前年比約1.7倍で急拡大の楽天×バレンタイン。購買のECシフトの実態とは

前年比約1.7倍で急拡大の楽天×バレンタイン。購買のECシフトの実態とは

2020年以降のコロナ禍での在宅勤務や百貨店休業の影響により、シーズナルイベントやギフトの購買はECへシフト。ダウントレンドになるイベントがある中、バレンタインは友チョコから、自分用のご褒美需要へ変化したこともあり、盛況です。楽天市場のバレンタイン特集は右肩上がりで成長を続けており、2021年の流通額は昨年比約1.7倍に伸長。楽天グループの西本氏と村田氏にインタビューし、市場の変化や今後のECが担う役割をうかがいました。

お話をうかがった方

楽天グループ株式会社
コマースカンパニー ECコンサルティング部フード&ドリンク事業課
シニアマネージャー 西本 佑介 氏
バイスマネージャー 村田 和紀 氏

シニア層や百貨店の購買層も新規ユーザーに
高単価商品も人気

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ーー2022年のバレンタイン特集の売り上げも好調だとうかがいました。コロナ禍以降の全体と、シーズナルイベントの動向をお聞かせください。

楽天の2021年第3四半期のショッピングEC流通総額は、昨年同期比で+8.7%と堅調に拡大しています。楽天市場では、生活用品から家具・家電、お取り寄せグルメ、ギフトなど様々なジャンルの商品をECで購入するユーザーが増加。食品カテゴリにおいては、その売上の中心を作っているのがシーズナル商品です。現在はおせち、クリスマス、バレンタインで特集する商品が非常に好調です。
2021年のバレンタイン期の流通額は昨年比で約1.7倍伸長とコロナ一巡後もその勢いは衰えていません。これはステイホーム期間でECを利用した新規ユーザーが、きちんと定着したのがひとつの要因だと捉えています。楽天市場も高いユーザーロイヤリティを維持し、2021年第2四半期にご利用いただいたユーザーの約75%が、2021年第3四半期にも商品をご購入いただきました。


ーー購買行動が変化し、楽天市場を利用しはじめた新規ユーザーは、どのような層なのでしょうか?

幅広い層において新規ユーザーが定着していますが、シニア層もその一つです。シニア顧客からのお問い合わせや、通販の要望が増えたことから、楽天市場と新しい取り組みをはじめた企業も多いです。
また、これまで百貨店で買われていた方がシフトしているケースも少なくありません。シーズナル商品を例に挙げると、2021年末に販売したおせちは、1〜2万円の価格帯の商品がメインでありながら、3万円、5万円を超えるような商品が例年以上に売れ、客単価が非常に高くなっています。

これまで、シーズナル商品をご購入される方は、ダイヤモンド会員やゴールド会員などヘビーユーザーをはじめとする既存の会員がメインでしたが、2020年以降はこうした新規ユーザーも増え、以降マイナスになることなく継続的にご利用いただいている状況です。


ーー2020年以降のバレンタインは、どのような購買行動の変化がありましたか?

2020年4月ごろに巣ごもり需要が本格的になってきて、百貨店で目当ての商品が購入できないことから、ブランド名を指名検索するユーザーが増えました。

2022年のバレンタインでは、メインで売れる1,000〜3,000円台のチョコレートやケーキをはじめ、5,000円以上の高単価商品がこれまで以上に売れています。例年は1月の早い時期から、多くの人に配りやすい1,000円以下の商品需要があったのですが、今年は高級チョコレートブランドの需要が高まっています。今までは店頭で購入されていた方もECを利用する機会が増え、またステイホームの影響で我慢して過ごしていた反動によるご褒美チョコなど、自分用にご購入されるユーザーが圧倒的に多いと分析しています。


ーーチョコレート専門家へ話を聞いた際も、バレンタインはもはや誰かにチョコレートを贈るのではなく、チョコレートの祭典のシーズンに変化しているとおっしゃっていました。

参考記事:ウェルビーイングなバレンタインへ。専門家に聞く2022年予測

需要の高いブランドのラインナップも拡大
新たな売り場の展開も

ーーお客様はもちろんですが、出店者も増えている状況ですか?

