売上シェアNo.1の波里が広げる米粉の新しい価値

売上シェアNo.1の波里が広げる米粉の新しい価値

コロナ禍で起こったさまざまな食の変化や、健康意識の高まりによって、食業界にはどのような動きが求められているのでしょうか。本特集では「おいしさの現場から」と題して、食をもっと楽しくもっとおいしく、をテーマにものづくりをされている企業をご紹介していきます。今回は、売上シェアNo.1※の米粉メーカー「波里」にお話をうかがいました。

                   ※日本経済新聞社が全国のスーパー、コンビニエンスストアなどから収集した
                              2019年の販売実績データ(日経POS情報)をもとに集計

お話をうかがった方

株式会社波里
代表取締役社長
藤波 孝幸氏

株式会社波里
商品開発室 室長
黒田 敬子氏

6時間持続する揚げたて食感
米粉ならではの特性とは?

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ー 米粉を衣にすると、揚げたての食感が6時間持続するとお聞きしました。サクサク感を生み出す米粉の特性は、どんなところにあるのでしょうか?

藤波氏:米粉がサクサク感を維持できる大きな理由は、グルテンを含んでいないからなんです。家庭で揚げ物をするとき、カラッと揚げるために「衣にお酢を入れる」という裏技を耳にしたことがあるかもしれませんが、これはお酢でグルテンを不活性化させるためです。グルテンがない、または含有量が少ないと、サクサクとした食感を生み出すことができます。

一方で、グルテンが含まれていないと衣が薄くなり、料理のボリューム感が出にくいというデメリットもあります。ただ、最近では健康志向が高まり、衣がたくさん付いているよりも薄いほうがいい、ヘルシーというイメージも持っていただけるようになったので、米粉の特性が徐々に時代に合ってきたのかなと思います。

米粉の拡大は
コスト削減や食品ロス解決の一助にも 

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ー テイクアウトやデリバリーが増えた昨今、いかに作り立てのようにおいしく提供できるかは課題のひとつです。その点においても、米粉の使用には大きなメリットがありそうですね。

藤波氏:まさにその通りで、デリバリーやテイクアウトでは、店内飲食と違って作ってから食べるまでの時間差があることで、さまざまな課題が生じます。そうした中、食感が落ちないというのは大きなメリットではないかなと思います。

また、中食においては、スーパーの惣菜やコンビニのホットスナックの作り直しのオペレーションコスト、廃棄コストの削減も見込めます。米粉は衣が薄いため、調理の際、油の使用も少なくて済み、材料費の面でも経済的です。当然、食品ロス削減の一助にもなるのではないかと思っています。


ー 外食、中食での利用も広がっているのでしょうか?

藤波氏:現在は、パンや製菓、食品メーカーさんとの取引が多く、外食・中食がまだ少ないのが現状ですが、例えば、外食産業でも、米粉は餃子の皮であったり、回転寿司チェーンさんでは天ぷら粉にも使用されています。皮はパリっと、衣はサクっとなど、米粉の価値を感じていらっしゃるので、今後、他企業にも確実に広がっていくのではないかなと。当社としては、まさにこれから様々な食のジャンルにどんどん提案していきたいというところです。


ー 家庭の食卓におけるメリットとしては、どんなことがあるのでしょうか?

藤波氏:共働き世帯では、朝のうちに夕飯を準備していたり、作り置きをしたりと、必ずしも作り立てを食べられないという状況も多くなっています。また家族で食事の時間が異なるという家庭も増えていますよね。時間が経っても食感が変わらない、味が落ちないというのは、家庭においても十分活用していただけるのではないかと思います。

また最近は、健康志向の高まりによって、糖質オフや低糖質が主流となってきていますので、今後は「油を控える」という流れも広がってくるのではないかと思っています。そうなると、米粉への関心、ニーズも高まっていくのではと。

作るものにもよりますが、米粉は吸油率を50~70%程度カットできます。吸油率が低いということは、余計な脂の摂取を抑えられますし、使用する油の量そのものも少なくて済みます。その点でも経済的です。


ー 食感も良くてヘルシー、アレルギーがあっても食べられるとなれば、米粉の揚げ物はこれからのスタンダードになっていきそうですね。

藤波氏:そうなれば嬉しいですね。近々、当社では「米粉のパン粉」も発売予定です。普通のパン粉と比べて70%吸油カットできるものですが、見た目はほぼ変わりません。グルテンアレルギーの方にはもちろん、健康志向の方にも食べていただきたいと思っています。

米粉のメリットは多様
活用シーンもさまざま

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ー 天ぷらや揚げ物の衣以外で、米粉の活用シーンとしてはどのようなものがありますか?
 
