【レポ】松屋フーズの新業態「ステーキ屋松」。低価格・高回転の秘訣は肉の焼き加減にあり?

【レポ】松屋フーズの新業態「ステーキ屋松」。低価格・高回転の秘訣は肉の焼き加減にあり?

「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」シリーズ第8弾。2021年11月にオープンした「ステーキ屋松 国分寺店」に行ってきました。リーズナブルに旨い肉を食べられる魅力と、松屋フーズが新たにステーキ業界に進出する理由を考察します。

前回記事:【行った】組み合わせ自在のひとりしゃぶしゃぶ松五郎新店へ

全国1,192店を展開する松屋フーズ
新たにステーキ業界へ

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新型コロナウィルスの蔓延も落ち着きを見せたかと思いきや、オミクロンの襲来で引き続き苦戦を強いられている外食業界。暗いニュースばかりではありません。我ら肉好きにとって強い味方となる新しいブランドが着々と店舗数を増やしています。

松屋と聞けば、牛めし屋だ、いやカレー屋だと想起する人が多いと思いますが、意外と知られていないのが「松屋」以外の業態。とんかつ専門の「松のや」や回転寿司の「すし末」、さらには「マイカリー食堂」、「松軒中華食堂」など多岐に渡るジャンルのお店を運営しています。

そんな松屋フードが新たに展開しているのが「ステーキ屋 松」です。11月にオープンした国分寺店が4店舗目ですが、複数店展開するのは収益性やオペレーションの再現性、立地の勝ちパターンが見えてきた証とも受け止められます。

ちなみに松屋フーズの2021年3月期の売上高は944億円。グループで1,192店舗を運営しています。日本のファストフードを牽引する企業であるのは誰もが認めるところだと思います。

JR中央線沿いを中心に4店舗目
少人数来店を狙い最適化した店内

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国分寺駅から徒歩3分。他には三鷹、吉祥寺、下北沢にお店があり、松屋フーズの本社がある三鷹駅近郊を中心に異なる立地で出店を試みているのかなと想像します。

名前の知らない新しい飲食店に入るにはちょっと勇気がいりますが、ステーキ屋松は、店内に入らずとも写真のようにメニューを確認することができて、お腹の好き具合やふところ状況に合わせて検討できるのが親切です。


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店内は一人ずつパーテーションで区切られたカウンター席と、いくつかのテーブル席があり、一人または二人での来店を狙って最適化されたテーブル配置です。前回の記事でご紹介した「ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎」同様に、個食や今のご時世を反映したパターンです。

ライス、サラダバー、スープ食べ放題
およそ1千円で満腹になれる良心価格

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平日の13時ころに入店して、客席にスタッフは2名。席へのご案内、サービスの説明、料理の提供、サラダバーコーナーの補充整頓が主な業務で、注文やお会計はデジタル化されており、席ごとに設けられたテーブルオーダー端末で料理を選びます。

入口に一か所の券売機だと次のお客さまを待たせながら選ぶのはなかなかプレッシャーだし、座りながらじっくり選べるのは個人的にとても好きです。お肉の種類だけでなく、グラムもここで選択できます。

今日はステーキの定番メニューであるロースステーキをチョイス。驚くべきはお値段です。200gで1,000円、300gでも1,200円で、しかもお代わり自由のライス、スープ、サラダバーが付いています。他のステーキチェーンと比べても、かなりリーズナブルですよね。


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サラダバーのバリエーションはこんな具合です。ご案内プレートを見るに、レタス、キャベル、ポテトサラダ、コーン、パプリカ、海藻サラダなどなど全部で12種類。これらが好きなだけ何度でもいただけるわけです。


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ダイエットや身体作りで炭水化物を減らしたい人も肉と野菜でしっかり満腹に。好きなものを好きなだけ、自由に選べる仕組みはイマドキですよね。ドレッシングもニンジン、フレンチ、オニオンの3種類が用意されていました。

低価格と高回転を作る要因
肉の焼き加減と溶岩石にヒントが

さて、サラダをいただこうかなと思ったところで、メインのステーキが提供されました。オーダーから5分も経っておらず、提供までがとてもスピーディ。客席数が少なく、駅前立地の飲食店は回転率も重要な指標。昼時と夕食時に一気集中する業態だからこそ、できるだけ早く提供することが短時間に回転させることがポイントにもなります。

なぜそんな短時間でステーキを提供できるのか。その秘密は「焼き加減を選ばないこと」と「提供するプレート」に隠されていました。


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あれこれ語る前に、まずはロースステーキを見ていただきましょう。300gをオーダーして、2つの塊に分かれて提供されます。ここにもオペレーションがブレない秘密がもう一つありそうです。ロースステーキの量目は、100g、200g、300g、400gの4種類から選べるのですが、全てを1枚肉で用意するとカット段階で4種類の準備が必要です。種類が多いほどカットスタンバイの手間が増えたり、日ごとの販売数によって消費期限を踏まえた先入れ先出しの難易度が高まるし、保管スペースも必要になります。

300gを注文して出てきた状態を見ての推測ですが、おそらくは200gと100gの2種類に分けてカットしているのだと思います。その2種類さえあれば、全ての量目に組み合わせで対応できますし、焼き上げる時間も短縮できて良いこと尽くし。


