目線はすでに世界。日本の食ベンチャー7社の視点とは

目線はすでに世界。日本の食ベンチャー7社の視点とは

2021年9月9日開催のオンラインイベント「Foodtech Venture Day - World Food Forum Masterclass edition - Japan」のレポート第2弾。世界のフードシステム改革のカギを握る、日本のフードテックベンチャー7社によるプレゼンテーションの概要をお届けします。

第1弾:[フードテックベンチャーデー]イベントレポvol.1

登壇者

本パートでは、クックパッド株式会社の住 朋享がモデレーターとなり、農業、食、エネルギーの3つのテーマを軸に、日本発のパイオニアプレイヤーが登壇。熱のこもったプレゼンテーションを世界に向けて発信しました。

【モデレータ兼スピーカー】
クックパッド株式会社:住 朋享

【プレゼンター】
●ベースフード株式会社:橋本 舜 氏
●株式会社ユーグレナ:鈴木 健吾 氏
●株式会社プランテックス:山田 耕資 氏
●インテグリカルチャー株式会社:羽生 雄毅 氏
●株式会社SynecO:舩橋 真俊 氏
●株式会社ファーメンステーション:酒井 里奈 氏
●ギフモ株式会社:森實 将 氏

ベースフード株式会社:橋本 舜 氏
主食をイノベーションし、健康を当たり前に

橋本氏:私たちBASE FOODは、世界で初めて、完全栄養の主食を開発・販売している会社です。一般的なパンやパスタに使われる小麦粉ではなく、全粒穀物や豆、海藻類など15種類ほどの食材を栄養計算して配合、さらに食品加工技術を使って製造しており、従来の主食同様においしく食べられる製品を追求しています。2016年の発売以来、現在累計1000万食を突破しています。

開発の背景にあったのは、少子高齢化問題、現代社会ならではの食生活の変化です。健康的だと言われてきた日本の食事は女性の社会進出など時代の変化とともに、維持することが難しくなり、栄養バランスが崩れているのが現実です。そこで「手軽にバランスのいい食事を取り入れることで、健康寿命を伸ばし、高齢世代を支える若い世代もより健康になる」そんな未来をBASE FOODで実現できたらと考えています。

BASE FOODは、植物性たんぱく質がベースです。賞味期限が長く、定期購入なので生産量がコントロールしやすく、食品ロスも抑えられます。健康、気候変動対策、つくる責任といったSDGsの観点からも貢献できる製品ですので、今後は世界への展開を見据えています。

株式会社ユーグレナ:鈴木 健吾 氏
ミドリムシは社会の課題解決に繋がる

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鈴木氏:当社は立ち上げからサスティナビリティを意識した事業展開をしており、事業拡大そのものが社会課題縮小に繋がると考えています。

社名のユーグレナとはミドリムシのことです。植物と動物の両方の性質を持ち、非常に栄養価が高いものです。また、人の身体で消化吸収しやすいという特徴から、主に食品としての利用に注目されています。味についてはまだ課題がありますが、まさに今、加工技術を駆使して「おいしさ」の追及に取り組んでいる最中です。

さらにミドリムシには、人の呼気や生活から出る二酸化炭素や窒素、リンを浄化する作用があり、宇宙でも注目されています。現在、ミドリムシがどれだけあれば宇宙で人間の生活が維持できるのかといった研究開発を実施しており、いずれは地球環境への応用を念頭にもいれています。

将来的には、プランクトン食を流行させた新しいカルチャーの創出をしたいと考えています。また今現在、余ったユーグレナを農業の肥料として利用して野菜の収穫量を増やしたり、保存期間を長くするといった食品ロス削減に繋がる技術も出てきているので、今後はこうした二次的な利用の仕方で社会課題に貢献していきたいと考えています。

株式会社プランテックス:山田 耕資 氏
植物生産の一大グローバル産業創出に挑む

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山田氏:当社は、光や空気、水を緻密に制御できるようにした新たな密閉型の栽培装置を開発している会社です。従来の5倍もの面積生産量が実現でき、植物の成長を引き出せるため、安定度も収益度も高いのが特徴です。

現在は、レタスなど葉物が中心ですが、今後はイチゴなどの果菜類などにも範囲を拡大していきます。量産につながる研究も進め、いろいろな栽培レシピを抽出していきたいと考えています。

具体的な導入事例としては、来年の初旬に大手スーパーの密閉型植物工場を、さらには大規模なリサーチセンターも立ち上げる予定です。

植物工場は『食の水準を引き上げる技術』であり、世界に広げていくことで高効率で省資源な食料生産がを実現し、持続可能な農業が可能になると見据えています。

すでに化粧品分野では新たな取り組みも始まっており、美容や健康など利用局面は多岐にわたっています。まずは、ビューティ×フード×テクノロジーで、身体の内面から美しさを引き出すという取り組みも化粧品大手企業と開始しました。

