外食はもっと面白くなる。鍵は外食の価値再定義と顧客理解

外食はもっと面白くなる。鍵は外食の価値再定義と顧客理解

FoodClipでは新春特集として、食品業界を担うキーマンの思考を連載形式でたどります。今回は、カスタムサラダレストランCRISP SALAD WORKSの展開を通じて、テクノロジーで顧客体験を最大化し非連続な成長と高い収益率を目指す、CRISPの代表取締役の宮野氏にインタビュー。直近の取り組みをはじめとした、これからの外食産業について語っていただきました。

お話をうかがった方

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「CRISP SALAD WORKS クリスプ・サラダワークス」
株式会社CRISP
代表取締役
宮野 浩史 氏

顧客体験をよくするには、理解から
じゃないと、何も始まらない

ーーユーザー登録を必須にしたキャッシュレス決済などを積極的に進めていますね。その理由を教えてください。

宮野氏(以下、宮野):サラダ購入の際に2014年の創業当時から常に「どうしたら、お客さまをもっと”驚かせる”ことができるか、より良い体験をご提供できるか」を追求してきました。
CRISPでは、2017年から完全キャッシュレス店舗を開店し、2020年からはほぼ全店がキャッシュレス店舗です。モバイルオーダーやキャッシュレス化を進めてきた理由も「お客さまのことをより深く理解することで、もっと良い体験をご提供できる」という目的が一番です。どんなに素晴らしい接客技術をもち、おいしい商品をご用意しても、お客さまの好みなどの情報が少ないと良いサービスは提供できないですよね。
私たちが2020年以降に実施してきたデジタル施策は全て、驚きを生み出すための手段なのです。

2021年は顧客データ収集に注力
今後のサービスすべての土台作りに

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ーー2021年以降のデジタル施策の特徴的な取り組みを教えてください。

宮野:2021年は新しい取り組みとして「CRISP BASE」を開始しました。これは、サラダ好きを5人集めると、配送料無料で決まった時間にオフィスへ「CRISP SALAD WORKS」のサラダが届く、バーチャル店舗が作れるサービスです。


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宮野:また、「CRISP STATION」といって、好きなサラダを選んだら冷蔵庫から手にとっていただき、食べたあとにパッケージのQRコードからワンタップで決済する、レジ会計がない店舗も始め、新スタイルのショッピング体験を提供しています。

内容もスピード感も目指すところには、まだまだ到達していませんが、今後の土台作りができたと感じています。CRISPのサービスは店頭であっても、電話番号などの個人情報の入力か、ユーザー登録をしないと買い物ができないシステムで、お客さまの8割のデータを取得しています。外食業界では珍しいといいますか、違和感があるのかもしれませんが、ネットショッピングの世界では、当たり前のように情報を入力されていますよね。
2021年はこの顧客データを集めることに注力したので、今後はこれを活用し、もっとお客さまに良いサービスを提供すべく、一層サービスの改善などを強化していきたいと思っています。

新しいレストランの考え方
「コネクティッド・レストラン」とは

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ーーCRISPさんは、DX化を強化し新しい顧客体験を作っていく「コネクティッド・レストラン」の構想を掲げていますが、その着想について教えてください。

宮野:私は、レストランの価値は「商品力」「接客力」「業態力」にあると思っています。「コネクティッド・レストラン」は、そこにテクノロジーやデザイン、ロボティクスの力をかけあわせて価値を最大化し、非連続な成長と高い収益率を目指すビジネスモデルです。

ビジネスモデルの着想は、「他の業界では当たり前のことが飲食ではできていない」という疑問からでした。企業が大きくなればなるほど、顧客へのバリューが高まって価格が上がっていいはずなのに、外食業界はその真逆。どんどん価格が安くなるのが不思議だと感じています。企業が大きくなるのは、お客様のニーズがあるからこそ。そうであれば、売り上げも増えて、優秀な人が雇えて、もっとクリエイティブで価値を高める活動もでき、最終的には原価も下がって収益率も高まっていくのが、本来あるべきビジネスの形だと思うんです。外食業界では、大きな企業ほど新しいバリューを生み出すより、効率性を求めたりコスト下げたりすることに注力してしまいがち。「顧客体験」に重要な従業員評価制度など、付加価値になる部分の改善に取り組んでいないという課題があります。多くの場合、キードライバーになるはずの人や能力に投資をしていないのが現状です。ここをひっくり返していきたいんです。

