DXで進化する顧客体験と経営。レストランテック(後編)

DXで進化する顧客体験と経営。レストランテック(後編)

コロナ禍以降、長期化する営業時間の短縮や酒類の提供禁止など、深刻なダメージを受けているレストラン業界。いまどのような変化を迫られ、今後どのように進化していくのか?フードテックに精通する住さんによる前後編の2回に渡る解説。今回は後編をお届けいたします。

加速するDXがレストランをどう変えるか?

withコロナでの生活様式の変化により、テイクアウトやデリバリーが急速に普及するなど、レストランでのDXが加速しています。オーダーシステムをはじめ、食材管理やロボットの活用など多岐に渡りデジタル化が進んでいます。レストラン内だけでなく生活者との関係にも変化をもたらすレストランDX。今後、レストランはどのように進化していくのか、先進事例とともに見ていきましょう。


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コロナ禍でなぜ?レストランDXが進むワケ

従来のレストランでは、紙の伝票と現金決済が主流でした。店外からの注文は電話で受け、メモに書き起こし、キッチンで料理する、というアナログな運用を基本とする世界です。

しかし、コロナの感染拡大によりデリバリー需要が爆発的に増加。注文は従来の電話等ではなく、ゲストのスマホからシステム経由で注文されるようになりました。
各デリバリーサービスからタブレットを貸与されるサービスもあるため、当初は紙でのオペレーションと併用するレストランが多数でした。しかし、デリバリーサービスの多様化とともに、端末の増加や、デジタルと紙の併用によるフロアとキッチンでの注文管理の非効率化という問題が生じるようになりました。
こうした背景から、POSや注文管理を一気にデジタル化し、店内注文も店外のさまざまなデリバリーサービス経由の注文も、同じシステムで管理できるようにするというニーズが増加。DXの大きな一歩を踏み出すこととなります。

DXの加速と
ゲストの”スマホ慣れ”の先にある未来

デリバリーサービスの普及により、ゲストは自分のスマホで注文することに慣れ、レストラン側もデジタル化によりスムーズな対応が可能になってきました。

さらに、もう一歩先に進みつつあるのが「モバイルオーダー」という体験です。


11063_image02.jpg日本マクドナルドでは、自分のスマホから注文すれば、レジに並ぶ必要がなくスムーズに支払い、商品を受け取ることができるサービスを開始しています。順番を待ったり注文を伝えたりという、ゲストがこれまで抱えていた多くのストレスを軽減。一度使用するとその便利さから、「ない状態には戻れない」ような体験をゲストに生み出しています。


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同様の体験が国内外のレストランでも広がっています。POSや注文管理システムと繋がる形でゲスト自身のスマートフォンからテーブルにいながらメニューを閲覧。焼き加減等をカスタムし、そのまま支払うといった仕組みが増えています。

鳥貴族などの国内居酒屋チェーンでは、卓上タブレットからオーダーできる店舗があり、注文のストレスと店員の負荷軽減を両立しています。今後はより小規模のレストランでも、自分のスマートフォンを使用して同様のことができるようになっていくでしょう。

スマホでゲストと繋がるマーケティングの未来

11063_image04.jpgモバイルオーダーの普及は、従来あったテーブルでの店員とゲストのコミュニケーションをデジタル化、効率化することにあります。これは、顧客との接点が希薄になると思われがちですが、実際には異なります。

先ほど触れた店内でのモバイルオーダーの仕組みは、専用のアプリやサービスをスマホに入れることになり、今まで不可能だった「ゲストのスマホとの継続的な接点」を生み出します。
これまで、ゲストが食事を終えてレストランを去った後は、再度訪問してくれるのを待つしかありませんでした。モバイルオーダの仕組みは、注文に使ったアプリ等を通じてゲストに直接コンタクトをすることができるようになるのです。


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Blightloomの例を挙げると、モバイルオーダーと店内のシステムが連携する仕組みとなっており
①誰が何を注文したかのデータを蓄積する
②ゲストのユーザーセグメントを分析する
③セグメント毎にキャンペーンやロイヤリティの提案

といった、今まで実現が難しかったゲストとの継続的なマーケティングができるようになっています。食べログやぐるなびといった新規獲得一辺倒のマーケティングから、顧客のロイヤルカスタマー化といった方向に変化していくでしょう。

仕入れや食材管理も進むデジタル化

11063_image06.jpg顧客体験やレストランの経営管理もデジタル化が進みつつある一方で、仕入れ分野でもデジタル化が進んでいます。

仕入れはレストラン運営にとって時間のかかる煩雑なもの。食材の在庫管理、受発注や支払い、伝票の会計への反映など、さまざまなタスクがあり、仕入れられる物も日常取引がある所との制約が発生します。


