経済と社会的価値を両立。びっくりドンキーの食ロス削減

経済と社会的価値を両立。びっくりドンキーの食ロス削減

外食産業から出る食品ロスは年間で116万トン。(農林水産省 平成30年度推計値)外食産業にとって食品ロスや食品廃棄は、恒常的な課題となっています。この課題に20年以上前から取り組んできたのが、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」などを運営する株式会社アレフです。先駆けて課題に取り組んだ背景や、お客さまが自分ごと化できる仕組みとは?株式会社アレフの渡邊氏と松本氏にうかがいました。

お話をうかがった方

株式会社アレフ エコチーム
リーダー
渡邊大介 氏

株式会社アレフ 取締役室
広報担当
松本総一郎 氏

生ゴミは宝。店舗からの食品ごみを資源に

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ー 1997年から直営店を中心に生ごみ粉砕乾燥処理機を導入されていますね。当時はかなり先進的な取り組みだったと思いますが、どのような課題があったのでしょうか。

渡邊氏(以下、渡邊):1990年代、廃棄物焼却施設等から排出されるダイオキシン類による汚染が社会問題となっていました。店長会議でその問題について話し合った際、焦点があてられたのが店舗から排出される生ゴミでした。当時、1店舗から廃棄される生ゴミは1日に50kg。せっかく農薬や化学肥料を使わずこだわりの食材で作った商品の一部が、ゴミになり焼却場に運ばれてしまう。
この現実を目の当たりにした創業者の庄司昭夫が、「食品廃棄物は、肥料としてリサイクルしよう」と。メーカーと共同で生ごみ処理機を開発し、1997年に導入を開始しました。


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30kg生ごみ処理機


松本氏(以下、松本):「びっくりドンキー」のようなチェーンストアは、店舗数の増加が環境破壊に繋がってしまうのではないかという懸念が、創業者の庄司にはありました。本来はおいしいものと幸せな時間を提供する存在であるべきはず。逆の存在になり得ることに、強い違和感をおぼえていたようです。外食業はどうしても生ゴミがでることを前提としながら、循環型の店舗運営ができるチェーンストア展開を目指しました。当時はまだ、環境への投資や循環型のあり方が珍しかった時代。社内的にも、疑問視する空気はありましたね。


ー 生ごみ処理機の開発から手がけたとなると、大きなチャレンジだったと思います。当時は社内でも疑問の声があったのですね。

松本:環境問題に詳しい人たちには方向性が見えていましたが、現場にとってはストレスがあったのも事実。ですが、社内教育で環境問題についてのレクチャーや専門家によるセミナーを実施し、社員を啓蒙していきました。結果として、自分の会社に対するプライドやモチベーションが上がり、ポジティブな捉え方に変わっていきましたね。

渡邊:「店は学校である」という言葉があり、ゴミの分別ひとつとっても「なんのためにやるの?」から教育しています。創業者の庄司は「生ゴミは宝だ」と言っていましたが、ここ数年は、SDGsという共通用語によって、社内でも伝わりやすくなったと感じます。

お客さまが食品ロスを
「自分ごと化」できる仕組みに

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ー 廃食用油のアップサイクルにも取り組まれていますね。スタートの経緯を教えてください。

渡邊:家庭用廃食用油の回収は2006年にスタートしました。回収した廃食用油はバイオディーゼル燃料や飼料、肥料、インク原料、工業用オイル、ボイラー燃料、石けん原料など、用途に合わせてさまざまなリサイクル原料として活用されています。
本社のある札幌市のゴミ有料化にあたり、民間企業と消費者協会、行政が一体となり、ゴミの削減に取り組んだことがきっかけです。「びっくりドンキー」ではフライドポテトなどに使った廃食用油が、1店舗から1ヶ月あたり約130kg排出されます。もともと業務用の廃食用油は専門業者によってほぼ回収されていましたが、家庭用は回収されていませんでした。だったら、家庭用を回収すれば一石何鳥にもなるんじゃないかと。「びっくりドンキー」の一部の店舗で、お客さまの家庭用廃食用油を回収しています。


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ー 利用者からはどういった反応がありますか?

