
企業・業界動向
【レポ】コーヒーマメヤの1on1のマーケティングを体験
「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」シリーズ第3回目となる今回は2021年にオープンした「KOFFEE MAMEYA -Kakeru-」を体験レポート!人とコーヒーを結ぶもの、それはデジタルでは再現しがたい「人」でした。
感想は言えないのに
誰かに教えたくなるカフェ
1日2杯コーヒーを飲む習慣はありますが、事前にお断りをしておくとコーヒーの知識は皆無です。そんな私が興味を持って足を運んだのが「KOFFEE MAMEYA -Kakeru-」です。行ってきたという友人に感想を聞くと「なんとも説明できない。何も聞かずにまずは行ってみて」と言われ、逆に興味がわき実際に行ってみることにしました。
コーヒーの街・清澄白河へ
2021年1月にオープン
あえて下調べをせず、公式サイトもInstagramも見ず、コーヒーに無知な自分が行ってもよいものかという不安を抱きながら清澄白河駅から歩くことおよそ10分。住宅街の中にひっそりとそのお店がありました。
清澄白河エリアは美術館やギャラリーが点在し、蔵前と並んで日本のブルックリンともいわれています。近年はコーヒーショップが増え、ブルーボトル日本一号店も清澄白河でした。「コーヒーの街」と呼ばれる場所、駅からやや離れた場所であることも出店の地として選んだ理由かなと感じます。喧噪を抜けて静かな場所へ、10分ほど歩く時間が日常から非日常へ心が切り替わるスイッチに。
製本工場をリノベーションして仕上げた店舗で洗練された外観。いや、もうおしゃれです。本音を言うと、ちょっと気おくれ、緊張しました。
ゆったりした時間を過ごすなら
平日に行くのが良さそう
そんな気持ちを全て掻き消してくれたのが応対してくださったスタッフさん。予約していた名前を告げると静かに丁寧に、最上のスマイルで席に案内してくれます。
内観は非常にシンプル。使われている色数が少なく、心がホッと落ち着きます。席はコの字カウンターのみで26席。喫茶店では珍しいしっかりとしたソファタイプで、時間を気にせずゆっくりしてもいいんだよというメッセージが表れている気がします。
平日の夕方ということもあり、他にお客さんは5人ほど。スタッフさんによると平日は予約なしでもゆったりと過ごせる。一方で週末は混雑する日が多いので、予約がおすすめとのことでした。
「インスタを見てご来店くださったのですか?」席に着くとメニューを出しながらスタッフさんが尋ねてきました。友達から薦められたことを伝えつつも、SNSで知って来店される方が多いんだなぁと推察。あとで調べてみると、Instagramの同スポットにはたくさんの投稿が集まっていました。
5種の抽出方法で楽しむ
コーヒーのコース
初めての来店であること、コーヒーに詳しくないことなどを知ったスタッフさんが、メニューを丁寧に説明してくれます。ジャンルなどを説明するだけではなく、フレーバーの香りや味、どんな人が好むか、産地による違いなどを仔細に話してくれました。
一般的なカフェのように1杯でオーダーすることももちろん可能ですが、気になったのは『Koffee Mameya Course 2,800円』というメニューです。
え?コース???