将来的には、ロボットがサラダをつくるようになり、サラダを作る作業に大きな価値はなくなるかもしれません。それに伴い、ライフタイムバリューを上げるようなコミュニケーションには価値が出てくるでしょう。週2回のアルバイトの方であっても、接客能力により顧客満足度や売り上げに大きく貢献していれば、時給が上がるのは当然のこと。企業側もそこにきちんとペイしていくべきですよね。売上を上げるために、地道に連続的成長を積み重ねていくしかないという時代ではありません。立場や肩書関係なく、能力が高くて顧客からも求められる人材であれば、大きく収入が跳ね上がることは、他の業界では当たり前になってきています。外食業界でも取り入れられると考えています。外食の価値や良さを、しっかりとお金を払って受け取れる仕組みを作っていきたいですね。


ーーCRISPから見て、外食業界の課題は何だと思いますか?

宮野:お伝えの通り、お客さまの期待を超えるためには、まずはお客さま知らなくてはなりません。そのためにはデータの取得・活用が欠かせませんが、他の業界と比べるとまだギャップがあると感じます。コロナ禍によって、このデータ活用の差が顕在化してきたようにも思います。

たくさんの店舗を持ち、客数が億を超える外食企業でも、顧客がなぜ買ってくれるのか、お客さまのことを実は何もわかっていなくて、先が見えない暗闇の中で日々経営している企業は少なくないと思います。データは灯りとして足下を照らしてくれて、その先にどんな障壁があるか、またはどんなチャンスがあるのかを示してくれることがあります。データはとても大切なんですよね。その重要性を本当に理解しないまま、動かしている企業も多いのかなと思います。

もう一つの課題としては、事業者側も生活者側も「食べ物だけが商品で、その対価を払っている」と思っているところかもしれません。結論から言えば、それは少し違います。おもてなし、ブランド、内装、業態などの「顧客体験」の対価としてお金を払っているんです。

例えば、生ビールは中身が同じでも安いチェーン店では300円以下、ちょっとおしゃれなレストランでは1200円という価格設定はよくあります。生活者自身、中身が同じだとわかっているのにそれでも頼むのは、ビールそのもの以外の価値「顧客体験」なんですよね。同じビールでも価格が違う、要するに外食業界は食べ物の売り買いするビジネスではないです。この認識のミスマッチがあると、業界そのものがずっとコスト意識になってしまう。そこをお互いに理解する必要がありますね。この2つの課題はDXを推進し、新しい顧客体験を作っていく中で、解決しうる課題だと感じています。

2022年は同じ店舗数で1.5倍の売上
より良い世の中なれば、外食産業はもっと成長する

ーー2022年、CRISPはどのようなことを強化される予定でしょうか。

宮野:2022年は、拡張事業の展開を進めます。本来、レストランの店舗機能は、製造、販売、接客、喫食があります。これを全て兼ね備えた店舗を作ろうとすれば、人材確保も必要でコストもかかり、店舗数を増やせば増やすほど投資も莫大になります。そのため、投資利益率をいかに効率的に上げていくかが課題です。

その施策のひとつとして、オンラインからの流入をどれだけ取り込めるかに挑戦します。すでに顧客の過半数が、店頭に来る前やデリバリーサービスを利用してアプリ上や画面上でサラダを注文しています。そのため、今後は店頭経由4割、デジタル経由6割での流入として、同じ店舗数で1.5倍の売上を目指します。

また、「サラダ」そのものが大きな可能性を秘めていて、我々は「健康と時間を売っている企業」だと考えています。世界がいい方向へ進んで、SFのように誰も働かなくていい未来がやってきたら、みんなが欲しがるのは健康と時間です。そうなれば、健康を意識してサラダを食べる人が増えて、当社が儲かるようになる。企業ですから、儲けを考えるのは当然のことです。上っ面なことではなく世界が良くなれば、当社のビジネスはもっと儲かっていくので、どんどん良くしたい。そう思っています。

外食業界の課題をDXと新しい視点で

「お話ししたことと現状は、まだまだかけ離れていますが……」と笑いながら話す宮野氏。外食の価値をイチから編み直す姿勢に、混沌を極める外食業界の希望を感じました。創業以来、「レストラン体験を再定義する」を軸として、外食業界に新しい視点を与え続けるCRISPから目が離せません。



writing support:Miyuki Yajima



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