2022年になってからも、多くのメーカー、小売店から「出店したい」というお声をいただいています。また、指名検索が多かったブランドなど、私どもからアプローチしてご出店いただくケースも増えています。

そうした背景もあり、特に今年のバレンタイン特集ページは、商品拡充を意識して制作しました。楽天市場に未出店で消費者から需要の高いブランドの商品を、楽天が代理で販売する「楽天Premium Food Select」という新たな売り場の展開もスタート。商品需要が高く出店意欲があっても、配送機能や、ユーザーの問い合わせ窓口がない企業も少なくありません。そうした場合に、私どもが間に入ることによって、ユーザーのお声に応えた商品をお届けすることができるようになりました。

百貨店などで扱っている商品などは、楽天でカバーしきれてなかったラインナップです。今回のような取り組みを引き続き強化して、いろんな商品を増やしていきたいなと思っております。


ーーバレンタインは2月14日という明確な日程があるイベントで、1月の中旬から需要が高まる傾向にあると思っています。これは変わりませんか?

大きな傾向は変わりません。ただ、直前期の流通の伸び代は、まだまだあると考えています。
また、13日までのアクセス数と比べれば落ちてしまいますが、バレンタイン当日を過ぎても20日ごろまでは、それなりにアクセスも購入数もあります。バレンタイン後でもユーザーに商品を届けられる店舗においては、バレンタイン後の需要もとり逃しが少なくなると考えています。

出店メーカーとの提携で不安を払拭
安心できるECモールへ

ーーコロナ禍以降の需要をしっかり捉えられて、出店店舗へのサポートや、物流の強化を図られているんですね。シーズナルを含め、全体として今後どういったことに注力されますか?

バレンタイン施策と共通しているのですが、まずは商品の拡充です。
楽天の食品カテゴリには、「Shopping is Entertainment!」を体現している、例えば、地方のご自身でレストランや農家を営みながら出店しているような出店店舗がたくさんいらっしゃいます。楽天市場はこれまで、そうした方々に大いに支えられ、逆に言えば、いい商品であればどんな店舗や商品にも販売ポテンシャルがあり、そうした商品にユーザーが出合えることを強みとしてきました。

その一方で、直近でユーザーからよくいただくお声として、「明日使う水や米を買いたい」ですとか「今まで百貨店で購入していた焼き菓子やチョコレートを贈りたい」といったものが挙げられます。これは、今まで拡充しご好評いただいていた地方の名産品や人気店のメニューといったラインナップを超えています。


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ユーザーの中では百貨店などオフラインでの小売店舗とECが同レベルの選択肢になっているという新たな傾向が出てきています。そういった新たなニーズに対応するために、店舗、ユーザー双方にとって、百貨店で買うのと同じような品質、安心感を提供できる場所を作って、食品の拡充を図らねばならないと日々痛感しています。その具体的な形となったのが、先にお話した「楽天Premium Food Select」です。


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ーー出店店舗も購入者も安心できる環境づくりは欠かせないですね。

そうですね。また、「安心・安全・適正な流通環境の構築へ向けた取り組み」ということで、ユーザーの皆さまが安心して買い物していただける環境を確保するために、食品に関してはメーカーさんと提携して、転売商品が流通するのを防ぐ施策をおこなっています。こうした地道な取り組みを各社と手を取り合って進めていくことで、皆さまに誰でも安心して買い物ができる場所をご提供して参ります。

バレンタインで需要を捉え、原点である配送や安全安心の土台を固めていく楽天。さらなる商品拡充で、今後もっとワクワクする買い物体験を提供し、シーズナルイベントを盛り上げていくことでしょう。



writing support:Akira Fukui



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