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これらの煩雑さや制約を解決してくれるのが、調達系サービスです。サービスを利用すれば、生鮮から飲み物まで、さまざまな物を簡単に仕入れることができます。
また、レストラン経営を支援する機能も提供するところもあり、FOODAGERはメニューに使う食材の原価計算や、レストランメニューの提案等もおこなっています。

国内ならではの事例としては、八面六臂魚ポチなど鮮魚を扱う比較的大きなサービスが複数存在することと、シコメルロカルメオーダーといった、食材の中間加工やソースなどを代行してくれる、セントラルキッチン機能を提供するものなどが挙げられます。

コロナによって注目されるロボットたち

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レストラン運営にとって、雇用は常に頭痛の種となっています。誰かが休んだり退職し、人員が少ない場合でも開店する必要があり、なんらかのコストを払って対応しなければなりませんでした。

今回のコロナの流行により、多くのレストランは雇用調整や一時閉店を余儀なくされています。また、長引くパンデミックの影響で、人々の衛生に対する意識の高まりもあり、再開をきっかけとして自動化へ進むレストランも増えています。

人間の代替だけではないロボットの価値

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レストランの自動化で注目されるのがロボットの活用です。
Picnicは、オーダーシステムから入ってきた注文情報を元に、さまざまなピザの種類やカスタマイズといった細かな内容に応じて、ピザを自動盛り付けしてくれるロボットです。
また、コネクテッドロボティクスは長崎のハウステンボスで、たこ焼きのロボット販売からスタート。ソフトクリームやそば、ホットスナックといったさまざまな料理をおこなうロボットを展開しています。

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また、配膳ボットも最近注目を浴びるカテゴリとなっています。ただ運んでゲストに取ってもらうだけではなく、キャラクター性を強化したり、広告をつけることにより新たな収益源にするなど、さまざまなアプローチがされています。

こうしたロボットは人の雇用に取って代わるだけではなく、レストランでの体験をより良いものにしてくれる側面もあります。
従業員を重労働から解放することにより、細かい顧客サービスやメニューの改善など、より高付加価値な作業に集中させることができるようになるのです。

レストランと食品ロス問題

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日本国内で発生する食品ロス(まだ食べられるが捨てられる食品)は、全体で約600万トンで世界7位、アジアでは1位となっており、うち外食産業では116万トンのロスが発生しています。

レストランにおける要因としては、「ゲストの食べ残し」または「仕込みが多すぎ」が主要因となっています。

参考:農林水産省食品ロス量(平成30年度推計値)/
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/210427.html



食品ロスの可視化と分析が収益を産む

これまで、レストランでの食品ロス対策は、売れ残った物を安価で販売したり、寄付をするなどが主流でしたが、レストランDXにより新たな流れが生まれてきました。


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Winnowはゴミ箱上に取り付けられたディスプレイとカメラが、廃棄された料理を自動的に画像から分析し、メニューと紐付けて記録します。記録された結果を分析すると、不人気な食材や、量が多すぎるといった問題がメニュー毎にデータ化することが可能に。食品ロスを40~70%削減し、レストランの収益を年間2~8%改善できます。
また、データを活用しより最適なメニューへと改良することが可能になり、食品ロスを減らすだけではなく、ゲストの満足度も向上させることができます。

日本のスタートアップCALCUも同様のアプローチにチャレンジしており、ホテルやレストランでの実証実験を進めています。
こうした廃棄関連DXにより、食品ロス削減と収益性向上の両立が実現できるようになりつつあるのです。

レストランテックの普及で
大きく変わるWithコロナ時代

前後編に渡りレストランテックのコロナ禍による変化と、近未来についてお送りしてきましたが、長引くコロナの影響で飲食業界にも大きな変化が起きています。

今は苦境に立たされている飲食業界ですが、その裏では大手や個人経営に関わらず、さまざまなテクノロジーの普及が急激に拡大しています。ゲストの体験やレストラン運営において、不可逆なイノベーションが数多く起こっています。
今後レストラン運営のありかたも、人々にとってのレストランの楽しみ方も、より効率的かつ高付加価値になっていくと考えられます。また、生活に密着したこれらの体験はレストラン以外の部分についても、人々の考え方を変えていくでしょう。

ぜひ、今後もこれらの動向に注目してみてください。



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著者プロフィール

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住 朋享
2015年クックパッド入社。世界一のユーザー投稿型レシピコミュニティとIoT家電を繋ぎ、未来の料理体験を生み出すスマートキッチン関連事業の立ち上げと、クックパッド社内の新規事業制度設計、投資基準策定及び運用をおこなっている。2020年より東京大学大学院非常勤講師として新規事業教育に携わる。