
食品素材
食ベンチャー7社の視点、グローバルイシューへの手立て
2021年9月9日開催のオンラインイベント「Foodtech Venture Day - World Food Forum Masterclass edition - Japan」のレポート第3弾。モデレーターと日本のフードテックベンチャー7社によるパネルディスカッションの内容をお届けします。
日本発パイオニアが創り出すより良い未来
グローバルイシューの日本型解決アプローチ
【モデレーター】
● 株式会社シグマクシス:田中 宏隆氏
● 株式会社リバネス:塚田 周平氏
【プレゼンター】
●ベースフード株式会社:橋本 舜氏
●株式会社ユーグレナ:鈴木 健吾氏
●株式会社プランテックス:山田 耕資氏
●インテグリカルチャー株式会社:羽生 雄毅氏
●株式会社SynecO:舩橋 真俊氏
●株式会社ファーメンステーション:酒井 里奈氏
●ギフモ株式会社:森實 将氏
グローバルイシュー解決に向け日本が貢献できること
田中氏(以下、田中):先ほどは、各社熱のあふれるプレゼンテーションをお聞きして、今後日本が貢献できることや、多様な価値を提供できることを強く感じました。そこでこのパネルディスカッションでは、大きく2点お聞きします。1つめは、日本がグローバルレベルの課題解決にどう貢献できるかについて、2つめは事業のグローバル展開の可能性についてです。その前にまず1社、ベースフード株式会社の橋本さんに、全体的な感想をいただきたいと思います。
橋本氏(以下、橋本):今回、海外の方に聞いてもらえたことがとても良かったですね。各社それぞれの分野、クリティカルな領域で、グローバルから少しずらしたソリューションもあり、それが日本人らしいと思いました。
田中:確かに日本らしい貢献の方法があると感じました。ひと通りみなさんのプレゼンテーションをお聞きしましたが、日本のフードベンチャーがグローバルに貢献できることについて、ギフモ株式会社の森實さん、いかがでしょうか?
森實氏(以下、森實):日本ならではの「食にこだわる」という部分で、各社独特な展開をされていると感じました。当社であれば、「高齢化社会を迎えている日本で世界に先駆けて何ができるのか」というテーマです。10年、20年後には、世界の他の国も確実に同じように高齢化が進みますから、その点で「デリソフター」は世界に通用すると思っています。そこで重要になるのがコンセプトです。ハード面だけでなく、「ケア家電」というコンセプトの価値を世界各地の文化などにあわせてカスタマイズし、チューニングしていくことが重要だと思います。
田中:もう一つ、協生農法という新たな気づきをくださった株式会社SynecOの舩橋さん、日本が貢献できるポイントは、どんなところだと思われますか?
舩橋氏(以下、舩橋):日本には真面目で誠実で、全体目標を堅持して貢献していく意識が高い方がたくさんいます。無形遺産的なことですが、こうした日本型のガバナンスを企業価値として生かせるのではと思います。途上国でプロジェクトを行っていると、はじめはうまくいっても途中から金銭問題であったり、国際機関がストップさせてしまうことから、とん挫してしまうのはよくあることです。日本的なガバナンスを生かして市場開拓していけば、強いのではないかと思っています。
田中:「商品を選んでいたら、自然にソーシャルアクションに参加していた。という未来になれば」という言葉が印象的でした。株式会社ファーメンステーションの酒井さんはいかがでしょうか?
