高難易度レシピが反響。学びを売る「シェフレピ」飛躍のワケとは

高難易度レシピが反響。学びを売る「シェフレピ」飛躍のワケとは

この数年で、生活者が食や料理に求めるものが急速に変化する中、レシピサイト、動画メディアの普及により、レシピや料理教室のあり方も進化しています。今回はスタディ型ミールキット「シェフレピ」を運営するefooのCEO山本篤氏にインタビュー。2月にフルリニューアルした経緯やユーザーを通して感じる、「生活者が料理に求めているもの」についてうかがいました。

お話をうかがった方

efoo株式会社 CEO
山本 篤 氏


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シェフレピとは

2021年4月にリリースされた「シェフレピ」は、スタディ型ミールキット。注文すると計量済みの食材が届き、レストランのシェフが解説するレシピ動画で料理が学べます。当初は1回完結のキットもありましたが、2022年1月にリニューアル。現在は全5回で学ぶレッスンコースのみを展開し、より学びに特化したサービスへと進化しました。
▶︎https://chefrepi.com/

食のクリエーターである料理人と
生活者をつなぐサービス


ーー家事負担を減らす目的のミールキットも多い中で、シェフレピはじっくり料理を学ぶ、いうなれば真逆のサービスですよね。サービスが生まれた経緯を教えてください。

山本氏(以下、山本):実は事業立ち上げ当初は、小規模飲食店が簡単に原価管理を効率化するサービスを検討していました。ただ、リーン検証を経てサービスを再検討する必要が出てきたんです。シェフレピの構想はその時に生まれたものです。


ーーtoBの事業から大きな方向転換ですね。

山本:私自身、フレンチや和食の料理人として飲食店で務めた経験があり、飲食業界の一助になる事業を作りたかったんです。事業の軸を見つめ直す中で、飲食店に付随するビジネスはもちろんですが、一番サポートしたいのは料理人というポジションの方々だと気がつきました。サービス内容は大きく変わりましたが、僕の中での芯は変わっていないんです。

もともと飲食業の多くが労働集約型であることに課題を感じていて、そこにインパクトを与えたいと思っていました。また、レシピ提供とそれを使う生活者の「社会的な動線」が美しくないなと思ったのもきっかけです。

料理人はクリエーターでありながら、生み出した料理とレシピの価値が本人に還元されていないことがほとんどです。動画サイトなどでレシピを公開しても、利益が出るのは生活者が材料を買ったスーパー。生活者から料理人へは、情報の対価が支払われません。動線を整備すれば、料理人とともにお客さまに向き合った良いサービスが共創できると考えました。事前のリサーチでもニーズが見込め、ベータ版も好評だったので、リリースに踏み出しました。

伝えたいのは料理を学ぶ楽しさと達成感
シェフの想いも感じてほしい


ーー高難易度のレシピを提供することにしたのは、なぜでしょう?

山本:料理人に教えてもらうレシピの価値を考えた時に、時短レシピではないな、と思いました。もちろん、料理人が考える時短レシピもおいしいはずですが。料理人にしかできないことを考え、生活者の課題解決を目的としたものではなく、「シェフの経験や知識を通して。食への理解を深める学び」の提供を軸に据えました。今回のリニューアルはその軸をより明確にした形です。


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ーーリニューアルでは全5回のコースのみ。コース内容もWebサイトも、より学びにフォーカスした仕上がりになっていますね。

山本:点ではなく線で、食の学びを体感してほしいという考えからです。従来の単発メニューは高難易度でありながらおいしく作れる、すごくいいレシピなんです。入口としての完成度も高い一方で、ビジュアルがキャッチーな料理はユーザーがおいしそうかどうかの基準で選ぶことが多く、「おいしかった」と満足して終わってしまう一面もありました。それも間違いではなく、むしろ喜ばしいことなのですが、ユーザー側では次のステップアップに向けたレシピが選びにくく、私たち自身もレシピごとの難易度の調整が難しいという課題がありました。

数回のコースはニーズも感じていましたし、より学びのステップがわかりやすく、料理の知識を体系立てて深められます。今回のリニューアルでは、与えられたレシピを作るコツに加えて、ラム肉の扱い方や、パスタの作り方など、全5回を通して1つの技術が身につくように作っています。


ーー学びのテーマやメニューが、一般向けにしてはかなり専門的ですよね。

山本:ほぼ、料理人の修行です。知識が身につくだけでなく、途中から食材の使い方や調理方法から、なんとなく“そのシェフらしさ”もわかってくると思います。料理への解像度が上がったら、外食した時も一皿から読み取れる情報量も変わってきます。
実際に、ベータ版でフレンチのコースをリリースした際は、「4回目を超えたあたりで理解度が上がった」というお声もいただきました。やはり、体感すると食や食べることの面白さが段違いに上がります。

外食は、提供する側と食べる側のリテラシーの乖離が激しいことが往々にしてあります。食べる側の理解が必要だという食の関係者もいます。副作用的にですが、そうした課題への一手にもなっています。


ーーSNSでは料理家さんのレビューなども見かけますが、メインユーザーはどういった方が多いですか?

