健康飲料として再注目!?「クラフトコーラ」ブームのワケ

健康飲料として再注目!?「クラフトコーラ」ブームのワケ

90年代に流行した「ティラミス」、数年前に話題になった「おにぎらず」、直近では社会現象にもなった「タピオカ」など、日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

                                       毎日の食卓を楽しくする「料理の知恵」メディア【クックパッドニュース】より

東京で作られた「クラフトコーラ」と、コーラの発祥

「クラフトコーラ」が流行している。今年6月、カルディーコーヒーファーム、成城石井、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、ペプシコーラと、大手企業も続々と発売。カルディーコーヒーファームのものは、品薄が騒がれたほど。自家製クラフトコーラを提供するカフェもある。今回は、急に訪れたクラフトコーラブームについて考えてみたい。


クラフトコーラのはっきりした定義は、まだない。ブームの発端となったメーカーの一つ、伊良コーラは「柑橘類、スパイス、コーラの実など、すべて天然の材料を使い、小規模な工房で職人が手間をかけて作るコーラ」としている。
伊良コーラは、代表のコーラ小林(小林隆英)さんが東京・下落合でコーラ製造を試行錯誤し、開発した。まず、青山ファーマーズマーケットで2018年7月に販売し始めている。
小林さんがコーラに関心を持ったのは、飲むと持病の片頭痛が和らいだことがきっかけ。世界中のコーラを飲み歩き、あるときインターネット上で100年以上前のコーラのレシピを発見し、開発を始めた(伊良コーラホームページ・『PINT SCOPE』小林さんインタビューより)。


実は大手のコカ・コーラの製品も、最初は複数の天然香料をブレンドして開発された。1886年、アメリカ・ジョージア州アトランタの薬剤師、ジョン・S・ペンバートン博士が作ったものが原型。それは、原液を炭酸水で割る「さわやかで元気になる飲料」だったと、2016年4月13日の朝日新聞記事「あのとき/それから」が報じている。同記事によると、1898年にノースカロライナ州でも、消化不良の治療薬から作ったペプシコーラを薬剤師が発明した。
日本に入ってきたのは1910年代後半で、明治屋が販売していた。一般に広まったのは、第二次世界大戦後にアメリカ軍が駐留し、持ち込んだことから。その後2大ブランドの日本法人が設立され、1957年から販売が始まっている。

自作できる・他にない・体によさそう…「クラフト」の魅力

コカ・コーラのレシピが企業秘密であることは、よく知られている。クラフトコーラが登場するまで、コーラを作ることができる、とは思いもよらなかった人が多かったのではないか。
自作できる、という発見がおそらく、ブームの大きなきっかけだったと思われる。何しろ、今はインターネットで手軽に情報収集ができる。


コーラに先駆けて、クラフトビール、クラフトジンなど、クラフトアルコールブームがあったことも大きい。「自作できる」→「作ってみよう」という回路がすでにできあがっていたのだ。 伊良コーラと同じ2018年にクラフトコーラの製造販売を始めた「ともコーラ」は、原点回帰の薬膳的な天然材料のみで作る。地元の食材を使った地域活性化を志しており、クラフトアルコールと展開が似ている。


炭酸飲料が、ちょうどブームの火付け役の2メーカーが販売を開始した頃からブームになっていることも、影響しているだろう。朝日新聞が無糖の炭酸水が健康志向の追い風もあって人気、と報じたのが2018年4月19日。なんと2017年までの10年間で、炭酸水の生産量は約9倍にも増加していた。
さらに2020年12月17日の朝日新聞は、巣籠り需要もあり、同年の販売数量が過去最高になるという見通しを報じている。
無糖炭酸水は、必ずしも甘味料なしの原液をストレートで飲まれているとは限らない。ウィスキーでハイボールにする人もいるだろうし、割って飲む飲料を合わせる人もいるだろう。カルディーコーヒーファームのクラフトコーラは、シロップを割って飲むタイプである。


健康志向も影響していると考えられる。クラフトコーラは、天然材料の使用や無添加が売り。ハーブやフルーツなどの原料も、体によさそうだ。そもそもコーラ自体が、健康飲料としてスタートしている。
「クラフト」と名のつく飲料がヒットするのは、商品経済が生活の隅々まで行き渡った時代背景もあるだろう。何しろ郊外の中核駅周辺にはたいてい、無印良品、ニトリ、ユニクロなどの大手ブランドが並んでいる。どこへ行っても同じものが手に入るのは便利でもあるが、同時に規格品だけの世界を息苦しく感じる人、人と同じではつまらない、と感じる人もいるだろう。そんな人にとって、唯一無二で手作りの製品は魅力的だ。


また、スパイスカレーやハリッサなど、スパイスの流行もある。
コロナ禍のため、アルコールを出すことが制限されソフトドリンクに力を入れる飲食店がある、若者のアルコール離れなど、脱アルコール的風潮があることも追い風になっているのではないか。
クラフトコーラの前は、手作りジンジャーエールが流行していた。カフェで、自家製ジンジャーエールが続々と販売されたのだ。実はさまざまなレシピで作ることが可能なノンアルコールのシロップ。もしかすると、コーラやジンジャーエール以外でも、まだまだおいしくて楽しいドリンクの世界が開いていくのかもしれない。


画像提供:Adobe Stock



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著者情報

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阿古真理
1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『平成・令和食ブーム総ざらい』『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』など。