テクノロジーで外食はどう進化する?最先端トレンドを一挙に紹介[SKS Japan Focus Session イベントレポート前編]

テクノロジーで外食はどう進化する?最先端トレンドを一挙に紹介[SKS Japan Focus Session イベントレポート前編]

2022年2月16日、一般社団法人日本能率協会(JMA)主催の国際ホテル・レストランショー内で「テクノロジーを活用した外食産業の体験価値向上」をテーマにしたイベント「SKS Japan Focus Session」が開催されました。全9つのセッションでは、食品業界を牽引する大手企業やスタートアップ、総勢20名が登壇。各セッションの概要・要点を前編と後編にわけてご紹介します。

1.外食ビジネスの未来。
レストランは立地からの解放によって、進化し続ける

[スピーカー]
●株式会社シグマクシス 常務執行役員/SKS Japan主催者 田中 宏隆

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オープニングは、Smart Kitchen Summit Japan(SKS Japan)の主催者であり「フードテック革命」著者である田中宏隆氏が登場。「6つの視点からみる、外食ビジネスの未来」についてスライドを展開しました。


6つの視点からみる、外食ビジネスの未来

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田中:外食ビジネスの未来については、大きく6つの視点で整理できます。

1.レストラン機能のアンバンドル化(分解)

パンデミックで外食ビジネスが立ち行かなくなったことから、レンストランの機能は分離分解され、これをサポートする新しいデジタルプラットフォームが誕生しました。シェフをサポートする技術の発達や、冷凍技術の向上などにより、立地などの物理的な縛りからの解放が始まってきています。

2.レストラン機能で繋ぐプラットフォーム

フードデリバリーやゴーストキッチンなどのプレイヤーが出現。また、いわゆるSaaS的にレストランビジネスを管理・推進できるテクノロジーが加速しました。

3.価値創造としてのフードロボティクス

バックエンドにおけるロボティクスも増加傾向にあります。さらに近年は、ユーザーとのコミュニケーションや体験価値を組み込んだスマートベンディングマシンや、フロントエンドのフードロボットも出現。「スケール化可能なレストラン」という新産業も誕生しつつあります。

4.Web3.0がもたらすコミュニティ軸のレストランの姿

Web3.0、DineerDAOといわれる、ユーザーとの新しい関係性もはじまっています。「このプロジェクトに参加してくれたら、NFT※を発行しましょう」といった取り組みで、すでにファンが生まれつつあります。これはメタバースの文脈とも通じるところがあり、2022年に加速度的に認知・拡張されうる領域です。
※NFTとは、Non-Fungible Token(ノン ファンジブル トークン)の略で、非代替性トークンのこと。ブロックチェーン上に記録される一意で代替不可能なデータ単位。

5.レストランの再定義

端的に言うと、「リアル店舗をもつレストランやホテルの価値は何か?」を考え直すということです。リアルが生み出す、共感や共鳴について考えを深め、整理していくタイミングです。共食や縁食の考え方、そこで生じる価値は非常に参考になるでしょう。Future Food Institute 創業者のサラ・ロベルシは、「レストランは、あらゆる教育の場になりうる」と表現しています。

6.シェフ・調理人の新たな活躍の在り方

世界では「コネクテッドシェフ」と呼ばれる、店舗だけにとどまらないシェフが誕生し、食品ブランドの新規事業を担うなど、活躍の場を広げています。また、シェフのスキルをOSとして、ロボットにインストールするといった動きも。シェフや調理人は、食品産業においてより重要な役割をもつ職種だと、再定義されるべきです。こうしたさまざまな可能性を議論していきたいと考えています。

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2.フードロボットが外食産業にもたらすものとは?
 〜グローバル・トレンド・シェアリング


[スピーカー]
●OttOmate創設者:Chris Albrecht

[モデレーター ]
●株式会社シグマクシス 常務執行役員/SKS Japan主催者:田中 宏隆
●株式会社シグマクシスリサーチ/インサイト スペシャリスト:岡田 亜希子

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1つ目のセッションは、OttOmate(オートメイト・ドット・ニュース)の創設者兼編集者である、Chris Albrecht(クリス・アルブレヒト氏)による、最新のロボティクス動向レポートがおこなわれました。クリス氏は、2017年からアメリカを中心に各国のフードロボティクスの台頭を取材。フードロボット・オートメーションの分野における権威です。
レストランテックの最新動向や、フードロボットの現在地について探り、価値や成長の背景、将来の展望が網羅されたプレゼンテーションは、業界の概要について理解が深まる内容でした。
プレゼンテーションのアジェンダは下記の通り。

