世界初の塩分吸収抑制技術。トイメディカルが目指す食事のQOL向上と世界の健康寿命延伸

世界初の塩分吸収抑制技術。トイメディカルが目指す食事のQOL向上と世界の健康寿命延伸

生活者の健康意識の高まりから、市場規模は約2兆7千億円(※)と成長しているヘルスケア市場。最近では進化する「健康でおいしい食品」が一般化しはじめ、機能性表示食品などの充実も顕著です。そうした中、塩分の過剰摂取が世界的に大きな課題となっています。トイメディカル株式会社では、世界初の塩分吸収抑制技術を応用してサプリメントを開発。食事中に含まれる塩分を吸着して体外への排出を促すことで、透析患者らのQOL向上に貢献しています。開発の背景や今後の構想などについてお話をうかがいました。   ※株式会社インテージ「健康食品・サプリメント+ヘルスケアフーズ市場実態把握レポート2018年度版」

お話をうかがった方:

13586_image01.jpgトイメディカル株式会社
代表取締役 竹下 英徳氏
http://www.toymedical.jp/company/

 

透析患者の声からプロジェクト始動。
食事のQOL向上がミッション

ーー まずは、世界初の塩分吸収抑制技術について教えていただけますか。

竹下氏(以下、竹下):塩分吸収抑制技術は、食事中に含まれる塩分を吸着して体外への排出を促す技術です。当社ではこの技術を応用し、サプリメントを開発しました。塩分中に含まれるナトリウムと結びつきやすい性質を持つアルギン酸類※と、アルギン酸類のダマになりやすい性質を解消し、分散させる玉ねぎパウダーを配合しています。「塩分を気にせず食事を楽しみたい」という多くの方の声に応える製品です。

※アルギン酸類とは、昆布やワカメなどの褐藻類に含まれるアルギン酸が、海中に含まれるミネラルと結合した天然の食物繊維のこと

参照:宮島千尋, アルギン酸類の概要と応用, SENI GAKKAISHI (繊維と工業), 65, 12, 444-448 (2009).

ーー 透析患者の声から生まれた製品だそうですね。どのような体制で開発していったのでしょうか。

竹下:当社はもともと医療品メーカーとして、透析用の止血バンドなど“透析患者のQOL向上”を目指した商品を開発していました。次期製品のモニタリングをしていた時に、透析治療中の知人から「もう一度ラーメンが食べたい」との声を受けたのです。それがきっかけで、透析患者にとってもっとも苦しいのは、食事面でのQOLだと痛感しました。
これまでに減塩商品を提供するメーカーはたくさんありましたが、透析患者の食事面での課題解決となる商品は、世に出ていなかったのです。「どうしたら、食事の満足度をあげられるだろう?」「自分には何ができるのか?」とはいえ「難しいよね」と逡巡していました。

そうした中で、当時流行っていた「糖と脂肪を吸着するお茶」を見て、アイディアが湧いたんです。「塩分を舌で味わって、体の中でなかったことにすることができるんじゃないか」と。そこから、熊本大学生命科学研究部の藤原先生に相談し、共同研究を申し込みました。

予算が潤沢にあるわけではなかったので、産学連携の補助金を取得して予算を確保。藤原先生の研究費や人材確保などの体制が整った段階で、研究開発がスタートしました。

外部との共創でビジネスをスケールさせる


ーー産学連携で熊本大学と共同開発していく中で、実感した課題やメリットなどはありましたか。

竹下:そうですね。通常であれば、特許権や専用実施権など権利関係については、意見の相違が生じるひとつのポイントだと言われています。帰属先が大学なのか、企業なのか。そこが、産学連携が進みにくいポイントだろうとも感じています。今回の共同開発では、もともと親交のあった藤原先生との取り組みかつ、当社が想定していた範囲の部分でお手伝いをしていただく、という形だったこともあり、比較的スムーズに進んだと思います。

共同開発によって先生方の知見を得つつ、地方ベンチャー単体では得難い信頼を獲得できたのは、大きなメリットでしたね。「熊本大学との連携」というネームバリューもありますし、データの活用という面でも、第三者的に我々のデータを見ていただけるというのは非常に大きかったです。

ーー共同開発によって、より信頼感が増すということですね。

竹下:おっしゃる通りです。大学と連携することによって、データやエビデンスに対しての公共性が生まれたことは、大きな強みになりましたね。13586_image03.jpg

