伊勢の焼き菓子「ササササササササササ中」誕生とネーミングの裏話

伊勢の焼き菓子「ササササササササササ中」誕生とネーミングの裏話

生活者の購買行動が多様化するなか、新たなユーザーの獲得や販路拡大、ブランド戦略の一環として、ECサイトやネットショップに注力をしていきたいとお考えの方は多いかと思います。そうした方々の参考になるよう、ネットショップでこだわりの商品を多くの生活者に届けることに成功した事例をご紹介していきます。

※この記事は「カラーミーショップ by GMOペパボ株式会社」が運営する「よむよむカラーミー」からの転載記事です。

今回ご紹介するショップ

中谷武司協会
伊勢在住のデザイナー・中谷武司さんがデザインしたグッズを販売。伊勢神宮の御神饌(ごしんせん)をモチーフにしたクッキー「ササササササササササ中(サトナカ)」を伊勢の新しいお土産として展開しているほか、観光客向けに民泊施設の運営も行っています。今回は、ネットショップと実店舗の運営を担当している橋本 ゆきさんに、これまでの歩みや今後の展望についてうかがいました。

伊勢らしく、神宮らしく、河崎らしいお土産を

ーー今の事業をはじめたきっかけについて教えてください。

昼間からワインも飲めるようなカフェをやりたくて、今から20年ほど前にお店をはじめたんです。最初のお店は事情があって閉めたのですが、近所の空き店舗に場所を移してワインバーを運営したり、そのうち昼間もお店をやりたくなってまた新しくカフェをオープンしたりしてて。


ーーそんな中で「ササササササササササ中」が誕生したのはいつ頃ですか?

2008年くらいかな。
伊勢で飲食店をやってると観光客がたくさん来るんです。当時やっていたワインバーにも、近所の旅館やホテルの利用者がよく来られてて、その人たちのために伊勢歩きのマップをつくって販売したのが最初のきっかけでした。

伊勢のお土産って昔は今ほど種類が多くなかったのね。このマップのように、何か伊勢に来た人のためのコンテンツをつくりたいっていう発想が、たまたまクッキーの形になったんです。商品のネーミングやクッキーの味・形状も、武司くんとドライブしていた2時間くらいの間に全部決まっちゃった。そこから開発には1年くらいかかったんですけどね。


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ーー他の食べものや雑貨ではなく、クッキーにしたのはなぜですか?

伊勢は赤福が有名ですけど、ほかにもお餅が10種類くらいあってね。でも持ち帰るには重たいし、日持ちもしないでしょ。パワースポットや「おひとりさま」がブームになって、伊勢に来る女の子がせっかく増えたのにもっとオシャレなものはないのかなって。クッキーならつくりやすいってのもあるしね。


ーー“中”の字を囲む10個の“サ”で「サトナカ」。奇抜なネーミングの由来は何でしょうか。

私たちが商売をやっている河崎って、昔は問屋街で、町内は6つくらいのエリアに分かれていました。その中でも伊勢の長者番付に載るような大旦那たちが住んでいたのが「里中」。クッキーの名前はここの地名から取っています。

私たち、どうせなら「伊勢らしく、神宮らしく、河崎らしいもの」をつくりたかったので、御神饌(※)をモチーフとして塩・米・酒を使うことで伊勢神宮らしさを、「サトナカ」というネーミングで河崎らしさを表現したんです。

(※) 御神饌(ごしんせん) … 神様に献上するお食事として、神社や神棚にそなえる供物。


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10個の「サ」が特徴的なロゴは、昔から里中地区で使われていたものだそう


ーーお店で扱っているお菓子はサトナカだけなんですね。

そうそう。普通のお店だったらクッキー以外にもフィナンシェとかいろいろ置くでしょうけど、うちはサトナカしかつくってないんです。伊勢に来た人にこんなお土産があったらいいよねっていう発想からクッキーが生まれたので、お菓子屋さんがお土産としてクッキーをつくるのとは根本から違う気がしますね。

数字やデータには表れない間接的なリピーターの存在

ーー今はカフェを畳まれて、実店舗では物販だけを行っているそうですね。

うん。私が実家の田んぼを継ぐことになって……お米づくりって朝の作業が多いでしょ。カフェのほうもランチに仕込みを間に合わせるには朝から働かなきゃいけないけど、どうしてもお店には出られない。かといって誰かを雇って頼むほどの忙しさでもないし。その頃、ちょうどうちの近所にもカフェがポツポツ増えてきてたんで「これだけカフェがあるならうちはもういいか」と、私たちはサトナカと民泊の運営だけにシフトしました。


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ーーそうだったんですね。ネットショップを始めたのはいつ頃からですか?

サトナカができた2年目くらいからですね。当時『エル・ジャポン』のWebメディアでうちが紹介されて、電話やFAXで注文が殺到して。これはいかんと思ってホームページで注文を受け付けたんですが、それでも受注管理が大変になってしまってネットショップを立ち上げました。


ーー最初のネットショップからしばらくしてカラーミーショップにお引っ越しされていますが、移転のきっかけは何でしたか?

