ワタミの宅食。植物性容器と回収サイクルを実現できたワケ

ワタミの宅食。植物性容器と回収サイクルを実現できたワケ

フードデリバリーが活況な中、外食や中食でも包装資材の再検討が進んでいます。シニア向け宅食事業でトップランナーを走るワタミは、毎日約25万食の容器を環境配慮容器に変更し、かつ独自の回収リサイクルシステムを構築しています。取り組みの背景や目指すビジョンについてうかがいました。

お話をうかがった方

ワタミ株式会社 執行役員SDGs推進本部長
一般社団法人中部SDGs推進センター副代表理事
百瀬 則子 氏

1980年ユニー株式会社入社、2003年環境部長、2006年環境社会貢献部長、2014年ユニーグループ・ホールディングス執行役員就任、2017年ユニー株式会社上席執行役員CSR部長、ユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社執行役員就任、2018年退任し顧問に就任。

2030年までに石油由来の包材ゼロへ。
その一歩として今回のアクションがある

ー まずはじめに「ワタミの宅食」事業について教えてください。

お弁当やお惣菜をお客様と同じ地域に住むスタッフがお届けするサービスの「ワタミの宅食」は2008年から事業を開始し、現在では毎日約25万食をお届けしています。「ワタミ」と聞くと居酒屋チェーンの印象が強いと思いますが、この宅食事業は既に外食事業と同規模の事業にまで成長して、高齢者食宅配市場「売上シェア11年連続 No.1※」を達成しているんですよ。

※出典 :外食産業マーケティング便覧2011~2021(株式会社富士経済調べ)


ー そんな宅食事業で、バイオマスプラスチックに変更した背景は何でしょうか。

当社はSDGsが制定される前から、環境課題に高い関心を持っており、1999年外食企業として初めてISO14001を取得しました。宅食をはじめ外食事業も含めて、2030年までに容器や包装資材から石油由来のプラスチックのものを使用しない方向で検討しています。今回の取り組みも、そのアクションのひとつです。

最も環境にとって最も理想的なことは「ゴミを生まないこと」。”廃棄”されてしまうとゴミとなってしまうので、当社の包材や資材など全てがリユース・リサイクルできる状態が好ましいですが、全てをリサイクルできないことを想定して、まずは”緩和処置”としてバイオマスプラスチックに切り替えたところがあります。


ー 緩和処置というのは?

お伝えしたように「ワタミの宅食」は、毎日25万食を高齢者向けに提供しています。ご高齢者ですし、場合によっては適切に分別されずに可燃ゴミになってしまう可能性をはらんでいます。

「ワタミは毎日25万個のゴミが発生するリスクをはらみながら商売をしている」ってやはり良くないことですよね、社会的責任があります。そこで、まずは燃やしてもカーボンニュートラルでCo2の発生が抑えられるバイオマスプラスチックを10%使用した容器に速やかに切り替えたのです。

リターナブル容器やワンウェイ容器の頃も。
紆余曲折を経て、環境配慮型容器へ

ー ワタミの宅食の容器も紆余曲折あったと聞きました。

そうですね、いろいろと変遷がありましたよ。事業を始めた頃は「仕出し屋さんのお弁当」のようなプラスチックの容器でお届けしてました。容器を回収した後に熱湯消毒をして冷蔵庫で冷却して…そんなサイクルで1人のお客様に対して5〜6個のお弁当箱を使い回して運用していました。「リターナブル容器」として環境に良さそうにも聞こえますが、洗浄・配送にかかるCO2や水の量を削減できると判断し、当時は「効率的ではない」としてワンウェイ(使い切り)の容器に変更してしまったんです。

容器をワンウェイ容器に変えることで、ワタミの企業としてのCO2削減はできますが、もし捨てられて海に流れ込んでしまったら、海洋プラスチック汚染の原因になってしまうかもしれません。ワタミは自社の環境対策だけではなく、SDGsの考え方で、地球環境を汚さないことを進めたいと思いました。


ー そんなワンウェイ容器の利用から今回の環境配慮容器への切り替え、アクションは業界でも早く着手された印象があります。

もともと私は2018年頃までスーパーマーケットのユニー株式会社やファミリーマートで環境部長をしており、2005年頃からバイオマスプラスチック容器を導入していました。メリットや懸念点は把握していたので、そのため速やかに判断できたのかもしれませんね。

47都道府県に足を運んで交渉。
企業初、自社容器の循環システムを構築

ー 自社容器を回収して再生利用するリサイクルシステムについても教えてください。


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あまり知られていないのですが「一般家庭からゴミを回収する」というのは廃棄物処理法によって自治体から許認可された事業者ではないと回収できないのです。ワンウェイの容器を回収したくても法律の壁が非常に高かった。


ー そんな中でワタミ社が回収するシステムが構築できたのは、すごいですね。

なぜワタミはできたのか。私と部下で宅配事業を行う全都府県を行脚して、環境部との交渉を続けたんです。はじめは愛知県でした。前職の本拠地が愛知県で、知人でもあった県の技術のトップに会って「これまでリユースしていた容器をリサイクルしたい」と伝えました。

本来であればNGなわけですが、「お弁当の中身も容器を販売して、容器もワタミさんの所有なのだから、使い終わった容器もそこまで言うのなら自社で回収してください」と自治体も認めてくださったんです。そのことから愛知県と名古屋市から、容器をリサイクルするモデルを開始させました。愛知県津島市には当社最大のお弁当工場があって1日7万個作っています。近くにケミカルリサイクルできる日本製鉄さんのコークス炉があって、そこで容器が回収されて循環しています。


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そこからメーカーが回収してもよいという法律が2021年6月4日にプラスチック資源循環促進法が成立したことで、自社のリサイクルシステムを構築できるようになりました。

今では暮らしの中に定着しているスーパーマーケットでのプラスチックやトレイの回収だって、最初は合法ではなかったんです。家庭からのゴミは自治体のみ回収できる法律でしたから。それを当時から店舗で回収するシステムを各所に調整していって、少しずつ意見を集めて法改正ができたんですよ。廃棄されなければゴミではなく資源。ゴミにさせないサイクルを作ることが最も重要な施策だと考え取り組みました。

選ぶのはお客様。ワタミは選択肢を増やす
お客様にも地球にも真摯に向き合う

ー 外食や宅食領域のSDGsに関するアクションで、トップランナーを走られてますね。

ワタミは、SDGs日本一の企業を目指しています。現在のアクションも全体構想の中の一部にしかすぎません。石油由来の包装資材はもちろん、箸やスプーンなども見直していく予定です。

当社のアクションが小さくても「ワタミがやっているなら、ワタミで事例があるなら」と同業界で連携できることをとても望んでいます。こういうのは同時に実施したほうが推進しやすいと思いますので。

環境に関する意識は若年層を中心に変わってきていると実感します。きっと私たちのアクションが、いつの間にか「そういうアクションをするワタミでお弁当を買いたい」とか「使用済容器も回収してくれるからワタミが良いかも」と生活者の意識も変えていき、選ばれるブランド理由にもなっていくのかもしれません。私たちワタミは、そんなお客様に選んでもらえるように、企業として社会的責任を果たしていきたいと思っています。

1日25万食を提供するサービスでお客様の食事が豊かになったとしても、そのゴミで地球や未来の子供たちが苦しむのは健全ではないですから。まごころ込めて食品を製造して回収までする。これからもワタミらしく走っていきたいと思っています。



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