1.何がフードロボットやフードサービスの導入の後押ししているのか
2.世界(特に北米や韓国)ではどのようなエリアでロボットが活躍しているのか
3.現在ロボットの活躍の場が拡大している分野について
4.ロボット関連のスタートアップ企業を対象としたエクイティ・クラウドファンディングやビジネスモデルについて


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田中氏、岡田氏を交えたセッションでは、日本×フードロボティクスの未来についての議論が白熱。レストランやホテルでのフードロボティクス導入や食品ロボットのイノベーションによってシェフの役割はどう変わるのか?など、具体的なケースを交えながらの展開となりました。

>>本セッションの詳細記事は4月頃掲載予定。ぜひご期待ください。

3.外食&ホスピタリティ産業の未来像


[スピーカー]
●株式会社トレタ 代表取締役 CEO:中村 仁
●ロイヤルホールディングス株式会社 代表取締役会長:菊地 唯夫

[モデレーター ]
●株式会社シグマクシス 常務執行役員/SKS Japan主催者:田中 宏隆

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コロナ禍によって、レストランにおける体験や存在の位置づけは、大きく変化。北米ではコロナ禍がはじまった2020年から、レストランOSやスマートベンディングマシーンなど、新しいタイプのレストランが登場。日本のレストラン業界も変革期を迎えています。

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「外食&ホスピタリティ産業の未来像」と題したセッションでは、ロイヤルホールディングす会長菊地氏と、トレタCEO中村氏とともに、事業での取り組みなど具体例を交えながら、「これからのレストランのあり方」について、スライドとトークセッションが展開されました。

▶︎ロイヤルホールディングス https://www.royal-holdings.co.jp/
▶︎トレタ https://toreta.in/jp/

>>本セッションの詳細記事は順次公開中
■ロイヤルホールディングス菊地会長が考える「外食×DX」ブレイクスルー5つの視点
https://foodclip.cookpad.com/13449/

 

4.新たな食体験の実現~ Food Singularity
「ビジョン起点の社会実装と食の場の可能性とは?」

[スピーカー]
●OPEN MEALS クリエイティブディレクター:榊 良祐

[モデレーター ]
●株式会社シグマクシス リサーチ/インサイト スペシャリスト:岡田 亜希子


「ヴィジョン起点で社会実装と食の場を作る可能性」をテーマに展開された、OPEN MEALS代表・榊氏と岡田氏のセッション。「ヴィジョンを起点に社会実装を考える背景には”予測できない時代”がある」と榊氏は語ります。

榊:人口増加や新興国の生活レベル向上により、食の市場規模は2030年に1,360兆円に迫るとされています。食に求められる価値も変わり続け、食産業としては地球環境への対応も求められるでしょう。予測不可能な未来をサヴァイブするため、経験やバイアスを無視した飛躍的発想で未来のヴィジョンを描くことこそ、これから主流となっていくべきでしょう」

バックキャストで描く未来のレストラン

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榊:では、レストランの未来とは一体どんなものでしょう。

レストランに「自動運転・水素エネルギー・地方移住者の増加」など、想定できる社会トレンドを掛け合わせてみます。そうすると、これまでは考えられなかった場所にお店が生まれたり、ドローンやキッチンカーなど「店舗が地方にやってくる」ということが可能になるのです。

例えば、
・ドローンで漁船から新鮮なネタを直送。天ぷらに最適なロケーションで営業できる
・家では面倒な料理「天ぷら」など、家で再現できない料理の価値が高まる
といったことです。

セッション後半では、2022年4月以降にローンチ予定の新プロジェクト「Museum of Eats(MoE)」についても発表されました。MoEは、産業の垣根を超えたプロフェッショナルが集まり、未来のビジョン妄想、共創、実装、発信していく拠点で、「22世紀の幸福な食文化」に繋がる“確実な兆しの創出”が目的。今後の取り組みにも注目です。

▶︎Future Vision Studio:https://futurevision.studio

>>本セッションの詳細記事は4月頃掲載予定

5.ホスピタリティ×パーソナライゼーション
「多様な食の選択肢とこれからの提供価値とは?」

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[スピーカー]
●株式会社CAN EAT 代表取締役CEO 田ヶ原 絵里
●株式会社ホーン 代表取締役:松本 直樹
●sustainalife 代表取締役:谷 圭祐