一種類のコーヒーを様々な抽出方法で試せるのだとか。私の不安を先読みして「安心してください。量は全て合わせて350mlほどです」と話してくれました。せっかくなのでそのコースを注文します。
何より好感がもてたのは、自然な会話の中で私の要望や想いを組み入れて、商品をおすすめしてくれること。メニューの全てを説明はできないからこそ、反応をみながら少しずつ絞っていき、私が満足しそうなオーダーに近づけてくれます。
コーヒーに詳しくない人あるあるだと思いますが、カフェで選択肢が多いと結局選べなくて一番最初に書かれているものを選んだり、根拠なく名前で選んでしまい、そのコーヒーが何なのかわからないまま、いただくことが多いですよね。
「コーヒーって詳しい人もそうでない人もなんとなく決めちゃいがち。何を飲んだかちゃんと知ってもらいたいんです」
スタッフさんのその言葉に、メニュー説明に時間をかける理由が込められていました。
メニューにはベイクドチーズケーキなどコーヒーに合うデザートも用意されているほか、アルコールも扱っていて、「コーヒー・ハイボール」「オ・レのマティーニ」などカフェならではのカクテルが並びます。この雰囲気の中で、大切な人といつもと違う話をしにきたいなぁと、早くも次回に思いを巡らせます。
最上級のホスピタリティ
人時生産性どこ吹く風
ゆっくりとしたペースでコーヒーが1品ずつ提供されます。それぞれの味についてレビューをしようと思いましたが、その会話はお店で実際に体験してもらいたいのでここでは割愛。
1杯の物語を聞くだけで、不思議なものでひとくちが急に誇らしくて大切なものに変わってきます。ふと気になって、黒いグラスを使っている理由を尋ねたのですが、その回答に驚きました。
「コーヒーの色で先入観を持っていただきたくないんです」。
コーヒーはどこでも飲めます。自宅でももちろん、コンビニでも美味しいコーヒーを買えるし、カフェやファストフードもここそこにあります。同じ1杯のコーヒーでも、どこで飲むか、誰と飲むか、どうやって飲むかで価値が大きく変わる不思議なアイテムだなぁと改めて感じました。
コースとスタッフとの会話を楽しみ、およそ1時間。本を読むこともなく、スマホを開くこともないひとときです。
他にお客様は3組4名、スタッフは5名。1組に対して1人のスタッフが対応しているように見受けられました。商品を出してくれるたびに細かく説明してくれて、私にそんなに時間を使って…怒られませんか?元ファミレスチェーンの社員ゆえに人時生産性という変な視点で見てしまいます。
人対人は究極の1on1マーケティング
少子高齢化で働き手が減り、求人費や最低賃金の上昇で人件費コストは上昇。特に外食は働く場としての選択肢が多いので思うように採用ができないという話を良く聞きます。価格での競争が激しいゆえにコストプッシュを価格に転嫁するのも難しい業種だと思います。
対策として期待されているのがデジタル化ですよね。テーブルにタブレットを置いたり、料理を提供するロボットの活用、無人レジ、アプリでの注文など今まで従業員が行っていた作業をデジタル機器に委ねる選択をするお店も増えてきました。
最新の技術を活用したお店に行くと感動やワオ!がありますが、その驚きはやがて当たり前になっていくんだろうなぁと個人的には思っています。ドリンクバー、コールボタン、お寿司の回転レーン、ロボットによるご案内などが今では「普通」になったように。
1on1マーケティングなど「あなたに向けた」価値提供をAIなどで出来るサービスも増えてきました。これからもっと進化していくことに期待しつつも、今回は改めて人による接客の価値を強く感じることができました。私が好みそうな1杯を一緒に選んでくれて、より一層美味しく感じさせるコーヒーの物語を聞ける体験の裏側には、スタッフさんのコーヒーへの愛情、知識、お客さまを理解する目…など一朝一夕では創れない教育と思想と経験があってこそですよね。
UberEatsや出前館など宅配サービスの台頭などで「食」を楽しむ場が広がりました。だからこそ、あえて店舗に行く理由はなにか、そこでしか得られない体験はなにか。これからの飲食店に求められる大切な要素です。むしろ価値付けを出来れば「食べる」「飲む」以外の新しい動機を作ることができます。お店に行く価値、人による接客の価値を改めて感じさせてくれた「KOFFEE MAMEYA -Kakeru-」は時代に逆行しているように見えて、飲食店の本質がありました。
KOFFEE MAMEYA
▶︎http://www.koffee-mameya.com/
予約ページ
▶︎https://yoyaku.toreta.in/koffeemameya-kakeru/#/
※商品や価格は2021年9月時点の情報です。
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著者情報

- よしだけいすけ
- 2020年5月よりカラビナハート株式会社に入社。10社ほどの企業SNSアカウントのコンサル・運用支援を行っている。公式アカウントのフォロワー増や投稿のノウハウだけではなく、目的に合わせた目標設計やビジネス貢献の可視化、再現性ある仕組み作り、SNS担当者のトレーニングが得意領域。2020年4月までは株式会社すかいらーくHDのマーケティング本部にてコンテンツコミュニケーションチームのリーダー。7つの公式Twitterアカウントを立ち上げて合計210万フォロワーに。広告宣伝のほかアプリ、メルマガ、公式サイト、ファン施策、ポイントプログラムなどを担当した。店舗勤務含めて15年間在籍。
Twitter:https://twitter.com/ruiji_31
note:https://note.com/yoshiwo_note