日本製食品を中国で販路開拓、拡大するためのポイントとは

日本製食品を中国で販路開拓、拡大するためのポイントとは

中国における輸入食品の規模は、2009年からの10年間で年率17.7%成長。近い将来、11兆円を超えると予想されています。現在では世界の80%の国と地域の食品が中国に集まっており、輸入食品は中国国民から大きな支持を得ています。中でも日本製の食品は、中国の生活者からのニーズが高い輸入品です。本記事では、日本製の食品を巨大な中国市場へ販売する際の販路開拓事情に迫ります。

中国で輸入食品を販売するには

中国で食品を販売するには、商材に合った「販売チャネル」を選択し、商品を卸す「代理店」についての理解が不可欠です。それぞれの持つ役割と特徴、注意すべきポイントをまとめてご紹介します。


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販売チャネルは大カテゴリが2つと
派生カテゴリが1つ

販売チャネルは、まず大きなカテゴリとして「オフラインチャネル」と「オンラインチャネル」の2つに分けられます。オフラインチャネルは実店舗を指し、オンラインチャネルとはECモールを指します。さらに、オンラインチャネルから派生したカテゴリが、ライブコマースやSNS、コミュニティと連携したECなどの新しい販売チャネルです。


オフラインチャネル

オフラインチャネルの利点は、生活者が実物を手に取りながら購入を検討してもらえることです。中国は国土が広く、地域によって食文化や好みも異なります。販売したい商品の特性を考慮し、どの地域で販売するかなど、適したチャネルを選択する必要があります。

■オフラインチャネルの一例
・高級スーパー(輸入品を中心に取扱うスーパーがある。例:Ole')
・大手総合スーパーチェーン(Wal-Mart、Carrefourなど)
・コンビニエンスストア(セブン-イレブン、その他リージョナルコンビニチェーンなど)
・ニューリテールチャネル(実店舗がありながら、店舗独自のオンラインショッピングアプリがある)


オンラインチャネル

オンラインチャネルの利点は、自宅や職場など場所を選ばず気軽に購入出来る点です。中国ではオンラインチャネルが気軽に活用されており、多くの生活者はオフラインとオンラインを併用して買い物をします。

■オンラインチャネルの一例
・Tmall (アリババグループが運営する中国最大手のEC)
・京东-Jingdong (Tmallに次ぐ規模を持つ)
・拼多多-Pingduoduo (共同購入システムがある)
・その他専門分野を持つECプラットフォーム


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ライブコマース等のオンラインの新しい販売方法

ライブコマースとは、ライブ配信で商品を紹介する配信者と視聴者による双方向の販売手法です。一般人からブランドの店員、タレントなど誰でも販売可能。特に有名なタレントや芸能人によるライブコマースの影響力は莫大です。KOL※と呼ばれるタレントや、ソーシャルメディアのオススメ商品が起用されることが多くなっています。

※KOLとは「Key Opinion Leader(キーオピオニオンリーダー)」の略。特に中国の生活者の購買意志決定の際に強い影響力を持つ、なんらかの専門性を持ったインフルエンサーを指す。

■ライブコマースが行われるチャネルの一例
・抖音-Douyin (中国のTiktok)
・快手(Kuaishou) (抖音のライバル的存在)
・点淘(Diantao) (Taobaoのライブ動画機能が独立したもの)

それぞれのチャネルが持つ商品採用基準

上記でご紹介した3つのチャネルは、それぞれ採用する商品や基準が異なります。例えばオフラインチャネルは、店舗の消費転換率を高めるために、知名度の高い商品を求めています。代理店や流通業者から推薦された商品に対して、2〜3ヵ月のテストマーケティングをおこない、取り扱うかを判断します。自ら展示会や見本市へ赴き、採用するパターンも多いようです。

