサイクル率だけでなく、容器を手にする生活者の満足度も下がってしまったんです。

こうした使い捨て文化へのソリューションとして「Loop」が誕生しました。耐久性の高い容器を使用し、中身を100回充填できれば減価償却は100分の1に。再利用、デザインの向上、新たな機能といった付加価値がついた容器はメーカーの資産になるのです。

イオンとの連携でもっと身近に
Loopのあるライフスタイルへ

ー 最近では小売最大手のイオン様と提携されて、8月末までに50店舗まで拡大されるようですね。

はい。2021年5月25日から、東京都内を中心としたイオン店舗とネットスーパーで「Loop」対応商品を販売しています。生活者に「Loop」を受け入れてもらうには、アクセスのしやすさがとても重要です。生活者にとっては、今までの生活や商圏を変えずに「Loop」に参加できた方がいい。そのためにも、小売店との連携は大前提でした。


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また、イオンでの展開に先駆けて、2020年12月には東京都の補助事業として「Takeout Bento Project」を実施。特定オフィスの社員限定で再利用可能な容器で弁当を販売したり、日本橋三越本店本館地下1階食品フロアで、再利用可能な容器を使った惣菜の販売にチャレンジしました。こうした取り組みにより、SDGsや環境問題に興味がある方などから、ポジティブなリアクションをいただいています。

一方で課題としては、オペレーションコストがとても高くなってしまうこと。今後、供給ボリュームが増えればコストを下げられるので、その分生活者へのベネフィットを増やしてきたいと考えています。今はまだ、商品の種類も少ないですし「Loop」に入る商品をどんどん増やしていきたいですね。


ー 具体的にどのようなフローで「Loop」容器と連動して食品を卸す構造なのでしょうか。


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まず、食品メーカーが「Loop」商品を小売店に卸します。その際にかかるのは、商品の卸価格と容器デポジット。そこから小売店は、店舗やオンラインストアを通して生活者へ「Loop」商品を販売します。生活者は小売価格と容器デポジットを支払い、商品を楽しんだ後は、使用済み容器を小売店の回収BOXに返却。回収された「Loop」容器は、保管洗浄されメーカーに送られ、再び補充販売されるというフローです。

従来の食品メーカーとイオンの商談などの流れとあまり変わりはありません。「Loop」自体も従来の卸会社と連携して商品を搬入していますから大きな変化はないのです。


ー 体験できる場所が拡張されていて加速されているように感じますが、アメリカやフランスなどの欧米と、日本市場での法規制など含めたローカルの難しさはありますか?

そうですね。ゴミであれば、廃棄物処理などの問題がありますが、「Loop」はリユースなので、それほど問題はありません。

日本の特徴として感じるのは、詰め替えはある程度根付いていますが、ゴミ処理への問題意識はまだ高くないということ。現状の詰め替えは、パウチがゴミになってしまいます。海外では、パウチの問題は深刻です。リサイクルされずに海に流れ、地球の中に積み上がっていき、焼却の際にCO2が出てしまいます。家庭内でのゴミ分別で、そのままリサイクルされると思ってる人が多いですが、そうじゃないんですよね。

食品メーカーと生活者が容器でつながる未来

ー 「Loop」を通じて、どのような世界を、未来をつくっていきたいと思いますか?

「Loop」が生活の一部となってゴミが減るとシンプルに気持ちがいいですし、日々の家庭内フローも改善されます。これまで繰り返されてきた、新しい資源を使って捨てて、また作るというサイクルをやめれば環境負担も減ります。

「Loop」容器のクオリティもどんどんブラッシュアップしていきたいです。例えば、エアロックできる容器やIoTの容器。使い捨てだと、コストが高すぎて実装できませんが、再利用可能ならば実現できます。調味料の容器にIoTチップを入れることも今後可能になっていくでしょう。賞味期限が近づくと通知してくれたり、味付けのアシストをしてくれたり。今まで実現できなかったことを可能にしようと、アイディアは尽きません。

▶ YouTube:Ajinomoto × LOOP


容器を変えることは、単にゴミを減らし循環させるだけでなく、生活者と食品メーカーをつなぐ価値ある選択です。容器ひとつで、未来の食卓のあり方、キッチンのあり方は変わっていくでしょう。



writing support:Sayaka Takahashi



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