
食トレンド
ハンバーガーだけじゃない?モス濃厚食パンで販路多角化
高級食パンにから揚げ。昨今、注目度が急上昇している食べものは、コロナ禍による食卓事情の変化が如実に反映されています。そんな中、2021年3月に大手ハンバーガーチェーンのモスバーガーが、予約制の高級食パンの販売を開始。トレンドど真ん中の商品企画にどのような勝算があるのかお話をうかがうと、モスバーガーのハンバーガー業界にかける想いが見えてきました。
お話をうかがった方
株式会社モスフードサービス
広報IRグループ
森野 氏
食パンで新たなチャネル開拓
▲2021年の3月より、店頭予約のテイクアウト限定で受注生産
毎月第2金曜日・第4金曜日の月2回販売している
ー「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン(以降、濃厚食パン)」の生まれた経緯を教えてください。
企画自体が立ち上がったのは、2020年8月です。コロナ禍でのお客さまのニーズの変化に沿った商品を検討する中で生まれました。
生活者の皆さんは外出する機会が減ったことに伴い、自宅で過ごす時間に充実感を求める傾向にありました。私どもの商品はテイクアウト可能な商品でありながらも、アフターオーダー方式で、できたてもしくは一定の時間内で食べていただく前提の商品なんですね。そこでお客さまのタイミングで食べられて、食べて幸せな気持ちになるような商品も提供したいと考え、濃厚食パンの提供を開始しました。
ー クロワッサンやベーグルなど、さまざまなパンの種類の中から、食パンに行き着いたのはなぜでしょう?
リッチな食パンとして開発されていた商品をモスバーガーでは商品パッケージや販売戦略などを考えて取り組みました。
ー 店頭予約限定にしたのはなぜですか?
一番の理由はフードロス削減です。予約限定というと特別に聞こえますが、私どもは創業の当初からアフターオーダー方式を採用しています。今回も環境に配慮したSDGsの考え方に沿った販売方法を取り入れました。注文方法を制限したことで、オペレーションもシンプルで各店舗への負担削減にもつながっていますね。
また濃厚食パンは、毎日食べる食パンというよりは、週末リッチに楽しむイメージの商品です。予約をして待つ特別感も一緒に味わってほしいという想いもあります。
ー 予約と受け取りで2回店舗を訪れることになります。来店頻度のアップも狙われているのでしょうか?
もちろん、店に足を運んでいただく機会の創出にも期待をしています。ただ今回に関しては、生活者への新しいアプローチでモスバーガーの認知を拡大させ、従来とは違った販路を開拓していく想いが強いかもしれません。
ー 実際販売してみて、いかがですか?
大変嬉しい反応をいただいており、月2回の販売で、現在累計22万斤(2021年3月12日販売開始)を超え、当初の予想を上回る売上となっています。その反面、色んなお声をいただいていますので、予約方法についても、今後の商品の定着とともに検討していく予定です。
ー 累計22万斤超とは、すごいです。読み上げたくなる商品名でメディアからも注目を集めていましたね。長い商品名はどのようにつけられたのでしょうか?
バターと卵をたっぷり使用し、表面にバターを塗るよりもリッチに感じる。濃厚食パンの一番の特徴をわかりやすく表現をしたいというのが、そのまま形になった商品名です。
過去には読むだけで商品の特徴がわかるようにしようと、長い商品名の時期がありました。その当時から考えると、現在はコンパクトな商品名のものが増えていましたが、今回は濃厚食パンの良さを印象づけたいという考えから、再び長い商品名にしました。
ー 高級食パンがトレンドとなっている中で、他社と差別化を図った点はありますか?
昨今の高級食パンがトレンドになっていますし、タイミングとしてはよかったと思っていますが、トレンドを意識したわけではありません。常に新しいことにチャレンジしながらお客さまに楽しんでいただきたいと模索する中で、今回の企画も生まれました。
あくまでも、弊社の主力であるハンバーガーを支えるもうひとつの柱として、販売チャネルを増やしていこうという考えです。近年、弊社では濃厚食パン限らず、他社さまとコラボレーションにも力を入れています。
他社との協業がモスバーガーを
思い出してもらうきっかけにも
▲2021年4月、ユナイテッドアローズとコラボレーションしたキッズ向けTシャツやキャップ
ー これまでは、どのようなコラボレーションをされてきたのですか?
食べものですと、UHA味覚糖とハンバーガーを模したグミ、亀田製菓とテリヤキバーガー味の柿の種などを販売しました。
2021年4月にはユナイテッドアローズとキッズ向けのアパレルでコラボレーションしました。専門部署があり、ご提案いただくのはもちろん、私どもが取引先などのネットワークを通じてお声かけすることもあります。CMが流れたり、店舗を通ったりする以外のシーンでも、モスバーガーを思い出していただけると嬉しいですね。
ー なるほど。コロナ以降はテイクアウト需要もあって、多くのハンバーガー事業が立ち上がり、競合も増えています。こうした流れは、モスバーガーさんにとって追い風とみていますか?
ハンバーガー業界が盛り上がることは、良いことだと思っています。コンビニや冷凍食品の進化によって、外食と中食の境目がだんだんなくなってきています。ハンバーガー業界全体が盛り上がり、モスバーガーを思い出してもらうきっかけになることは有難いです。だからこそ、ハンバーガー以外の部分にも力を入れていきたいと考えています。
ー ハンバーガー業界を盛り上げたいという想いもある中で、今後どのように取り組まれていきますか?
皆さまに「また面白いことやってるよね」と言っていただけるような、コラボレーションもまだまだ検討中です。あとは冒頭でフードロスの話もありましたが、私どもは社会貢献も企業の重要な役割と捉えています。例えば、コロナ禍で生産量、需要が減少して、フードロスにつながるような食材は、微力ながらもお手伝いをしたいと考えています。
▲6月に販売した真鯛カツバーガー
コロナの影響で飲食店へ卸す養殖真鯛が大量に行き場を失ったことから商品化
ー 6月に人気で品切れ店舗が続出していた、真鯛カツバーガーもそうですよね。
お取引先から、愛媛県愛南町の養殖真鯛がコロナの影響でフードロスになってしまうというお話をいただき、生まれた商品です。ちょうど、海老カツなどのシーフードハンバーガーをリリースするタイミングがあり、そこに間に合うように、真鯛カツバーガーを開発、販売しました。
ハンバーガーで使用することが難しい高級魚を使ったハンバーガーが手軽にお召し上がりいただけるということもあり、大変ご好評いただき、品切れになった店舗もあるような状況でした。お客さまにも、生産者さまにも喜んでいただけて、ハンバーガーで皆さまをハッピーにできるのは、本当にありがたく嬉しいことです。
ー さまざまな企業と手を組んで業界を盛り立てるだけでなく、こうした地域や日本文化の文脈も汲んで社会にも貢献できるのは、日本発で取り組みを続けられているモスバーガーの強みですね。濃厚食パンの話からはじまりましたが、貴社に流れる、さまざまな取り込みへの考え方やカルチャーをうかがえました。ありがとうございました。
writing support:Akira Fukui
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