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提供スピードが早い理由は「焼き加減を選ばないこと」と「提供するプレート」の2つにあると先ほど書きましたが、焼き加減は全てレアで提供されます。一般的にはレア、ミディアム、ウェルダン、さらにはミディアムレアなどが選べるお店が多いですが、焼くオペレーションは人の習熟度、グリドルの温度によって差が出てしまい安定しません。

そこで、一律レアで提供し、溶岩石で出来た熱々のプレートに乗せることで、お客さま自身が焼き加減を好きなように調整しながら食べることを実現したと考えます。お店のオペレーション負荷、難易度も下げ、お客さまも自分好みで焼けるという両者ハッピーパターン。スタッフの習熟度が影響しないのは、従業員の人件費を抑え、結果的に低価格で料理を提供することに繋がっているのではないでしょうか。

丸や四角のペレット(焼き石)を付属してくれるお店も多いですが、プレート全体が焼き石なのでお肉も冷めにくく、300g食べ終わるまでしっかり熱々でいてくれました。

ソースも選び放題
お客様メリットと生産性どちらも

ところで、みなさんはステーキをどうやって食べるのが好きですか?定番の各種ソースや、そのまま、塩だけ、いやいやわさび醤油だろ…とさまざまだと思いますが、ご安心ください。カウンターの目の前に各種揃っています。


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ステーキガストやいきなりステーキも同様ですが、近年は注文時に味付けを選ぶのではなく、ひと通り自由に使えるスタイルのお店が増えている印象です。1種類を選んでもらう方がソースの食材ロスは少なそうですが、頼まれたものをスタッフが用意する手間、具体的にいうと、提供時にステーキ、ライス、ソースの3つを運ぶ必要が出てしまいます。つまり、席まで最低2往復が必要になってしまうのです。
席に備え付けにすることで、注文時に選ぶ時間や、従業員の運搬作業時間を削減。お客さまメリットを作りながら、オペレーションをスマートにする工夫をされていると感じます。


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ひと通り試しましたが、おすすめはブラックペッパー&塩とオリジナルソース、そしてわさび醤油です。

肝心のステーキは、もちろんおいしい!火を通しすぎないからこそ、柔らかくいただけて、ジュージューしながら熱々なのがポイントです。熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。飲食店では、温度は最高の調味料とよく言われますが、溶岩石のプレートが最後まで熱さを保ってくれます。


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お会計はセルフレジ。現金以外にもクレジットカードや各種電子マネー、QR決済が使えました。飲食店のコストで大きなウェイトを占める人件費をしっかりコントロールして、その分、価格を抑えてお客さまに価値提供をされているなぁとありがたく思います。

注文から支払いまで滞在時間は30分ほど。業務中の1時間の休憩時間でも、待ち時間さえ少なければ余裕をもって食べられるので、都心のオフィス街でのランチ需要も期待できそうなモデルです。

チェーン店の強みを活かした価値の提供とは

チェーン店の強みを活かしたステーキ専門店。実際に訪問してみて、他業種展開する企業の強さを改めて感じました。
食事の個食化、コロナ影響による業態リスク、昨今はポテト不足問題を見聞きすることも増えましたが、食材入荷のリスク。それらを低減させる手段として、1社で様々な業種を運営することがあります。現在のようにアルコール提供業態が不振に陥っても、他の業態への転換もスピーディにおこなえるのも、リスク回避の一手です。

また人口減少期の今、ひとつの屋号だけで来店回数を増やすのには限度があります。毎日牛めしを食べてもらうのではなく、牛めし、カレー、ステーキなど複数の専門店があれば、グループ内での来店回数を増やすことができます。

その中でスケールメリットを活かし、仕入れが低単価を実現できるのは、大きな強みです。松屋の牛めしはショートプレートを使用しているようですが、他にもカレーやとんかつ業態を持っており、会社全体として肉を多く仕入れることでステーキ用部位も大量に安く買い付けることができているのではないかと想像します。

チェーン店の新規業種には、飲食店で活かせるたくさんのヒントがありました。高騰する人件費、輸送費、食材原価に打ち勝つべく、可能な限り工夫をこらすと同時に。お客さまにとってのメリットも実現することが大切です。企業として利益を求めながらも、お客さまを常に主語で考えるからこそ、双方にとってのハッピーが作れると改めて感じました。


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ステーキ屋 松
▶︎https://www.matsuyafoods.co.jp/shop/steak_matsu/

ステーキ屋 松 国分寺店
東京都国分寺市南町3-18-17
営業時間:11時から22時30分(ラストオーダー22:00)

※商品や価格、店舗情報は2022年1月時点の情報です。



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著者情報

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よしだけいすけ
2020年5月よりカラビナハート株式会社に入社。10社ほどの企業SNSアカウントのコンサル・運用支援を行っている。公式アカウントのフォロワー増や投稿のノウハウだけではなく、目的に合わせた目標設計やビジネス貢献の可視化、再現性ある仕組み作り、SNS担当者のトレーニングが得意領域。2020年4月までは株式会社すかいらーくHDのマーケティング本部にてコンテンツコミュニケーションチームのリーダー。7つの公式Twitterアカウントを立ち上げて合計210万フォロワーに。広告宣伝のほかアプリ、メルマガ、公式サイト、ファン施策、ポイントプログラムなどを担当した。店舗勤務含めて15年間在籍。
Twitter:https://twitter.com/ruiji_31
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