山本:20〜30代の料理好きな女性のユーザーが多いです。料理家や、プロのシェフもいらっしゃいますが、食を職業にしている方が特別に多いわけではありません。全くの初心者で、「シェフレピをきっかけに料理にチャレンジした」というお声もありました。


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ーー初心者の1歩目からシェフレピですか。料理好きがディープに学ぶイメージがあったので意外でした。

山本:どのレシピも絶対失敗して欲しくないと思っていて、かなり作り込んでいるので、初心者でも無理なく作れるはずです。「やってみたら意外と美味しくできた」という達成感を得て、ハマっていくリピーターも多いです。

材料もこちらで計量してお送りしますし、動画でも調理のコツやレシピに出てくる調理器具が自宅にない場合のフォローなどにも気を配っています。チャットでもサポートしていて、なるべく迅速に返信できるようにしています。鴨肉の焼き具合を画像を送ってもらいながら、アドバイスしたこともあります。


ーーチャットサポートで、そこまで対応してくれるんですか。初心者、経験者問わず、その成功体験は料理を好きになるのにすごく重要だと思います。リニューアル以前から、ユーザーに合わせて調整されていた部分もあるのでしょうか。

山本:かなりマイナーチェンジを重ねていると思います。例えば、レシピの作り方。

基本は料理人の好きなものを提案してもらっていますが、最近は比較的工程がシンプルなものをお願いしています。工程が複雑だと手順を追うことに必死になって、その料理人ならではの技術や美学みたいな部分が伝わりにくくなってしまいます。そこで脳を50%稼働させたら作れるくらいのレシピにして、動画を観ながら作っても学びを吸収できるように変更しました。

動画撮影時も、編集者がどんどん突っ込んだ質問をして、料理人にたっぷり話してもらうようにしています。逆に話しすぎて、30分で納めるはずの動画が90分くらいになることも。その分、料理人が伝えたいことも逃さない動画になっています。


ーーライブ配信はおこなわないのかな?と思っていたのですが、そうした学びを逃さず伝えるという点も関係しているのでしょうか。

山本:今後サービスを拡大する中で、ライブ配信をおこなうこともあるかもしれませんが、一時停止したり巻き戻したりしながら料理を作る上では、必ずしもライブ配信である必要はないと思っています。また、親子やカップルのコミュニケーションツールとして楽しむユーザーもいるので、会話をしながらじっくり作れるという利点もあります。実際にパートナーと交代で作っているというリピーターもいて、環境や時間にしばられずに利用できるのがうまく機能していると感じます。
多忙な料理人に時間を取ってもらう都合上、リアルタイムで配信するのが難しいという事情もありますが。

語れる料理人は強い
シェフレピは情報発信の場に

ーーこれからは、どんなコースが登場するのでしょうか。

山本:直近では包丁の研ぎ方のコースがはじまります。現在は専門的な知識に特化したコースがメインですが、今後は時短レシピなども含め、グラデーションのある世界観でレシピと学びを提供していきます。何度もレシピを作りたい方のために、食材だけのキット販売も検討中です。

将来的には、レストランで働いている料理人が手軽に料理教室を開催できて、インセンティブが得られる、その中で食品企業なども情報発信できる仕組みにしていきたいです。自由に自分の哲学を発信できる環境があると、料理人や飲食店を取り巻く環境も変わると思います。


ーー料理人の哲学ですか。シェフレピを運用しリニューアルされる中で、食の変化をどう捉えられているかもお聞きしたいと思っていました。

山本:食を提供する立場の話をすると、やはり語れる料理人って強いなと思います。その人らしさがにじみ出ていると、ついつい好きになってしまいます。個人がキュレーション能力をもってメディアとして情報発信をおこなえると、可能性の広がりが違います。

ユーザー側は情報過多の時代で指名制が進んでいるとも感じます。人生であと何回ご飯が食べられるか考えた時に、実はそんなに回数は多くない。でも、ひとつの料理を作る時、検索するだけで膨大な選択肢がある。「この人のレシピだから作ろうと思える何か」が強く求められているのです。
その中でシェフレピでは、美学をもつ素晴らしい料理人のレシピを選んでもらえるよう、尽力していきたいと考えています。



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