ウェルビーイングなバレンタインへ。専門家に聞く2022年予測

ウェルビーイングなバレンタインへ。専門家に聞く2022年予測

コロナ禍で生活者のバレンタイン動向にも大きな変化が起こっています。生活者の暮らしの多様化やオンライン化が進む中、チョコレート業界でも同様の動きが進んでいます。2022年のバレンタイン市場はどのように変化するのでしょうか?チョコレートジャーナリスト®・ショコラコーディネーター®の市川歩美氏にうかがいました。

お話をうかがった方

チョコレートジャーナリスト®
ショコラコーディネーター®
市川歩美 氏

バレンタインはチョコレートを存分に楽しむ
”チョコレートシーズン”へ進化

ー サロン・デュ・ショコラ※ などチョコレートの祭典が百貨店で定着し、チョコレートのハイブランド化が進んでいる印象ですが、市川様はどのように感じられていますか。

市川氏(以下、市川):チョコレートブティックが日本に上陸しはじめたのは、2000年代のことです。2001年にピエール・マルコリーニが銀座にオープン。当時、高価格帯チョコレートの登場は、非常にセンセーショナルな出来事でした。さらに2003年にはパリ発、チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」が新宿伊勢丹に上陸します。百貨店の催事は年々規模が拡大、チョコレートブティックも浸透し、この20年でチョコレート市場は大きく成長しました。

※サロン・デュ・ショコラは、1995年にフランス・パリで誕生した世界最大級のチョコレートの祭典。一流ショコラティエやショコラブランド、最高級のチョコレートが集結。日本では2003年1月に、伊勢丹新宿店の催事からスタートし、2022年1月開催で20回目を迎える。


ー チョコレートのイベントやブティックが市民権を得たことで、ひと粒のチョコレートの価値が徐々に高まっていったのでしょうか。

市川:そうですね。価値が浸透してきたということもありますし、SNSによるコミュニケーションの変化も大きいと言えます。テクノロジーの進化によって、チョコレートの情報がより広く、早く、美しい写真とともに伝わるようになりました。また日本古来の「贈りもの文化」も後押しとなっています。自分には高価だと感じるものでも、大切な人への贈りものであれば、話題性の高いラグジュアリーなチョコレートを選択するという人も増えました。こうした背景から、「チョコレート=高級」という認識が浸透したのでしょう。


ー チョコレートの価値の高まりとともに、バレンタイン関連の催事が各地域の百貨店で強化されてきたのでしょうか。

市川:日本のバレンタインイベントを初めて上層階の催事場でおこなった百貨店は、JR名古屋高島屋の「アムール・デュ・ショコラ」です。北海道から福岡まで各地で開催される三越・伊勢丹グループの「サロン・デュ・ショコラ」、梅田阪急の「バレンタインチョコレート博覧会」など、チョコレートファンやマニアの方の心も掴むラインナップで、バレンタイン催事は盛り上がっています。
日本ではバレンタイン=チョコレートシーズン化していると言えるでしょう。

ショコラティエが技巧を凝らしてつくるチョコレートはラグジュアリー感があり、眺めているだけで魅了されるビジュアルです。見た目の華やかさがSNSともマッチして、裾野が広がっているのです。

一方、欧米ではカラフルなビジュアルから、ナチュラル志向へとシフトしています。背景には色素使用への規制や、より安全でナチュラルなものを求める生活者の心理があります。
押し花にした天然のエディブルフラワーをボンボンショコラに載せるなど、ナチュラルに彩りを添える工夫が見られます。


ー ナチュラル志向へのシフトは、原料となるカカオ生産でのSDGsを意識した流れもありますね。

市川:ええ。「Bean to Bar(ビーントゥバー)」という、カカオ豆の選定から一貫して自社で製造をおこなうブランドも増えています。また大手チョコレートブランドも、仕入れ先の製菓用チョコレートメーカーのSDGsへの貢献や、カカオ豆の生産過程など、トレーサビリティを意識して仕入れる動きが見られます。

コロナで変化する
コミュニケーションとともに
パーソナライズ化するチョコレート市場

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ー コロナ禍によって、バレンタインやチョコレート市場はどのような変化がありましたか。

市川:まず挙げられるのは、オンライン販売の加速化です。2021年のバレンタインは、催事の縮小や海外視察のNGなど、動向が掴めない中で各ブランドが模索。配送面など課題があったようですが、2022年は前年度の傾向と対策を踏まえたさらなる進化が予想されます。


ー 生活者の動向はいかがでしょうか。

市川:生活者の動向としては、職場のサンクスチョコの減少があげられます。リモートワークや外出自粛などの影響と、2021年のバレンタインが日曜だったことも一因です。

高校生など若い世代では、男女関係なく贈り合う「友チョコ」が一般化しています。コロナ以前から浸透していた「自分チョコ」も、コロナ疲れやストレスを癒すご褒美アイテムとして引き続き人気です。また、父親をはじめ離れた家族に「ありがとう」の気持ちを伝える用途も。チョコレートの華やかさや楽しさは、人の心を明るくさせます。性別や関係性の垣根を超えて「大切な人に送って絆を深める」コミュニケーションツールになっているのです。


ー 男性のチョコレート愛好家も増えている印象です。

市川:男性のチョコレート愛好家はもともと多いんですよ。Minimalなど新興のビーントゥバーチョコレートブランドは、シックでシンプルなインテリアや店構え、商品パッケージで、多くの男性ファンを獲得しています。またマスマーケットのチョコレートは、コロナ禍で大袋商品の需要が上がっています。子どもの頃に食べていたロングセラーチョコレートが、懐かしさとともに心の癒しになったり、昭和レトロブームなども追い風になっているようです。

おいしさ、華やかさに留まらない
ウェルビーイングなバレンタインへ

ー 生活者の嗜好や行動も多様化していますが、2021年から2022年のチョコレートトレンドに特徴は見られますか。

市川:ピスタチオは緑色の鮮やかさや、珍しさも相まって人気ですよね。あとは、イタリア発祥のジャンドゥーヤも人気が高まっています。ヘーゼルナッツなどのペーストとチョコレートを混ぜたもので、ナッツとチョコレートは相性が良いのです。

もう一つの潮流としては、乳成分を抑えたチョコレートです。動物性原料を使用しないことで、カカオの味わいをダイレクトに感じられるチョコレートが登場している点も注目です。
大手ブランドも、いち原料に留まらないカカオの魅力を打ち出すところ、パッケージなどでエンターテイメント性を打ち出すところなど、多様な方向へ広がっている印象です。


ー チョコレートの世界でも多様化の波が広がっているのですね。最後に、市川様が注目するチョコレートを教えてください。

市川:サステナブルな活動や社会貢献に繋がるチョコレートに注目しています。
カカオの生産地は赤道に近く、野生動物が生息しているような場所が多いんですね。そうした野生動物の生態を脅かすことなく生産されたカカオ豆が原料となっていたり、適正価格でカカオ生産者と取引され、児童労働がされていないことが保証されているチョコレート。パッケージも土に還る素材であったり。

食べる瞬間の幸せだけじゃなく、カカオ生産者の幸せや環境保護、より良い未来に繋がる、「ウェルビーイングなチョコレート」が、今後いっそう広がりを見せると思います。


▶︎Chocolate Journalist Ayumi Official Website
▶︎The Chocolate Journal



writing support:Sayaka Takahashi



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