インテグリカルチャー株式会社:羽生 雄毅 氏
誰もが培養肉を作れる未来を目指す

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羽生氏:人類にとって不可欠なたんぱく源。市場が巨大である一方、環境負荷の大きさも課題になっています。その解決策として注目されているのが、培養肉です。
これまでの細胞培養は莫大なコストがネックでした。そこで当社は、さまざまな種類の細胞を培養できる「カルネットシステム」という新技術を開発しました。まずは一部レストランで、培養フォアグラから提供を開始していこうと考えています。

自社で培養肉を作って販売することも将来的に可能ですが、それよりもこの技術を幅広く提供し、農家や飲食店、個人など、誰もが培養肉を作ることができるという一歩先を目指しています。
また将来的に、このカルネットシステムは、石油化学コンビナートレベルの巨大なものになると予想しています。いろいろなパートナーシップを組んで、システムの構築、展開していきたいです。細胞培養の技術が世界に発展していくことで、新たなものづくりの境地を開いていけたらと考えています。

株式会社SynecO:舩橋 真俊 氏
生態系の拡張で、全ての命と生きる社会を

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舩橋氏:当社はソニーグループ株式会社が2020年9月に創設したコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fund:Environmentの第一号案件として設立されました。背景にあるのは、食料生産が生み出す「生物多様性の喪失」という大きな問題です。
従来の農業は、食料生産を増やそうとすると、生態系の破壊や生物多様性の喪失につながるという、二律背反が生じています。そのため、この矛盾を乗り越えて生態系の拡張を目指し、社会も生態系も持続可能な人間活動を通じてウィンウィンになる世界「全ての命と生きる社会」を目指しています。

その解決方法が、小規模農場に200種以上の多様な植物を混生・密生させて、生態系を構築しながら育てていく協生農法(Synecoculture)という栽培法です。今までのように1種類の作物を決まった時期に収穫するのは難しいですが、大きな環境効果と総合的に高い生産性を見込めます。また、従来の農業より展開できる地域は広く、乾燥地や土地の栄養性の乏しいところでも継続的な生産ができることが強みです。

さらに、農地に次いで環境破壊規模が大きい都市空間や生活圏で、小さなプランターレベルで生態系の拡張原理を学習できるキットも開発しています。単に生態系を構築するだけでなく、ICTを使って生態系が持つポテンシャルを引き出しながら各種サービスを展開していきたいと考えています。

株式会社ファーメンステーション:酒井 里奈 氏
日本の発酵技術を使って価値あるものに

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酒井氏:当社の社名は「発酵の駅」という意味で、その名の通り「発酵技術を使って未利用資源を価値あるものに」を目的に製造、販売をおこなっています。

使っている未利用資源は、例えば食品会社で製品の製造工程で出た皮やカスや、流通の過程で痛んでしまった果物、企業の研究開発で使用した食品の余りなどです。これらを日本の醸造技術をベースに、ごみを出さない、サスティナブル、省エネルギー、節水など、環境や地域にも配慮した製造方法で製品を作っていくことを大事にしています。

こうしたアップサイクルは注目されていますが、製品価格が高い、認知が低いなど、サスティナブルだから買うという人は、まだ少ないという課題があります。今後は市場そのものを作っていくために、さまざまな企業と関わって露出を増やし、実際の商品を見たり手に取っていただくことで、新たな常識を作っていきたいです。そうして生活者の方が自然と、気軽に買ってたらソーシャルアクションに参加していたといったところまで目指していけたらと考えています。

ギフモ株式会社:森實 将 氏
年齢を重ねても、食べる喜びを

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森實氏:当社はパナソニック初のスタートアップベンチャーとして、「デリソフター」という新しいコンセプトケア家電を製造販売しています。「デリソフター」は、食べ物の見た目はそのままに柔らかくして食べられるようにできる調理家電で、圧力鍋のように通常調理もできます。

この商品のアイデアは2名の女性社員の介護経験と食事に対する想いの掛け合わせから生まれました​​。高齢になると食べる力が弱くなり、食べることがそのものが楽しめなくなります。日本は世界一の高齢化社会で、将来的に多くの人がこの課題に直面していきます。「食べることは生きること。出来る限り、食べる喜びをそのまま持ち続けてほしい」そうした想いで開発に至りました。

また現在、デリソフターは高齢者のみならず、脳性まひなどで嚥下障害がある方にも活用いただくなど範囲が広がっています。とは言え、まだ社会的に認知が足りていません。今後より普及させ、将来的なビジョンとして「人生100年時代のなかであらゆる世代の困りごとを解決し、あらたな価値を提供していきたい」と考えています。

イベントレポート次回は
食ベンチャー7社によるパネルディスカッション

次回は、モデレーター2名とプレゼンター7社によるパネルディスカッションのレポートです。日本がグローバル化にどう貢献できるかについて、2つめは事業のグローバルの可能性についてです。



writing support:Miyuki Yajima



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