酒井(以下、酒井):当社の発酵技術のベースは醸造なので、まさに日本らしさがあると思います。また、日本にはひとつのものからひとつの製品だけを作るというより、他のものに目を向けて配慮する、目を配ることができるステークホルダーが多い印象です。こうしたことは今後のビジネスにはとても大事なことで、日本の傾向だといえたらおもしろいと思いますね。
グローバルに展開していくためのカギとは
塚田氏(以下、塚田):グローバルに展開するにあたり、新しい技術や今までにないものを世の中に広げていく際には、「どう使ってもらうか、実装していくか」がカギになると思います。すでに世界に向けて製品を出されている株式会社ユーグレナの鈴木さん、世界に目を向けていくなかで、どうアジャストしているのかを教えてください。
鈴木:ユーグレナは日本で認知度を向上させるのが大変でしたので、AIDMAについては試行錯誤してきましたが、様々な手を尽くせば少しずつ認知度も向上していくということがわかったので、海外でも様々な手を尽くそうと考えました。
シンガポールで科学展を行ったり、中国でセミナーを開催したりと、まずはアジアを中心に認知度向上を図っています。将来的には、アメリカや環境志向の高いヨーロッパ圏などにトライしていきたいと考えています。
塚田:今までにないものという点では、培養肉の展開を今後どう進めていくのか、インテグリカルチャー株式会社の羽生さんにお聞きしたいと思います。
羽生:細胞培養は、言ってみれば食料の生産技術そのものです。世界的に見ても、食料生産を担っているのは、地域の生産者あるいは小規模生産者ほとんどです。。技術というのは使い方なので、当社としてはこうした小規模生産者の方たちとの関係がどうなるか、こういった方々が使える培養技術が何かを考えていくことが重要です。小規模で生産している人たちの考え方や想いを聞いてみたいと思っています。
ーここで、全国愛農会(家族農業、特に有機農法を中心に行っている農業者のネットワーク)の会長である飯尾氏がディスカッションに参加し、生産者の視点から「テック偏重にならず、革新の部分と伝統を、同じフィールドで語り合える関係性が重要である」との意見を述べられました。
田中:新しいプレイヤー同士が対立構造ではなく、未来に向かって手を取り合っていけたらいいですね。特に若い層もどんどん巻き込んでいけたらと思います。最後に、世界に向けたメッセージを各社ひと言ずつお願いします。
森實:家電は、特化したパーソナライゼーションが実現できます。その点で、デリソフターは、まさに人生の残りの時間でどんなものを食べていきたいか、という新しいフードテックから家電の在り方、新しい価値観を提供できるものです。若い人にもぜひ関心をもっていただききたいですね。
橋本:ベースフードが世界のメジャープレイヤーになれるように、引き続き急成長していきたいと思っています。そのための仲間を募集していますので、よろしくお願いします。
酒井:今後当社では、海外の未利用資源を使った製品化、販売など、グローバルに展開したいと考えています。協力いただける方がいらしたら、ぜひお願いしたいです。
山田:社会が抱える大きな課題は、企業単体で取り組むのは限界があり、効率が悪いと感じています。ぜひ連携がうまくいくような社会の実現を目指していきたいです。
鈴木:サイエンスを軸にすると、いろいろな社会課題の解決に繋がる取り組みが出来ると考えています。同じようにサイエンスを通して社会課題解決をしようとしている方々とオープンイノベーションで、効率よく、社会課題を解決していきたいと思っています。
舩橋:細胞から生態系レベルまでさまざまな極論を突き詰めると、その過程で多様な側面を価値化できたり、思わぬ繋がり方ができたりするものです。今後どこかでそうしたセレンディピティが生まれたらいいと思っています。
羽生:細胞農業は、新しいものを作ることができる魅力的な装置のような気がします。今後いろいろなアイデアが世界中から出てきたらおもしろいと思っています。
最後に
田中:みなさん、ありがとうございました。日本には、人、技(テクニック)、技術(テクノロジー)もあるので、国内だけではなく、世界と繋がった時にすごいものが生まれると思います。さらにここに、日本らしいノリというものも加えて、世の中を明るく元気に、社会課題を解決していきたいと改めて思いました。
この記事が気に入ったらフォロー
ニュースレター登録で最新情報をお届けします!
著者情報

- FoodClip
- 「食マーケティングの解像度をあげる」をコンセプトに、市場の動向やトレンドを発信する専門メディア。
月2-5回配信されるニュースレターにぜひご登録ください。
登録はこちら>>> https://foodclip.cookpad.com/newsletter/
twitter : https://twitter.com/foodclip