
食トレンド
新大久保駅に食の循環型経済を目指すフードラボが誕生
JR新大久保駅に、新たな食の交流拠点「キムチ,ドリアン,カルダモン,,,」が誕生しました。さまざまな食文化が集まる東京随一の多国籍シティ新大久保から新しい情報を発信するフードラボとして、目指していくビジョンについてお聞きしました。
お話をうかがった人
株式会社CO&CO
事業統括部長
伊崎 陽介 氏
さまざまな食文化が混ざり合う街で
新たな食体験を創造する場
― まずは、フードラボ「キムチ,ドリアン,カルダモン,,,」が誕生した背景について教えてください。
この施設は、JR東日本の「東京感動線/TOKYO MOVING ROUND」の取り組みのひとつとして誕生しました。東京の中心的な役割を担う環状線、山手線沿線の各駅やそこから広がる街の多様な個性を引き出し、それぞれの駅で感動体験ができる都市生活空間を創造していくプロジェクトです。地域の特性を生かしながら街を彩り、それぞれの駅が目的性を持った場所になることで、回遊性を高めていきたいとの想いから発足されました。
新大久保は、韓国人街であるという印象を持たれがちですが、ベトナムやタイ、インド、中国、トルコやネパールなどさまざまな世界の食文化が混ざりあい、共存している街です。そこに注目をして、「食」をテーマに街の個性を引き出すために、このフードラボが誕生しました。
JR東日本とメディア機能を有しているオレンジページ、そして日本各地、世界でグローバルコミュニティを創る私どもの企業CO&COの3社の強みを生かしながら共同で運営しています。
「Kimchi,Durian,Cardamom,,,」というネーミングも、さまざまな文化から新しいものを生み出したいとの思いから名付けられました。実はこの名称には続きがあり「,,,Beans,Chicken,Okra,Sesame,Chive,Eel,Fennel,Cucumber,Turnip,,,」と99の食材の名前が並びます(笑)。
― 多様な文化背景を持つ新大久保に誕生した、フードラボ施設について教えてください。
駅直結のビルの3階と4階が私たちの拠点です。3階は3つの厨房とドリンクカウンターを備えたシェアダイニングで、一般の方から見るとフードホールのような存在です。一方で、料理人にとっては、自分の店舗を持つ前のテスト出店や、飲食業への新規参入を考えている人のためのポップアップショップの出店が可能なシェアダイニングとなっています。
2週間~1ヵ月ごとに店舗は入れ替わり、新しい食体験が生まれる場所でもあります。
4階は、ファクトリーキッチンを備え、食に特化した会員制のコワーキングスペースです。
製造許可のある本格設備を整えたキッチンでは、商品開発や小ロットの商品加工・製造・包装までおこなうことができます。ここで商品開発をおこない、3階のシェアダイニングに出店するという流れを作ることができます。会員は料理人、料理研究家や料理家、食を切り口にしたクリエイターなど多岐に渡り、有機的な繋がりを持ってビジネスを展開することができます。
食の関係者がボーダレスに繋がり知見を共有
街に還元されていく循環型経済を目指す
― まだまだオープンしたばかりですが、これからの展望について教えてください。
食のコワーキングスペースは、会員と関係者のコミュニティを創る場所です。関係者のグラデーションは幅広く、フード系スタートアップ企業から料理人、料理研究家、生産者などが集い、食の知見を共有できます。大手企業の協賛型のイベントや地方再生のための相談などが持ち込まれたときに、関係者の繋がりを活かして協力していきたいと思っています。
例えば、北海道・十勝の名産として行者にんにくがあります。まだまだ北海道以外では認知が足りず、収穫量を増やしたくても増やせないという相談を受けました。認知を高めるため、ファクトリーキッチンで試作を行い、レシピ開発をする。そのレシピを3階のシェアダイニングで販売し、物販も同時に行えば一定のマーケットが生まれます。
また、新大久保の多国籍レストランと協力して、行者にんにくのレシピを開発してもらい、周遊マップを作ってお客さんがレストランに訪れてくれれば、街ぐるみで行者にんにくを使った料理のムーブメントを起こすことができます。デジタルでメディアを作るだけではなく、循環型のコミュニティーとして機能できるようになるのが強みだと思います。
また、若者がチャレンジするのに良い環境でもあると思います。いきなり店舗を持つのはリスクがありますが、開発製造をファクトリーキッチンでおこない、3階でポップアップ店舗を出して、消費者の反応を見てから自社店舗を出す。テストマーケティングをしてからチャレンジする流れを作ることができます。そんなストーリーをトータルサポートできる場所でありたいと思っています。
― 食にまつわるコミュニティーから新しいものが生まれ、街に還元されていくのですね。
食はまだまだ進化の可能性のあるジャンルです。食をきっかけに新しいアイデアが生まれ、新大久保だけでなく地方とも繋がりながら、還元できる循環型経済の拠点地でもありたいと考えています。
都心と地方で不均衡が起きている社会で、ハブになるようなスポットが必要だと感じています。「キムチ,ドリアン,カルダモン,,,」では、食に関するボーダーをすべて取っ払い、人の繋がりを作ることで、企業も個人も垣根なく、食のグラデーションを生み出していきたいと思っています。
writing support:Yasue Chiba
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