コスト増でもやるべきことを。紙包材「キットカット」の挑戦

コスト増でもやるべきことを。紙包材「キットカット」の挑戦

セールスボリュームの大きい製品の紙パッケージ化をいち早く実現したネスレ日本の「キットカット」。グローバルの方針から1年で製品化を成功させたプロジェクトの背景を、ネスレ日本株式会社コンフェクショナリー事業本部の村岡氏にうかがいました。

お話をうかがった方

コンフェクショナリー事業本部
メインストリーム部 マネジャー
村岡 慎太郎 氏

紙パッケージ化は海洋プラスチックごみ問題へのファーストアクション

ー 「キットカット」のようにセールスボリュームの大きな製品の資材変更は、大きなチャレンジもあったと思いますが、プロジェクト立ち上げの背景を教えてください。

まずプロジェクトの背景として、ネスレの本社があるスイスを含むヨーロッパ圏では、日本以上に環境問題に対する意識が高まっています。そうした中、ネスレは世界各国で事業を展開するグローバル企業として、2018年4月に、製品の包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にするというコミットメントを発表しました。

今回の「キットカット」の紙パッケージ化は、このコミットメント達成に向けた取り組みの一環です。2019年9月より主力製品である「キットカット」大袋タイプ5品の外袋を、従来のプラスチックから紙パッケージへと転換。これをファーストアクションとして、海洋プラスチックごみの課題に向けた取り組みを推進しています。


ー プロジェクトは、いつ頃発足したのですか?

プロジェクトのスタートは、2018年の11月。サプライヤーをはじめ、社内の関連部署と共に、研究開発をスタートしました。紙への変更は大きな決断でしたが、先送りすると、その分プラスチックごみの削減が遅れます。これほどセールスボリュームの大きい「キットカット」製品での取り組みは、グローバルのネスレの中でも日本が初めて。世界でもトップクラスの売上がある日本の「キットカット」が、率先して海洋プラスチックごみの課題に取り組むことは、それほど重要なことだったのです。

取り組み開始以降、従来のプラスチック使用時と比較して、2020年末までに累積で約420トンのプラスチック削減につながっています。


ー 開発工程で苦労されたところや、最も大変だった点をお聞かせください。

「キットカット」は食品ですから、製品の品質保持や流通における強度保持が重要です。あとパッケージは製品の顔でもありますので、「食品パッケージとしての見た目」も重要です。そのためトライアルを何度も繰り返しました。

紙自体の特性が原因で発生する皺や破れ、噛み込みなどが発生し、その調整に追われる日々。色の出方や風合いなど、紙ならではの質感を生かすため、紙素材の選定、パッケージデザインの印刷技術、製袋するシール材の開発を社内外の関係者とともに進めていきました。

プロジェクトチーム全員の協力で、プラスチックフィルムよりも強度が弱い紙素材でありがながら、流通過程で必要な強度を確保しつつ、印刷の色再現性を高めた包材の開発に成功。今後は、包材ロスを減らし、生産効率を上げ、コストダウンもできるよう、引き続き社内で力を合わせて、挑戦していきたいです。


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紙パッケージを活用した
ネクストコミュニケーション

ー 実際にリリースして生活者の反応はいかがでしょう? 折り紙などのコミュニケーションを取り入れたことで、新しいターゲットへのアプローチなど、マーケティング視点での手応えもありますか?


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そうですね。サステナビリティやSDGsといったキーワードは、メディアの注目度も高いことから、生活者の関心の高さを感じます。企業としてやるべきは、紙パッケージとしてのベネフィット、どのように率先して海洋プラスチックごみの課題解決に取り組むかを生活者に伝えること。生活者の反応が100%可視化されているわけではありませんが、商品を購入する消費者の方、取引先である流通のお客様ともに反応は良く、好意的に受け止めていただいているのではと感じています。

今回、ブランドコミュニケーションのひとつとして、これまで廃棄されていたパッケージを「折り紙」として使うことを提案しました。日本伝統の想いや願いを伝える象徴の「折り鶴」などを作り、そこにメッセージを書き、大切な人に想いを伝える、というコミュニケーションです。

「キットカット」はこれまでも受験生への応援など、コミュニケーションツールとして使われてきた背景があります。そうした点は、今回の新たなコミュニケーションともマッチしたと考えています。


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▲紙パッケージを活用したコミュニケーション
紙のパッケージを使い、「お守り」をつくることができる受験生応援製品を始め、ハートをつくることができるバレンタインシーズン限定パッケージの製品、“ぬり絵”が楽しめるイースター向け製品、「ウミガメ」や「マンタエイ」など 4 種類の海洋生物のイキイキとした姿が描かれ「ウミガメ」などの海洋生物をつくることができる製品などを、期間限定で発売。(※全て期間限定製品のため、現在販売はおこなっていません)

コスト増でも
”企業としてやるべきアクション”を

ー 企業としては、資材変更による“コスト増”が気になるところだと思いますが、実際のところはいかがですか?

紙への変更に伴って、包材や設備投資などのコスト上昇は、もちろんあります。ですが、まずは海洋プラスチックごみの課題に向けた取り組を推進することが先決。紙パッケージ化は、将来を見据えた時に意味がある変更でした。

ネスレでは全世界で製品の包装材料をリサイクル・リユース可能なものに変更すべく、ステップバイステップで取り組んでいきます。日本において「キットカット」の外袋を紙パッケージへ変更する取り組みは、グローバルで掲げているコミットメントの達成に向けたステップの一つと位置付けています。今後も製品の品質保持性とコミットメントの実現を両立させていく上で、様々な素材の使用を検討していく予定です。



writing support:Sayaka Takahashi



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