
企業・業界動向
手作りの概念を拡大、ユザワヤが強化するおうち時間の提案
手芸用品・生地・ホビー材料の大型専門店「ユザワヤ」が、“忙しい人でも簡単に、美味しく!”をコンセプトにしたクックパッド監修のレトルト食品アレンジ時短レシピを展開し、食の分野にも注力しています。その背景を、ユザワヤ商事株式会社のご担当者にうかがいました。
お話をうかがった方
ユザワヤ商事株式会社
専務取締役 畑中 宏元 氏
広報部 飯高 真理子 氏
クックパッド株式会社
マーケティングコンテンツデザイン部
企画ディレクター 和田 美佐子 氏
手芸・ホビーだけでなく
食を含めたライフスタイル全般へ
ー 2020年〜2021年のコロナ禍は、多くの企業がさまざまな計画に見直しをかけたなか、御社は積極的な出店をされていました。どのような考えで進めてこられたのでしょうか?
飯高氏:2020年〜2021年は、特に百貨店への出店を積極的におこなってきました。その理由として、そもそも百貨店と当社の顧客が年齢層やライフスタイルといった点で親和性が高いということ以外に、大きく2つ挙げられます。
一つは生活様式が変わっておうち時間が増え、手作り需要が高まったこと。二つ目は、百貨店からコロナ禍で影響を受けた業種の退店などの背景によって、出店できる店舗の選択肢が増えたことです。これをある意味でチャンスと捉えて、出店を進めてまいりました。
ー また、これまで「手芸用品の専門店」というイメージの強かった御社ですが、食の分野にも注力されていますよね。その背景や理由を教えてください。
飯高氏:以前から、単に手芸商材だけでなく、より広い視点でお客様に求められる新しい商材を開発していこうという動きがありました。その取り組みのひとつとして、2020年から女性社員を集めた新たなプロジェクトチームを発足させました。きっかけはコロナと直接関係ないのですが、タイミングとしてはちょうど同じ頃になります。
当社のメイン顧客は、女性です。そのニーズをより的確に把握するために、子育て中のママ、調理師免許取得者など、さまざまな年代の女性バイヤーを中心としたチームを作り、「ユザワヤにこんなものがあったら嬉しい!助かる!」というものや、お客様が「本当に欲しい!」と思うものについて、意見を出し合ってきたんです。
そこで、「手作り」の概念をより広く捉え、食を含めたライフスタイル全般を取り扱っていこうと。おうち時間を快適に整えるという視点で、調理道具や掃除用品など、新しい売場提案をしてきました。なかでも、食や料理は当社のお客様がとても興味を持っているテーマです。さらに、コロナ禍で世の中的にも食に対する関心が高まっていたので、食には特に注力していこうということになりました。
商品と合わせてレシピを提供
届けたいのは「作る」という価値
ー 今回、クックパッドとタイアップしていこうと決められたポイントなども教えていただけますか?
畑中氏:手芸専門店である当社が、突然、大々的に食品を展開し始めても、お客様としては「なぜ?」となってしまいます。だからこそ「ユザワヤで食品を買う」理由付けのストーリーが必要だと考えました。単に商品を陳列するだけでなく、オリジナルの作り方を一緒に提示する、つまり「作る」という価値そのものを提案することなのではないかと。
そこで、やはりレシピといえばユーザー認知度の高いクックパッドということで、お声掛けしたのが始まりです。食や料理に関する多様なデータやノウハウを持っているクックパッドとの取り組みなら、お客様にさらに興味を持ってもらえるのでは?というのが一番の理由でした。
ー 今回のレトルト食品に特化したレシピという視点はとても新しく、肝になったのではないかと思います。
畑中氏:そうですね。食材や調味料を1から100まで揃えていくのはリスクもあり、管理も難しくなります。そのため、賞味期限も長く、初心者でも手に取りやすいレトルト食品にアレンジを加えてみるのはどうかとなりました。さらに、女性向けに健康と美容を訴求ポイントとして打ち出したというのも特徴です。
ー 実際に、お客様や社内の反応などはいかがでしたか?
飯高氏:商品(レトルト食品)と一緒にレシピを持ち帰っていただけるようにした点が、お客様にとても好評です。現在はコロナ禍の影響で、店頭での試食会など実際に味を見ていただくことができない状況ですが、今後標準化していけば、まだ伸びしろがあると思っていますね。少しずつですが、出店施設から催事のお話も出てきています。
また今後もおうちで過ごす趣味時間を充たすものとして、日本全国のカップラーメンや、世界の輸入菓子など、スーパーなどには置いていないものを企画として展開していきたいとも考えています。
クックパッドによるレシピ監修で
「レトルト食品 × 健康訴求」
ー クックパッドとしては、これまで食品メーカー様との取り組みが多かったですが、今回ユザワヤ様との施策で特に意識したことなどありますか?
和田氏:ユザワヤ様は多くの実店鋪をお持ちなので、今回のこの取り組みを今後どう展開され活用されていくかのを意識しながらレシピ開発をおこないました。
メインはレトルト食品ですが、来店されるお客様はテーブルリネンなども手作りする方も多いのではないかと思い、布地や手芸用品で工夫して、食べるシーンを提案できるようにスタイリングにもこだわりました。また、ユザワヤさんは調理器具やキッチン小物も販売していらっしゃるので、それらを使用して店頭やWEBでクロス展開できるようにご提案しました。
レシピについては、家族との生活の中でもっと気軽に取り入れられるように、テーマを「気張らない健康習慣」とし、1日の中でのシーンに合わせて提案をすることにしました。そのうえで、手芸といった趣味の時間を楽しんでいるお客様の生活スタイルにも合わせ、朝、昼、夜、夜食、をそれぞれ1人で楽しむシーン、家族で楽しむシーンとで別けてご提案しました。
これまでクックパットでは、「夜食」というジャンルでレシピを絞り込んだこともあまりなかったのですが、家族が寝静まってから手芸をするなど、夜に独りで趣味時間を楽しんでいるお客様も多いというお話をうかがい、そうしたお客様に寄り添った「夜食」をあらためて企画に盛り込むなど、当社としても新たな提案ができたかなと思っています。
店舗でのリアルな体験を価値に
オムニチャネル戦略へ
ー 2022年、さらには中長期的に、今後どういったことに注力される予定ですか?
飯高氏:今回の取り組みに続いて、クックパッドとは現在新たな企画を開始しました。魅力があるのに市場にあまり認知されていない良質な食材・商品を普及させ毎日の料理を楽しくするという「クックパッド・アライアンス」の姿勢に共感して始動したものです。クックパッド・アライアンスが提携する全国各地の中小食関連企業が作る「クックパッドが選んだ全国のイイもの」を蒲田店限定で展開しています。
また今後、ユザワヤではリアルな実店舗とECなどオンラインの両方をつなぐ、オムニチャネルの戦略を進めていきたいと考えています。店舗においては、お客様が求めているものが「モノ」から「コト」へと大きく変化していますので、単に商品を販売するだけでなく、店内でワークショップなどを開催し、参加して体験してもらうことで「手作り」の価値を見出してもらえるようにしていきたいですね。
そこは、ユザワヤが運営するカルチャースクール「ユザワヤ芸術学院」を基盤に、ユザワヤだからこその付加価値を提供することで、新たなお客様を増やしていきたいと思っています。
writing support:Miyuki Yajima
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