熊本大学との共同開発によって誕生した世界初の塩分吸収抑制技術を応用したサプリメント

ーー実際に利用者からはどういった反応があるのでしょうか。

竹下:人工透析によって食事のQOLが下がっている方や、がん治療で手足にむくみが出ている方などがリピートしてくださって、「非常に助かっている」という声を多くいただいています。

特に人工透析の患者さんは、普段の食事について、ご自身でコントロールして気をつけているんですね。でも、友達と食事に行った時に、「自分は食べれないから」と言って、場の雰囲気を崩してしまうことに心苦しさを抱えていたそうです。そういった場面で、塩分吸収抑制技術を応用したサプリメントを飲んでいただくことで、次の透析の時に影響がなく食事も楽しめる。そういった“お守り的な使い方”をしていただいています。透析の方に限らず、高血圧で減塩が必要な方からも好評をいただいてます。

ーーお守り的な存在というのは、心強いですね。2021年には、九州を基盤とする食品の中間流通業のヤマエ久野株式会社と資本提携されましたね。出会いや協業の決め手について教えていただけますか。

竹下:これまでも当社はヘルスケア領域で、ロート製薬やアルフレッサヘルスケア、キューサイなど、パートナー企業がいました。ただ、この塩分吸収抑制技術やサプリメントについては、おそらく「フードテックという位置付けで商品を広げていかなければ、塩分の過剰摂取を予防できない」という考えに至ったんです。

フードテック領域での事業展開を構想し、パートナー企業を探していた頃、タイミングよく日経新聞に特集していただきました。その記事を、偶然ヤマエ久野の網田会長が読んでいて。「一度お会いしたい」とお声がけいただきました。「トイメディカルは、ヘルスケアとフード領域の融合を考えているんです」というお話をしたところ、同じ構想を持っていた網田会長と意気投合。販売力を持つヤマエ久野と、商品はあるものの販売力のない我々とで、ベストマッチングができたと思っています。

ーー先方からのお声がけだったんですね。

竹下:そうなんです。偶然が重なって、とんとん拍子に資本業務提携に至り、ヤマエグループホールディングスのグループ会社となりました。

ーーグループ会社になったことで、今後こういう展開をしていきたいという構想はあるんでしょうか。

竹下:そうですね。現在当社では、排塩技術を生かしたサプリメントやゼリーなどを販売しています。今後はさらに、原料分野でも展開していきたいと構想しています。プロジェクトを展開していくにあたって、メーカーと直接コンタクトをとれるヤマエ久野の存在は、非常に大きいですね。

ベンチャー企業単体だとお付き合いが難しい大手企業へのアプローチも、ヤマエ久野経由だと可能になります。そうした販売チャネルとしての協業はもちろんのこと、マーケットとしても塩のマーケットは無限大です。グループ内の活動として協業できることは、お互いにとって相乗効果を生み出せると感じています。

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塩分の過剰摂取という世界共通の課題に挑む

ーーコロナ禍で、健康や食への注目度が上がり、食やヘルスケア領域の商品開発に参入していく企業も増えています。どのような視点で取り組むと良いか、注意点などはありますか。

竹下:私たちが気をつけていることとしては、誰かの課題解決であったりとか、誰かの困りごとへのソリューションを起点に考えることでしょうか。特にヘルスケア領域でのものづくりについては、課題解決から出発することで、最終的に世の中に役に立つもの、多くの人に受け入れられるものが開発できるだろうと考えています。
もちろん、それが全てではないと思います。新しい領域や誰もやったことのないことは、市場規模も実現可能かもわかりません。その分、参入が難しくはなりますが、そこから大きな進歩に繋がっていくと信じています。

ーー塩分の過剰摂取は日本に限らず、世界的な問題となっています。今後どのように世界を目指していきますか。

竹下:日本は、世界から見ても平均年齢が高い超高齢化社会です。そういう意味で、他国と比べて一歩先をいっているので、「健康寿命をどう伸ばしていくか」という点で、塩分の問題は非常に大きいと思っています。日本でビジネスモデルを確立しながら、並行して世界市場へのチャレンジを構想しているところです。

塩は世界各地で使われています。だからこそ、ありとあらゆる場所でこの技術を生かしていけると思うんですよね。非常に大きなマーケットですし、だからこそエビデンスと戦略を持って世の中に広げていきたいです。

また、私たちは食事の楽しみや誰かと食事を共にする喜びを、大事にしていきたいと思っています。「我慢しない」食生活を多くの人に供給していきたい。私たちが開発した技術で、日本に限らず世界中の人たちに「我慢しないハッピーな食生活」を提供していきたいですね。



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