一方でオンラインチャネルは、プラットフォームや代理店個人の考えによって判断されます。ライブコマースではKOLを通じて販売するため、KOL自身のポジショニングやファンの消費嗜好の要素を踏まえ、紹介に適した商品が採用されます。

中国の販路開拓で欠かせない存在
「販売代理店」とは

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オフ・オンラインに限らず、ほとんどの販売チャネルは、安定的な商品の供給と品質やサービスを確保するために、現地の流通業者や代理店との取引を通じてメーカーの商品を取り扱います。そのため代理店は、中国で販路を開拓するために欠かせない存在となっているのです。中国では地域ごとに販売チャネルや商品に差異があるため、メーカーは複数の代理店を介する必要があります。


代理店が設ける販売要件

代理店はそれぞれ独自の販売条件を持っています。知名度の低い商品に対しては、チャネル入場料やプロモーション料などを加味し、より高い販売要件を求めます。場合によってはチャネル側の要請により、割引の度合いやプロモーションするタイミングなどを強制的に変更されるケースもあります。また国土が広いことから、賞味期限に関しての条件も厳しく精査しています。これは商品が生活者へ届くまでに時間を要することや、販売期間を長く設定するためです。


代理店は信頼できる協業パートナーを

従来の商品を代理店へ卸し販売を一任する方法には、さまざまなリスクがともないます。例えば、賞味期限が近づいた商品を勝手にセール価格で販売してしまうケース。多数の代理店が同一ブランド・商品を扱うことによる、オフ・オンラインとチャネル間の価格の乱れ。地域間での横流しの発生などのリスクがあります。

代理店に販売を一任することは、日本のメーカーにとって中国へ進出する手段のひとつかもしれません。一方で実際はブランドイメージの低下や、正規販売チャネルに影響を及ぼす可能性があり、利益を大きく損なうリスクをともないます。信頼できる代理店・協業パートナーを探し、管理体制を整える事が重要です。


代理店と契約する前にチェックしたい事

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■チェック項目1:連携するオフライン販売チャネルでの販売に適しているか
販売したい商品は、販売地域やチャネルの特徴に適しているかどうかを確認する。

■チェック項目2:その商材はwinwinな関係を築けるかどうか
仕入れからチャネルへの商品卸や入場料、プロモーション費を差し引きし、代理店にとって利益のある商材かどうか。また、ブランドや商材を取り扱うことで、新しい市場への参入に繋がる、企業イメージがアップするなど、無形な価値があるかどうか。winwinな関係を築けるかどうか。

■チェック項目3:代理店の販売管理が行われているかどうか
前述のようなリスクを防ぐため、メーカー側はこまめな情報共有などで注意する。

■チェック項目4:自社で代理店のコントロールが出来るかどうか
自社で代理店をコントロールするための体制を整える。現地でマーケティングチームを設立する、信頼できる協業パートナーを見つけるなどの対策方法も。

これからの中国進出は
信頼できるパートナーとともに
生活者に向き合い、ブランドを育てる時代に

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中国市場はかつての爆買いブームのイメージが強いため、「made in Japanの商品は価値が高く、日本製というだけでまだまだ売れる」と考える日本企業が多い傾向にあります。しかし、中国製商品の品質改善などにともない、ただ中国に日本製の商品を持っていくだけでは思うように売れなくなってきている現実や、代理店任せにすることで発生するリスクについては、あまり知られていません。

信頼できる代理店を見つけ関係性を築き、自社または協業パートナーによる管理体制を作ることは必須です。チャイナリスクも高まりを見せる昨今では、従来の卸売りモデルから、代理店や流通業者とともにブランドを育て、生活者に向き合うモデルへと転換していく時代が到来したと言えるでしょう。



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著者情報

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(株)ポリスター
日中双方のスタッフによる、日本企業様の中国進出のサポートをおこなっています。中国進出の戦略立案からリスク管理、消費者向けのブランディングやプロモーション、販路開拓などのサービスを提供しています。
https://www.polystar.yokohama/