飲食店の力に。圧力鍋老舗メーカーの熱い想いとは

飲食店の力に。圧力鍋老舗メーカーの熱い想いとは

昨今の食業界では、生活者のニーズ変化に伴って業態そのものも変わりつつあります。調理器具・調理家電においては、どのような変化や対応が求められているのでしょうか?
本特集では「おいしさの現場から」と題して、食をもっと楽しくもっとおいしく、をテーマにものづくりをされている企業をご紹介していきます。今回は、大阪の老舗圧力鍋メーカー「ワンダーシェフ」にお話をうかがいました。

お話をうかがった方

株式会社ワンダーシェフ
代表取締役社長 伊藤 彰浩氏
商品部 丸岡 望氏

店舗からキッチンカー、直火・IHから電気
時代で変わる圧力鍋のトレンドとは?

ー 業務用圧力鍋でトップシェアを誇る「ワンダーシェフ」ですが、コロナ禍によって何か変化などありますか?

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伊藤氏:コロナ禍で、飲食店の方々が苦労されているのを感じていますし、正直、当社も苦戦しているところはあります。

まだまだプロの料理人の方々には、厨房へ圧力鍋を取り入れることの経済性やメリットを、十分にお伝えしきれていないと感じているので、今後はより一層力を入れていきたいと思っています。当社の製品で、少しでも厳しい状況の解決に貢献できれば嬉しいですね。


ー 商品の動きにも変化がありますか?

伊藤氏:コロナ禍以降の業態変化が影響しているのか、最近では「キッチンカー」で業務用圧力鍋を採用いただくケースが少しずつ増えてきています。そこで今年新たにキッチンカーでもより使いやすく、調理から保温までできる、大容量・プロ仕様の電気圧力鍋(8L)を発売しました。

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直火で使用する通常の圧力鍋は、材料を入れたら火加減を適宜調節して、蓋を開けられるまで待つという使い方です。この電気圧力鍋は、スイッチを押して放っておいたら完全にほったらかしでOK。また、業務用器具の電圧は通常200Vですが、この電気圧力鍋の電圧は100Vなので、キッチンカーはもちろん、コンセントさえあればどこでも使えるんです。

近年、家庭における圧力鍋のトレンドは「直火・IHにかける圧力鍋」から「電気圧力鍋(調理家電)」へと確実に移行しています。業務用の世界でも、今後はそうなっていくのではないかと予測しています。そのため、この業務用サイズの電気圧力鍋も、徐々に市場が動いていくと見ていますね。

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ー また、家庭における食の志向の変化によって、業務用商品を家庭で使いたいという方も増えているそうですね。

伊藤氏:コロナ禍のおうち時間の過ごし方として、自宅で「こだわり料理」を楽しむ方が増えていますよね。もともと、業務用のなかでも比較的スモールサイズの圧力鍋は、男性客を中心に、家庭で本格的にラーメンを作りたいという方など、プロ志向の料理好きユーザーからは支持されていました。当社の圧力鍋を「憧れのワンダーシェフ」というイメージで捉えてくださっているというSNS投稿も多く拝見しています。もちろん、業務用だけでなく、家庭用の圧力鍋もご好評いただいていますよ。

ワンダーシェフの家庭用圧力鍋についてはこちら<クックパッドニュース 10/22配信>
https://news.cookpad.com/articles/43182

新しい料理に、飲食店の課題解決…
圧力鍋が生み出す「新たな価値」

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ー 「ワンダーシェフ」は業務用圧力鍋におけるトップシェアですが、多くの「食のプロ」たちに支持されてる理由は、どんなところにあるとお考えですか?

伊藤氏:当社は創業1950年で、もともとは大阪の町工場でアルミ製品のボウルや調理道具(お玉、軽量カップ、漏斗など)を製造していました。当社がステンレス圧力鍋を販売し始めたのは、ちょうど電磁調理器(IH)が出はじめた頃でした。当時普及していたアルミ製の圧力鍋は電磁調理器では使えないため、ステンレス製の圧力鍋にはニーズがあるのではないかと考えていました。「ステンレスなのでIHでも使える」という特徴は、発売当初から多くの方に支持されているポイントだと思います。

また、サイズ(容量)に豊富なバリエーションがあるという点でしょうか。発売当初、メインのターゲットは「一般の主婦層」でしたが、実際の売り場は百貨店、量販店、ホームセンター、ギフトカタログなどさまざまで、購入層もそれぞれに変わります。そこで、それぞれのターゲットに合うラインナップを揃えていく中で、自然と業務用にも展開していきました。現在、サイズは3L~30Lまで。人気商品は10Lタイプと15Lタイプですが、20L~30Lの大型サイズを作っているメーカーは多く存在しません。圧力鍋は、中の容量が大きくなればなるほど、圧力に対して安全な強度を保つことが難しいため、高い技術力が必要となります。

また、物理的な耐久性では、アルミとステンレスでさほど差はありませんが、酸やアルカリに対しては、ステンレスのほうが強い性質があり、総合的な耐久性はステンレスが勝ると考えています。15L以上はプロ仕様で、より一層耐久性を高めるために、取っ手も含めてオールステンレスの仕様にしています。(※10L以下は法規制上、取っ手は高温にならないプラスチック製)


ー 発売当初、プロの料理人の方々は、圧力鍋に対してどのようなイメージを持たれていたのでしょうか?