[モデレーター ]
●株式会社シグマクシス プリンシパル 福世 明子

生活者にモノが行き渡る時代を経て、個々人がライフスタイルを追究する現代では、食へのニーズも多種多様になっています。「食のパーソナライズ化」が加速する今、事業はどのような価値を提供できるのでしょう。
株式会社シグマクシス福世氏をモデレーターとし、アレルギー対応をIT化するCAN EATの田ヶ原氏、ひとりごはんアプリを手がけるホーンの松本氏、そして「自炊のような外食」を目指し、顧客とお店をつなげるサービスを展開するsustainalife 谷氏によるセッションです。


実感する、外食×パーソナライズ化の商機

13477_image08.jpgアレルギー対応をIT化するCAN EATの田ヶ原氏によると、アレルギー対応に関する市場は5,270億円規模(※)。「アレルギー対応ができた飲食店に対しては、リピート意向が高いこともわかっています」と語ります。

※1,100万世帯(※1)×13.9%(※2)×28,117円(※3)×12ヶ月
 ※1:厚生労働省2019年国民生活基礎調査より児童のいる世帯
 ※2:食物アレルギーの世帯率(ハウス食品グループ調査より)
 ※3:食物アレルギー家庭の月の未消費食費(NPO法人アレルギーっこパパの会調査より)

松本氏によると、「ソロ飯」の市場規模は約8兆円(矢野経済研究所)。また2040年に離婚率は約40%まで増加し、ソロ社会は急速に進行しつつあると言います。「ソロ飯」マーケットにおける、飲食店のメリットは「可処分時間と可処分所得」。

松本:ソロ層は、好きなことに時間もお金も投資でき、ファンになったら強いリピーターになり得ます。もちろん、ソロ専用の業態を展開してほしいということではなく、団体や複数連れに限らず、単身で来店するお客さまへの対応を少し工夫するだけで、お店のファンが作りやす作りやすくなると思います。

谷氏: 昔から子どもの将来の夢として描かれるような、“目の前のお客さまが食べて喜んでくれる料理”(=まるで馴染みのお客さまの好みに合わせているかのよう)の提供は、まさにパーソナライゼーションの原点だったと思います。
これまで飲食店は、フランチャイズ化やセントラルキッチン化が進み、個別最適化がオペレーション上難しくなっていました。これからはテクノロジーによって、古き良き飲食店の良さと先進的な飲食店の良さが融合し、子どもの夢に描かれ、本来目指されてきた飲食店やホテルが新しいコンセプトのもとにできていくのではないかと思います。

食のパーソナライズ化をアップデートするために必要な観点とは?

では、食のパーソナライズ化をアップデートするために必要な観点とは?
3氏は以下のように回答しました。

谷氏:飲食店やホテルでの個別対応は、調理工程やオペレーションを踏まえると、難しい問題です。だからこそ、ご飯サイズを小さくするとか、調味料を別添えにするなど、できるところからスタート可能な環境が構築できるといいと思います。

松本氏:団体客を見込むことが厳しい中で、一人向けに提供することを前提にメニュー構成を改めて考え直してみること、食だけでなく過ごす時間もひっくるめてITを活用してどう充実した時間を過ごしてもらうか。という発想が必要だと思います。

田ヶ原氏:特にアレルギー対応は難しく、ハードルが高いイメージはありますが、「やらなくてはいけないこと」です。食を含めたサービス全体のパーソナライゼーションを実現していくためには、DX化などでまず認知してもらうこと。現場にかかる負担をにしながら、最大公約数の大きいものから少しずつ挑戦していくことが良いのではないでしょうか。

▶︎CAN EAT https://about.caneat.jp/
▶︎ホーン(ソロメシ) https://www.solomeshi.jp/
▶︎Sustainalife keisuke.tani@sustainalife.net (メールでのお問い合わせ)


これからの外食産業に求められる、ホスピタリティの向上やパーソナライゼーション、ロボティクスなど、最新の知見が得られた各セッション。白熱したトークは、どれも視座が高まる内容でした。次回は、作り手の進化や食品ロス、データ活用をテーマにしたイベントレポート後編をお届けします。どうぞお楽しみに!



writing support:Sayaka Takahashi



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