藤波氏:米粉の特性を活かした提案内容次第で、お菓子やパンのメーカーさんなどにもご興味を持っていただけるのではないかと思っています。

米粉は小麦粉とミックスすることで、さまざまな価値を生みます。米粉ができた当初、我々米粉メーカーと国も含めて、米粉を推進しようと取り組んだのは、学校給食のパンでした。このときも米粉100%ではなく、小麦粉と合わせて作った米粉パンを入り口にしていたんです。米粉だけだとロウ化して固くなる、衣の付きが悪いといった問題も、いろいろなものとミックスすることで解消できますし、食感も良くなります。

実は本来、米粉はパンにはあまり向いておらず、たくさん入れると硬くなってしまうんです。作り立てならいいのですが、時間が経つと硬くなってしまうなど、いろいろな課題があります。ですから、粉砕方法を工夫したり、アミロースの含有量によって米の品種を選定したり、「もち粉」を入れてもちもち食感を出すようにするなど、より使いやすい米粉の配合や使い方の工夫にも取り組んできました。まさに今、米粉でおいしいパンを作るための研究にも取り組んでいるところなんです。

例えば、パン表面のサクサク感・カリッとした食感や、カレーパンの周りのパン粉、クッキーシューの表面などは、米粉の特性が非常に合うメニューではないかと思います。

成分を数値化することで
ファクトに基づく営業力の強化に

ー 今回、従来から把握されていた米粉のメリットを、あらためて客観的に測定・評価する”成分分析”をおこなって「6時間揚げ立てが持続する」という数値的な部分を出されました。新たな気づきや、感じたことがあれば教えてください。

黒田氏:これまでも、吸油率についてはアピールしてきましたが、食感について定量的に数値で分析したことはなかったので、実施して良かったと思っています。

現在の米粉のパッケージを作った当時、米粉はクッキーなどのお菓子作りに多く使われていました。ただ、それ以上に、天ぷらや揚げ物の仕上がりが圧倒的に違っていたんですよね。個人的に、米粉天ぷらのほうがカラっとしていて好きで、感覚的にサクっと感が長持ちすると感じていたので、そこを訴求したいと。「長時間」などあいまいな表現ではなく、「6時間」と具体的に数値化して示せるようになったのは、とても大きいことだと思っています。

また、当社にない測定器で経過観察をして、それらを数値化することができたので、今後は社内でも測定器を導入したり、新たな形でデータを取得していこうという動きになっています。


ー 今回のようなエビデンスの数値化以外にも、米粉の良さをお取引先へ伝えるために取り組まれていることなどありますか?

藤波氏:コロナ禍以降、実際に営業に出向けなくなった期間を、食全般の勉強の時間に充てています。一部の営業の者は、惣菜管理士(日本惣菜協会認定資格)の取得に向けて勉強しているところです。米粉に限らず、食に関する広い知識を身につけたうえで、より的確にお客様にご提案していきたいと考えています。

今後は、クックパッドと連携して取り組んでいる内容やデータを活用して、スーパーの製粉売り場だけではなく、惣菜コーナーで揚げ物に使っていただいたり、生鮮などにも陳列していただいたりと、大きなカテゴリーで展開を広げていけたらと考えています。


ー クックパッド・アライアンスとの取り組みについて、率直な感想を教えてください。

藤波氏:クックパッドとのアライアンスの取り組み自体が、営業にとっては有力な武器になっていると思います。

また、米粉をより多くの方に知って使っていただくという点において、当社だけでは及ばないところを力添えいただき、非常に有意義で心強いと感じています。

直接的な効果はまだこれからというところですが、米の需要拡大を含め、より多くの方に米粉を使ってもらうという目的には、確実に繋がっていくのではと実感していますね。

国内トップシェアにとどまらず
「世界一の米粉メーカー」に向けて挑戦

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ー 米粉の使用機会が増えて需要が高まっていくことは、あらゆる面で米の可能性を広げていくことに繋がっていくのではないでしょうか?

藤波氏:米の国内自給率UP、食品ロスの観点でも多いに価値があると思いますね。実際に、米農家の生産量は、令和3年の食用米の生産量は700万トンで、前年より20万トンほど減っています。単に「ご飯」として食べるだけでは、需要を維持するのに限界が来ているのだと思うんです。ですから、お米のみならず、水田がもたらす環境への影響を考えても、やはり我々が守っていくべきだと強く思っています。


ー トップシェアの波里さんとして、今後、米粉の市場をどのように広げて、どのようなことを目指していきたいですか?

藤波氏:社内では「自分たちは、世界一の米粉メーカーを目指す」と掲げています。

もともと日本の米は主食としての食べ方がメインです。精米の過程で割れるなどしてロスになってしまうものは、団子やお煎餅などに活用されていますが、数パーセント程度と多くありません。一方、海外で主流の米は長粒米で、形状的に精米段階でロスが多く出やすいんです。その分、ライスペーパーやビーフンなど、地域に根ざした米の加工品を作っているメーカーが世界にはたくさんあります。

そういった意味でお手本になる事例はたくさんあるので、そうしたものを参考にしつつ、もっと日本の米粉マーケットを盛り上げて、世界に通用するものを作っていきたいと思います。

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米粉シェアNo.1企業だからこそ伝えられる、米粉のメリット、価値、活かし方。米粉の特性を活かながら、他の食材と組み合わせたり、これまでにない販路を拡大し、形を変えて新たな可能性を広げていく取り組みは、時代の変化や世の中のニーズに合わせて共創していく、まさにこれからのビジネスそのものです。

主食として、常に日本の食卓を支えてきたお米も、今後は主食以外のかたちでも定着し、さらには日本のみならず世界へとおいしさが伝わっていくことでしょう。



writing support:Miyuki Yajima



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