
食品素材
多方面に課題も?企業に聞く食品ロス・アップサイクルの今
環境問題やSDGsへの関心の高まりを背景に、「食品ロス」や「アップサイクル」という言葉は生活者にも身近なワードとして定着してきました。各企業によってさまざまな取り組みがおこなわれている中、FoodClipでは「食品ロス・アップサイクル」に関する読者アンケートを実施しました。アンケート結果から見えてきた企業内や業界全体としての課題をまとめました。
「食品ロス・アップサイクル」に関する
アンケート調査を実施
「食品ロス(フードロス)」は、地球温暖化をはじめとする環境保全を背景に、2015年あたりから登場頻度が多くなってきた言葉です。2019年には食品ロス削減推進法が交付・施行され、企業での具体的な取り組みも増えてきました。
また、「本来捨てられる廃棄物にデザインやアイデアなど新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせる」という意味を持つ「アップサイクル」もSDGsへの意識の高まりから、注目されている概念です。
しかし、さまざまな企業と話をする中で、「なかなか根本的な解決に至らない」「実現に向けて課題がある」といった声も数多く聞こえてきます。
食品関連企業の方々をメイン読者とするFoodClipでは、そうした実態を把握するべく、「食品ロス・アップサイクル」に関するアンケートを実施しました。その結果、回答者の多くが高い関心を持つ一方で、企業としての取り組み実態や推進課題などもみえてきました。本記事ではそれらの内容をまとめ、レポートとしてご紹介します。
<調査概要>
調査方法:WEBアンケート調査
調査対象:FoodClip読者
調査期間:2021年8月下旬
回答者数:139名
回答者属性:食品/飲料メーカー・小売・卸等、食品関連企業
直近2年で活発化
56.8%の企業で改善の動きあり
まず、自社内での改善の有無についてお聞きしたところ、回答者の半数以上が「ある」と答えました。
改善に向けた動きがいつ頃から始まったかについての質問では、2020年以降の直近2年との回答が半数近くとなり、市場に動きが出てきていることがわかります。
在庫・生産量の最適化や
原料の見直し・再利用にも着目
具体的な改善方法に関する質問では、在庫・生産量の最適化、余剰在庫の有効利用などが上位に。直近はコロナ禍での出荷量・生産量の変化もあり、経営課題の面からも見直しへの関心が高まったことが見受けられます。
また、食品原料の見直しや再利用をおこなっているという回答も多く集まりました。最適化に向けた生産工程の見直しの中で、原料にも目が向けられていることがわかります。
施策の進め方について聞くと、約半数近くが部署を横断する形で施策をおこなっていると回答。個別の部署で具体的な施策を進めている、検討中/なかなか進んでいない、という回答がそれぞれ4分の1程度となりました。
改善に伴って既存の仕組みの再検討がなされるなど、部署をまたがったコミュニケーションも多くなることが想定され、部署横断のプロジェクトチームの編成なども進んでいるようです。
回答者の関心は95%も…
企業としての取り組みに課題感
「食品ロス/アップサイクル」への関心について聞いたところ、なんと95%以上の方が「関心がある」と回答しました。多くの食品関連企業の方々が高い関心を持っていながらも、先述の通り改善への動きがなかなか進まないという状況でもあるようです。
取り組むに当たって解決すべき課題について聞いてみると、さまざまな観点でのご意見をいただきました。
・不動在庫につながらないような発注精度を高めること
・生産量、商品出荷量を調整・最適化し、売り切るというスタンスで、流通側からも欠品という扱いを受けないような環境を作ること
・業態間(原料メーカー、商品メーカー、包材メーカー、在庫・物流、小売り)での情報連携
・商品のコストアップ 食品ロス配慮品に対する価値観アップ
・賞味期限の残期間による納入期限の商習慣見直し
・社会全体の関心が上がること
・企業努力が評価される仕組み
・収益性や直接的なメリット
自社内での取り組みはもちろん、業種間の連携や既存の商習慣の見直しや、取り組みをおこなうことによるリスクやメリットの創出など、各方面に課題を感じている方が多数いらっしゃることがわかりました。
さらに今後の自社での検討に際して、求めている情報をうかがうと「他社で実際におこなわれている事例」という回答が非常に多かったほか、「消費者の意識・反応」や「流通・小売メーカーがどのように考えているかを知りたい」との回答も集まりました。
やりたくてもやれない…
そんな課題を越えるためには?
今回のアンケート調査を通じて、「食品ロス・アップサイクル」への関心は非常に高いことがわかりましたが、企業での施策導入や推進には自社だけでは解決の難しい、さまざまな課題があることもわかりました。
企業としてのポリシーの確立や取り組みはもちろん、既存の商習慣の見直しを含め、ビジネスとして実現可能な方法を業界全体で考えていく必要がありそうです。また、「解」の見え難い状況においては、他企業の成功事例がオープンに共有されることも重要なポイントになってくるでしょう。
食品ロス・アップサイクル特集を公開予定!
FoodClipでは、10月中旬に「食品ロス・アップサイクル」に関する記事特集を予定しております。業界や食卓の課題を紐解く解説や、先進企業の取り組み事例など、さまざまなコンテンツを展開いたします。ぜひお楽しみに!
本特集を活用して、貴社商品やサービスが訴求可能な特集連動企画については、下記よりご確認ください。
▶特集連動企画はこちら
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著者情報

- ヒガシナオキ
- BtoB向けWebメディアを運営する会社に新卒で入社し、大手IT企業のメディアを使ったマーケティング支援に携わる。
2019年、クックパッドに法人向けサービスの営業として入社し、社内の営業管理やマーケ施策を並行して推進する中で「FoodClip」の立ち上げに関わり、2020年よりマーケティング専任に。
FoodClipでの担当領域はマーケティング・フードテック周辺。
休日は劇団をやっています。
https://twitter.com/nao181715