伊藤氏:プロの方たちは、ゆっくりと長い時間をかけて作るのがいいことだと、手間暇かけるからこそおいしい料理ができると思ってらっしゃる方が多くいます。そのため、ご自身が修行して習ってきた昔ながらの調理法を変えてまで、あえて圧力鍋を使おうという方は、多くいらっしゃいませんでした。「圧力鍋=短時間料理」というイメージが強いようで、いまだに使っている方は使っている、使わない方は使わない、というのが現状です。

ただ、実際に使っていただくと、そのメリットに驚かれる方が多くいらっしゃいます。以前、ある有名フレンチのシェフの方が、当社の取材企画で初めて圧力鍋を使われたんです。その方は、完成した料理にとても驚かれていました。今まで、長い時間煮込んだ肉の角の取れ方で、柔らかさを判断されていたそうで、圧力鍋で仕上がった肉を見たときに、形が全く変わっていないので、まだ煮込みが足りていないと思って箸入れをしてみたら驚くほど柔らかかったと。「肉の形は変わらないのに、ものすごく柔らかく仕上がっている。これは大発見です」と言っていただけました。


ー 実際に使ってみたプロの方からの言葉は、非常に嬉しいですね。

伊藤氏:「見た目に裏切られた!」という感想は、我々も気づかなかったところで、嬉しい反応でした。「圧力鍋=短時間料理」のための調理器具という考えが多いなか、「使ってみたら、いい意味で想像と違うものができた」「新しいメニューに使えそう」というのは、新たな料理の可能性を感じる言葉だなと思いますね。


ー 新しい料理が生みだせるというのは、シェフの方々にとって大きな価値のひとつですよね。

伊藤氏:実際に使ってみてはじめて「時間短縮のための道具」ではなく、「これまでにない新しい料理が生み出せる道具」であることがわかっていただけたのだと思います。

シェフの多くは、他とは違う料理のオリジナリティを目指してらっしゃいます。その点で、圧力鍋は料理の幅を広げてくれるものではないでしょうか。一見、他とは同じようだけれど違うものが生み出せる調理器具だと思います。

ここ最近は、真空調理や低温調理など、新たな調理法が広まっていますが、圧力鍋調理でムーブメントが起こっているというのは聞きません(苦笑)そういう意味でも、まだまだ伸びしろはあるのかなと。

時間をかけたほうが絶対においしくできる、圧力鍋を使ったら愛情がこもっていないんじゃないかという方もいますが、神話的部分も大きい気もしますし、「圧力鍋は新しい料理を作ることができる道具」という点を、もっと知っていただきたいと思っています。


ー 昨今は、飲食業における長時間労働も問題になっています。圧力鍋で仕込みや調理にかける時間が短くできるのは、労務管理の面でもメリットがあると感じます。

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伊藤氏:まさにおっしゃるとおりです。実際に、あるラーメン店の方からは「スープ作りに十数時間かかっていたものが数時間で済んで、人件費、光熱費の削減にも繋がった」というお話も聞いています。コロナ禍で、多くの飲食店が苦しい経営状況にある今こそ、限られた条件、時間、労働力の中でおいしい料理を提供するために、圧力鍋は大いに貢献できるものだと考えています。

メーカーとしての責任は
最後までユーザーに寄り添うこと

ー「ワンダーシェフ」の魅力のひとつは、「手厚いアフターサービス」ですよね?

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伊藤氏:当社では、業務用・家庭用ともに、修理対応、パーツ交換などの「アフターサービス」をしっかりおこなっています。これについては、とても喜んでいただいていますね。特に、業務用は使い方がハードです。ですからどんなに酷使されたものでも、できるだけ購入時に近い形になるよう、メンテナンスしてお返ししています。

ただメンテナンスに出している間、店舗であればその鍋がなくなると提供できない料理が出たり、業務が止まったりしてしまいますよね。その対応として、メンテナンス期間中に同じ製品の貸し出しもしています。これは非常にご好評いただいています。

買った後もお客さまに喜んでいただけるアフターサービスをするというのは、どんな業種・業態でも大事なことです。メーカーとして、ここはきちんとやっていくべきだと考えています。


ー 店舗としてはとても助かるアフターサービスだと思います。

伊藤氏:この鍋がないと困る、営業できなくなってしまう程というのは、当社にとってとてもありがたいことです。ですからできるだけ業務に支障が出ないよう、より喜んでいただけるサービスをしていきたいと考えています。

また、業務用に限りですが、購入前に35日間トライアルでレンタルができます。導入を検討しているが購入前に使い勝手を知りたい、一度お店で使ってみたいという方には、ぜひ試していただきたいですね。


ー 今年の7月以降、クックパッドにも「ワンダーシェフ」公式レシピを多く掲載していただきました。業務用サービスだけでなく、一般のお客様へのサービスも大切にされていらっしゃいますが、レシピに対する反応はいかがでしょうか?

丸岡氏:ユーザーとの接点がより濃く出来るようになったのではと感じています。本当に偶然ですが、昨日、ちょうどお客さま相談室に「レシピでの加圧時間」についての質問が届いてまして。「クックパッドにもレシピを掲載しています」とお伝えしましたら、「いつも見ているので便利で助かります、嬉しいです」というコメントがありました。最近では、レシピ本は見ない方が増えているので、新たな形での繋がりを作ることができるのは当社としてもありがたいです。

また今回の取材のように、新たなメディアを通して業務用製品のアピールができる、届けたい方々に届けられるというのは、広がりがあって嬉しいことだと感じています。

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業務用圧力鍋としてトップシェアの「ワンダーシェフ」のおいしさの現場。そこには、ユーザーの視点で変化に対応しながら作られてきた商品、豊富なサイズ展開、そして手厚いアフターサービスで向き合うプロフェッショナルたちの想いがありました。

圧力鍋は、単に時短のための調理器具ではなく、食の新たな可能性と価値を生み出してくれるもの。今後、どんな食のイノベーションを起こしてくれるのか、期待が高まります。「ワンダーシェフ」のさらなる進化が楽しみです。


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writing support:Miyuki Yajima



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