友達がネットショップをやっていたので、カラーミーさんは10年くらい前から知ってたんですよ。当時はなんとなくイマイチ……正直ダサいようなイメージがあったのね(笑)。でも「カラーミーショップ大賞」を見て、すごくオシャレでいい感じのショップがたくさんあることに驚いたのが最初のきっかけでした。


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その後、私がたまたま買い物したお店もみんなカラーミーを使ってたんですよね。noteを読んで気になっていた「わざわざ」さんも、以前うちのお店に来てくれた「SOU・SOU」さんもカラーミー。ちょうどその頃、うちで使っていたカートに使いづらさを感じていたので、カラーミーへの引っ越しを決めました。


ーー周囲から外堀を埋められている……。実際引っ越してみての使い勝手はいかがでしたか。

慣れるまではアタフタしましたけど、前に使ってたところよりはうんと使いやすいですね。うちはモールにも出店してるので、ショップの雰囲気はそれぞれ違いますが、以前より注文もたくさん入るようになりました。


ーーネットショップのお客さまは、新規の方とリピーターでどちらが多いですか?

新規の方が多いですね。40~50代の女性の方によく購入されています。

うちってギフト商品がメインなので、誰かにあげるために買う人が多いんです。もらった人は「こんなんあるんや、自分も何かの機会にここで買おう」って、また別の誰かにあげるために注文してくれることがあるんです。数字やデータに表れるものではないけれど、間接的なリピーターがすごく多いのがおもしろいですね。


ーー見た目もスッキリとおしゃれで、誰かにあげたくなるのがすごくわかります。
そして移転後の2020年、「カラーミーショップ大賞」でにっぽん文化奨励賞を受賞しましたね。受賞時の心境はいかがでしたか。

いろんな賞があっても、ノミネートの段階ではどんな賞がもらえるかわからないじゃないですか。同じ三重県で、以前から交流のあるmogcookさんが前年に地域賞を受賞してたので、うちも地域賞かな?って漠然と予想してました。この賞をいただけたのはすごく嬉しかったですね。


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「カラーミーショップ大賞」受賞の瞬間
(2020年はオンラインで開催)

ネットショップでも「感情のやりとり」を大切に

ーーコロナ禍での売上への影響について教えてください。

うちが主に卸しているお土産屋さんやホテルでは、「Go To」が盛んな時期にすごく売れました。Go Toの地域共通クーポンって、宿泊当日と翌日にしか使えないんですよ。だいたいみんな泊まったホテルの売店で使うから、その影響もあってすごく好調でした。今はGo Toが中止になっちゃったので、あまり伸びてませんけど。

うちはもともと実店舗・ネットショップ・卸の売上がだいたい同じくらいだったけど、コロナ禍ではネットショップの売上がめっちゃ伸びましたね。観光客が減ったぶん、今はネットが補ってくれてるかな。


ーー実店舗の営業はどうされていましたか?

一応開けてました。名古屋とか大阪の人はちょこちょこいらっしゃるし、せっかく来てくれたのに閉まっててもいかんなと思って。発送作業は変わらずお店でやってるしね。今の時期(取材は3月に実施)は卒業旅行シーズンかな? 若い人たちが多いです。


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ーー実店舗では、サトナカ以外にオリジナルTシャツなども展開していますね。ネットショップで販売していないのはなぜですか?

うーん……サトナカで手一杯だから(笑)。
いろいろやりたい気持ちもあるんだけど、なかなかそこまでは手が回らなくて。でも最近はサコッシュの販売を始めたので、今後はTシャツ、トートバッグも順次販売していく予定です。


ーー今後新しく商品をつくるとしたら何をつくりたいですか?

わら細工の製品を出したいなと思ってます。年末年始って玄関に「しめ縄」を飾るでしょ。伊勢ではあれを年中かけておく風習があるんですよね。今はしめ縄屋さんにつくっていただいたものを実店舗で売ってるんだけど、去年からは私ともう1人のスタッフがつくり方を教えてもらったので、ゆくゆくは自分たちでつくって売りたいなと思ってます。


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ーー最後に、ネットショップの今後の目標があれば教えてください。

……パッと思い浮かばないですね。ネット通販ってどんどん変化していくじゃないですか。時代についていくのだけで精一杯なところがあるし。

でも、ネットだからといって機械的なやりとりだとはあんまり私は思ってないんです。うちを見つけてくれて、直接手にとらずに商品を買ってくれるお客さんの覚悟には、こちらも応えなきゃって気持ちになるし。たとえ無言のやりとりでもお客さんとの間には感情のコミュニケーションがちゃんとある気がする。ネットでうちを知った人に「伊勢に行ってみたい」と思ってもらえたら嬉しいですね。


ーー今日はありがとうございました!


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元記事はこちらから(「よむよむカラーミー」に遷移します)



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よむよむカラーミー
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