行き場なき食品を必要な人に。食品ロス解消の新事業モデル

行き場なき食品を必要な人に。食品ロス解消の新事業モデル

日本国内で600万トン超あると言われる食品ロス。本来食べられるのに廃棄される食品がある一方で、恒常的に栄養不足の状態にある人たちが世界中にいるのも現実です。
事業者から廃棄予定品を引き受け「エコイート」で販売、慈善団体や生活困窮者への支援をおこない、食品ロス削減と啓発活動をおこなっているNPO法人日本もったいない食品センター。代表理事の高津氏に取り組みの背景や事業モデルについてうかがいました。

お話をうかがった方

NPO法人日本もったいない食品センター
代表理事
高津博司 氏

売って終わりにしない。
食品ロス削減ショップ「エコイート」

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ー まずは、食品ロス削減ショップ「エコイート」について教えてください。

高津氏(以下、高津):「エコイート」は、廃棄予定の飲料や食品を買取りまたは無償で引き取り、賞味期限残にかかわらず、安全かつおいしく食べていただける商品を取り扱う店舗です。商品を購入いただくことにより、食品ロスを減らし、生活に困窮する方の支援に繋げています。スタッフは賞味期限全般に関する理解を深め、安全に食せることを確認した上で、陳列された商品の安全性や賞味期限が切れた食品について、お客さまへの啓蒙活動をおこなっているのが特徴です。


ー 販売するだけでなく啓蒙活動もおこなっているのですね。「エコイート」のオープンには、どのような背景があったのでしょうか。

高津:NPO法人の前身として、活動を開始したのが2015年です。それ以前、私は商社を経営していたんですね。事業を営む中で、食品が余って処分に困っている事業者と、三食まともに食事を摂れない方がいるという不条理に直面しました。

最初は慈善事業からスタートし、活動を続ける中でNPO法人化したたものの、会社が存続の危機に直面したんですね。「どうしたらこの大きな社会課題を自力で解決できるか」を考え、持続可能なあり方としてスタートしたのが「エコイート」です。2019年4月大阪の玉川店からはじまり、現在は13店舗を運営。エコイートの売り上げ(剰余金)を使って、食品ロス削減活動費や生活困窮者への寄贈にかかる費用を捻出しています。


ー 利用されるお客さまの反応はいかがでしょうか?

高津:「これどうなん?大丈夫なん?」と、聞いてくるお客さまもいらっしゃいます。賞味期限と消費期限の違いなどをお伝えし、おいしいく食べられる商品であることを説明しています。
同じお客さまが数ヶ月後にいらして「前にも来たけど、ほんまやね。家にあるのも期限見て食べてみたよ。捨てなくなった」と、おっしゃっていて伝わっているのだと感じました。個人の食品廃棄を減らすには、知識をつけてもらうことが大切です。保管状態や期限などは、お客さまと対面で説明しながら販売しています。理解も深めてもらえますし、家庭にある食品も見直してもらえるようになっていきます。

持続可能な事業形態で目指す
合理的で優しい世界

ー 食品ロスと生活困窮者の方への支援という、大きな2つの社会課題をミッションとする中で事業継続の難しさもあると思います

高津:食品ロス事業としては、期限内に売り切る難しさや仕入れ、物流、店舗での売り上げをあげていくことなど、さまざまな課題を抱えています。
食品ロスの現状についてはここ数年で理解されるようになり、それを大義にビジネスをする方が増えてきました。一方で、NPO法人は運営資金の確保が難しく、ほとんどの団体が寄付金、国、自治体からの助成金等により成り立っていると言われています。せっかく良いことをしているのに継続できなくなった団体をいくつも見てきました。


ー 事業モデルを確立する上でどういったことを意識されましたか。

高津:「食品ロスと貧困の問題を解決する」というミッションを常に意識することですね。そして、寄付金や助成金がなくても継続できる事業形態を目指しました。食品が余り、困っている事業者、当団体、エコイートで購入されるお客さまが、WIN× WIN×WINの関係を築けば、持続可能な事業モデルが確立できると考えています。ですから食料品の買取・引き取りに関しても、非営利団体であることを理由に善意を強要せず、価値ある食品に対して購入することを基本としています。関わる人もボランティアではなく、胸を張って仕事ができるよう意識していますね。

仕入れの面でも、売れ筋よりも食品が余って困っている会社を優先しています。自分たちが開発したおいしいものを無駄にせず有効活用できるのは、金銭的にも心理的にも救われます。
「エコイート」では、販売の仕方も工夫しています。余って困っているものを説明しながら販売するんですね。「沢山入ってきましたので、みなさんご協力ください。最低一個はカゴに入れましょう」とアナウンスしたり。そうすると、みなさん笑いながらカゴに入れてくるんです。「エコイート」はただ陳列して販売するだけのお店ではないんです。

食関連企業には切り離せない課題を
原点に戻って見直す

ー 企業へのアドバイザリー業務もされていますが、どういった背景でスタートしたのでしょう?

高津:企業からお問い合わせをいただくことが多かったんです。例えば、「パン屋を経営していて、毎日30店舗で廃棄パンが出るので有効に使う方法はないか」というお問い合わせ。簡易パッケージの提案や、期限を延ばす方法をお伝えしました。また、住宅メーカーや家電メーカーなどからも食品ロスに関するお問い合わせがありますね。


ー お問い合わせはコンスタントにあるのでしょうか?

高津:アドバイザリー業務へのお問い合わせもいただきますが、多いのは「食料品支援を依頼したい」が1日10〜20件ほど。食料品の寄贈や買い取りに関するものが、1日数件です。海外からもエコイートの仕組みについて、お問い合わせをいただくことがあります。
製造、卸、小売り、それぞれに事情は異なりますが、食品を扱っていてロスが出ないということはほとんどありません。買取の相談は常にあるので、こちらから営業したことはほとんどないですね。


ー 食品を扱っている企業にとってロスは切り離せない課題ですが、今後どうなっていくとお考えでしょう?

高津:みんなで一気に無くそうというのは、なかなか難しいと思います。生産者や製造者は経済ロットもありますし、予測不能な事態も想定すると、完全受注製造への転換は容易ではありません。
生活者個人に関しては、知識がないゆえに捨てられてしまっている部分があります。食べられるものをできるだけおいしく、より長く食べられるような保管方法などの、正しい知識を啓蒙していくことが大切だと考えています。


ー 最後にこれから検討している施策や取り組みがあったらぜひ教えてください。

高津:「エコイート」は、廃棄される可能性の高いものを販売しながら、その過程で啓蒙活動をしているお店です。食品ロスと貧困という社会課題の自己解決に向けて取り組んでいます。1日1食の人をゼロにしたい。先行投資でマイナスもありましたが、事業モデルを確立し持続可能な運営体制が見えてきました。マニュアル化して、「エコイート」の店舗を全国に増やしていきたいですね。
「なぜ食品ロスが社会課題なのか」に真摯に向き合ってもらえれば、歩みは遅くとも事業系は半減、個人は3分の1くらいに削減していけるのでは、と思っています。


日本もったいない食品センター



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