渡邊:家庭用廃食用油の回収については、固めて捨てるにしてもお金がかかるので、「集めてくれて助かる」といった声をいただいています。環境に良いことをしている、社会に貢献できている、といったポジティブな反応ですね。
アップサイクルした燃料をホワイトイルミネーションの発電機に使用するなど、目に見える形で使えるようなイベントや取り組みに供給しています。

一方で、燃料というのはお客さまにとって、自分ごとになりにくい側面がありました。もっとわかりやすい形にしたいと取り組んだのが、ハンドソープへのアップサイクルです。2019年から開発に着手し、2021年2月からは全国の「びっくりドンキー」約75店舗の洗面所に導入しています。


ー お店で出る食品ロスについても、「もぐチャレ」などお客さまが自分ごと化できる取り組みをされています。

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渡邊:「もぐチャレ」は、従業員の発案で2006年からスタートしました。小学生以下の子どもが、「注文した料理を残さず食べきるチャレンジ」に成功すると、店から表彰状が贈られるというイベントです。チャレンジに2回成功すると、次の来店時にオリジナルデザートのプレゼントも。
「食べ残しを減らそう、食べ切ったらうれしい」を子どもたちに伝える、食育も含めての活動です。
ちなみに、お店で出る食品ロスでいちばん多いものは何だと思いますか?


ー ライス・・でしょうか。

渡邊:そうなんです。「びっくりドンキー」では、炊き立てのおいしさを大切にしていて、炊きあがりから一定時間を過ぎると廃棄するというルールがあります。従来の大型炊飯器では、廃棄量が多くなるケースがありました。小型の炊飯器を導入することで炊き立てのおいしさをそのままに、キッチンでの廃棄量の低減を図っています。

また、ライスの小盛りメニューもお客さまの食べ残し廃棄の低減に繋がっています。「ライスが食べきれない」というお客さまのために、小盛りで50円引きになってお財布にもやさしく、罪悪感も軽減される取り組みです。

2019年度からは、フードバンク運営団体との連携もスタートしました。農林水産省を通じて全国のフードバンクへ情報提供していただき、信頼できる運営団体へ食品を提供。これまで20団体に9種類、約33トンを提供しました。


ー 食品廃棄に関して、多岐にわたる取り組みをされていますね。現状、感じている課題などはありますか?

渡邊:そうですね。食品ロスが出て喜ぶ人は誰もいないと思います。生産者、調理する人、お客さま、生ゴミを運ぶ人など、ロスがない方がみんな嬉しい。食材仕入れ量あたりの廃棄割合を5.8%から5%にすることを目指して活動しています。また、前述の廃食用油の回収(44店)や、生ごみ処理機の導入(113店)は338店舗のうち一部の店舗なんです。「びっくりドンキー」のうち、206店舗はフランチャイズ。「びっくりドンキー」というひとつのブランドでありながら、取り組んでいる内容に違いがあるのは課題です。チェーン本部としては、あくまでも加盟者様に協力していただけるよう努力していく、というスタンスです。(店舗数は2021年10月現在)

経済と社会的価値を両立し
インパクトある取り組みを

ー 食品ロスという課題も含め、持続可能で循環型の社会へという機運が感じられます。先駆けて取り組んできた企業として、今後考えていることについて教えてください。

渡邊:食品ロスや生ゴミのリサイクルなどは、外食企業として最も多く出るものですので、より一層注力すべき課題だと感じています。例えば、今は売り切れをネガティブに捉える空気がありますが、「売り切れ=お客さまにご愛顧いただきありがとうございます」に転換していきたいですね。一社で取り組めることは限られていますし、「早くから取り組んできたから、すごいだろう」という時代ではありません。業界としても国全体としても、食品ロスにはスピーディーでインパクトある取り組みが求められると思います。私自身も一生活者として、普段の生活においても意識して行動することが大切だと感じています。

松本:弊社に限らず、食品ロスや環境への取り組みが盛り上がってきていますが、気をつけなきゃいけないのは「スローガンだけで終わっちゃいけない」ということ。民間企業は、そもそも経済価値をあげて社会に還元していくもの。結果を出していかなければなりません。経済と社会的価値を両輪で回していくという覚悟をもって、各企業取り組んでいると思います。発信して満足して終わりにならないよう、価値ある取り組みを続けていきたいと思います。

▶︎株式会社アレフ SDGsレポート2021



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