ビアリーに学ぶ。インサイトを捉え、需要を生み出す思考術

ビアリーに学ぶ。インサイトを捉え、需要を生み出す思考術

最近、スーパーやコンビニでもよく見かける微アルコール飲料。中でも売れ行き好調なのが「アサヒ ビアリー」です。SNSなどで話題の「マーケティングトレース」の考案者、黒澤友貴さんが戦略インサイトについて紐解きます。
前回記事はこちら:電気無水調理鍋「ホットクック」のマーケティングトレース


家で過ごす時間が増え、我が家の冷蔵庫には「アサヒ ビアリー」が詰まっています。


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アサヒビールは、需要拡大に伴い生産ラインを拡大させているようです。

約5億円を設備投資し、アサヒビール吹田工場(大阪府吹田市)に脱アルコール製法の蒸留設備を新設します。本年9月下旬から着工し、12月から製造を開始する予定です。設備新設により、「アサヒ ビアリー」などの脱アルコール商品の製造能力は従来の2倍となります。


「アサヒ ビアリー」は、「微アルコール飲料」という新カテゴリーを社会に定着させたブランドと捉えることができます。少なくとも、我が家には定着しています。そのプロセスを読み解くことは「マーケティングの仕掛け方のヒント」につながるでしょう。
今回は、「新カテゴリー」を世の中に根付かせるための手法をテーマに、「アサヒ ビアリーの仕掛けを読み解いていきます。

アサヒ ビアリーは定性調査で
生活者の感情と向き合っている

アサヒの決算説明会のQ&Aにて、「アサヒ ビアリー」のブランドイメージに関する質問と回答が記載されています。

以下はアサヒのIRページからの引用です。

Q:アサヒは消費者を一括りにマーケティングしていて男性的なイメージがあるが、若年層や女性層を取り込むために、どのような施策をするのか。

A:「アサヒ ビアリー」のパッケージなどを含め、新たな顧客層に響くか響かないのか、消費者の生のタッチポイントを持つことを大事にしている。これまでは、調査し、年代別に分析したりして、仮説を立て進めてきたが、今はその前に消費者が手に取った時、飲んだ時にどう感じたのかという定性面を重視している。アサヒ ビアリーのパッケージについても、20代と30代に高い評価を受けており、今後も消費者の生の声を聞きながら第2段、第3弾を出す際に反映させていきたいと考えている。

消費者が手に取った瞬間にどのように感じるのかの「定性調査」をメインで行なっているとのこと。消費者の生の声を聞き、体験や感情と向き合うマーケティングが行われていることがわかります。


「アサヒ ビアリー」がどのように生活者の心を捉え、マーケティングの世界で言われる“インサイト”を捉えたのでしょうか。

戦略インサイトの
フレームワークを参考に

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新カテゴリーを創造する考え方のヒントを得るのに「戦略インサイト」の書籍がわかりやすく、フレームワークを参考にさせていただいています。

戦略インサイトの書籍で紹介されているフレームワークはこちら。
自分が整理しやすいようにメモを付け加えています。


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①顧客が心から求めていること
②企業・商品ブランドの独自性
を結びつけて、生活者の「これが欲しかった!」を生み出す

アサヒ ビアリーも、アルコールを無理して飲んでいた人、アルコールを飲む量を抑えたかったけどつい飲んでしまっていた人(自分みたいな人)にとって「これが欲しかった!」と言えるものになっていると考えています。

上記の戦略インサイトのフレームワークを元に整理してみました。

戦略インサイトのフレームワーク
でアサヒ ビアリーを整理

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前提となるターゲット
・日本の20~60代の人口約8千万人
・約4千万人が「酒を飲めない」、あるいは「飲めるけど飲まない」層

①ヒューマンインサイト
酔い過ぎずにリフレッシュしたい、気分を変えたい。

②カテゴリーインサイト(アルコール飲料)
飲みたいけど、体調を崩したくない。健康のことを考えるとアルコールを抑えたほうが良いけど、つい飲んでしまう。

③キーインサイト
ノンアルコールビールでは満足できなく、アルコール飲料では身体への負担が大きく、罪悪感も感じてしまう。

④プロポジション
シーンによってお酒を使い分けることができるスマートなお酒。
スマートドリンキングや、微アルなどの言葉を創り出し、第一想起獲得。

⑤製品特徴
ビールを醸造してから、アルコール分のみをできるだけ取り除く製法によって、100%ビール由来原料ならではの麦のうまみとコクを実現。

⑥ブランド資産
アサヒの「挑戦と革新」のコアバリュー。
アサヒが長年ビール市場で築き上げてきたブランドイメージ。

フレームワークで整理してみるとヒットの理由は、
①顧客のインサイトを捉えている
②アサヒが積み重ねてきたブランド資産や生産技術への先行投資
の2つが重なり合って生まれているのが理解できます。

マーケティングの仕事は、「顧客視点⇆企業視点」を往復して考える重要性を再確認できます。

ぜひ、ご自身が考える「新カテゴリーを生み出したブランド」を戦略インサイトのフレームワークを元に整理してみることオススメです!

新たな市場カテゴリー開発の
チェック視点

さらに、新たな市場カテゴリーを生み出すためには、3つのことが大切だと考えています。

この3つの視点でブランドが開発した顧客の認識や行動をチェックできると、「新しい市場カテゴリー開発のポイント」に対する理解が深まると思います。

①新たな状況が開発できているか?
②新たな意味が開発できているか?
③新たな習慣が開発できているか?

アサヒ ビアリーは、この3つを全て押さえているから、顧客の生活に根付きはじめていると考えられます。

■「アサヒ ビアリー」の場合
①新たな状況の開発
仕事をしながら、趣味の時間を過ごしながらなど、自分の好きなシーンに合わせて
②新たな意味の開発
罪悪感の少なさ
③新たな習慣の開発
毎日飲み続けることができる美味しさと、身体への負担のなさ

まとめ

マーケティング思考を磨くために取りたい3つの行動

①新しいカテゴリーを生み出してみる商品ブランドを使ってみる
②戦略インサイトのフレームワークを元に分解してみる
③3つの視点でブランドが開発した顧客の認識や行動をチェックしてみる

まずは、「アサヒ ビアリー」を飲みながらマーケティング思考を磨いてみてください!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!



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著者情報

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黒澤友貴
1988年生まれ。ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室 室長。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに6,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ#マーケティングトレースを運営。2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」を出版
note:https://note.mu/tomokikurosawa
Twitter:https://twitter.com/KurosawaTomoki
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