森永「甘酒」に学ぶ、カテゴリーを市場・生活に根付かせるマーケティング

森永「甘酒」に学ぶ、カテゴリーを市場・生活に根付かせるマーケティング

SNSなどで話題の「マーケティングトレース」をご存知ですか? 基本のフレームワークを使いながら成功事例を分析し、マーケティング思考を鍛える方法です。今回は、考案者の黒澤友貴さんにブランド戦略を読み解くシートを使って、森永「甘酒」のマーケティング戦略を読み解いていただきました。
                                前回記事はこちら:https://foodclip.cookpad.com/12930/

発売から50年を超える
ロングセラー商品、森永「甘酒」

森永甘酒は、甘酒を日本市場に根付かせたリーディングブランドです。

このパッケージを、一度はスーパーやコンビニで目にしたことがある方は多いのではないでしょうか?

森永甘酒は1969年に誕生した商品で、発売から50年を超え、ブームとなっている甘酒市場の中でも売上No.1を誇っている商品ブランドです。

今回の記事では、森永甘酒がどのようなマーケティング戦略をとり甘酒市場の売上No.1を獲得してきたのかを読み解いていきます。

テーマは、カテゴリー(ここでは甘酒)を市場・生活に根付かせるマーケティングです。

森永「甘酒」のブランド戦略を読み解く

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今回は、通常のマーケティングトレースシートではなく、ブランド戦略を読み解くシートを作成。上段・中段・下段の3層に分けて、ブランド戦略を1枚でまとめています。

上段:森永製菓のコーポレートブランドについて
中段:森永甘酒の商品ブランドについて
下段:具体的な顧客への価値の届け方について

ぜひ、ブランド戦略を理解する、整理する参考にしていただければと思います。
ここから具体的に解説をしていきましょう。

前提:森永は新しい文化を根付かせることが得意!?

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まずは母体である森永製菓株式会社の歴史を整理していきます。

注目したいのが、森永はミルクキャラメル、ミルクチョコレート、インスタントコーヒーといった、今ではコンビニやスーパーで見かけることが当たり前の商品カテゴリーを生み出してきた会社であることです。
森永のコーポレートサイトで会社の歴史が紹介されているページでは、日本のお菓子の歴史を理解することができ、興味深いです。

さらに一大イベントであるバレンタインデーの慣習は、実は森永製菓株式会社が1960年に仕掛けた企画です。新しい文化を根付かせることが得意な森永製菓株式会社が、「甘酒ブーム」を生み出すためにどのような仕掛けをしてきたのかが気になります。

マーケティング戦略をトレースしながら解説していきます。

ポイント①新たな消費文脈をつくり出す商品開発

13630_image10.jpg最初に注目したいのは、森永甘酒の商品ラインナップです。
オウンドメディアを確認すると、下記の商品ラインナップが紹介されています。

  • 甘酒
  • 冷やし甘酒
  • 甘酒(しょうが)
  • 米麹甘酒
  • 食べる甘酒ヨーグルト

商品ラインナップの中で注目したいのは「冷やし甘酒」の存在です。

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江戸時代ごろには夏バテ防止の栄養補給として飲まれており、夏の季語にもなっている甘酒。近年は甘酒が冬に飲むことが一般認識となっていた中で、他社ではあまり見られない冷やし甘酒を継続的に販売し、根強く訴求していました。2011年ごろの美容・健康文脈で甘酒ブームが盛り上がりはじめ、現在では夏にも甘酒を飲む習慣が復活しました。

近年の夏の甘酒の認知

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クックパッドの2021年の月別検索頻度の推移をみると、秋冬シーズンの人気もさることながら、夏も甘酒アイスなどで一定の需要があることもわかります。

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2017年以降の年間の「甘酒×●●●」の組み合わせキーワードを見ると、「べったら漬け」や「パン」に加えて、「アイスクリーム」も伸びており、甘酒の喫食シーンも変化が見られます。

森永の「甘酒」は、こうしたブームの波をうまく捉えてプロモーションをおこない、消費文脈を生みだしたといえます。

市場に根付かせたポイントとして、「消費文脈をつくり出す」視点は、マーケティングに関わる人にとっての学びポイントです。

ポイント②小売の棚を抑える力

13630_image11.jpg続いてのポイントは、配架率を高める視点です。
配架率とは、顧客が商品を手に取りやすいよう店舗の棚を抑えることです。

ブームをつくるためには、コミュニケーションの工夫だけではなく、店舗の棚を押さえることが重要です。

重要なポイントは「小売の担当者にとって有難いネタがある」こと。

先程ご紹介した通り、森永甘酒は、夏に飲む、健康のために飲むといった新たな商品文脈を定着させてきました。広いターゲット層に受け入れられる文脈であるため、コンビニやスーパーなどの店舗は売り場の棚を作りやすくなります。

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以下に例を記載します。

  • 冬場(赤の甘酒)、夏場(青い冷やし甘酒)を用意し季節性に合わせて売り場をつくる
  • 甘酒を活用した健康レシピを紹介して、食材とセット販売する

森永製菓は、チョコレートやデザートカテゴリーでも強い小売店舗との交渉力をもっている会社です。小売店舗の棚を押さえた上で、森永というブランドイメージをもって顧客が手に取りやすい状態をつくれたことは、現在の森永の甘酒ブランドを確立させた要因を探る上で、押さえておきたいポイントです。

ポイント③信頼獲得のためにエビデンスを開発・発信

13630_image12.jpg次の注目ポイントは「エビデンス=信頼される根拠」づくりです。森永製菓には「あまざけラボ」と名付けられたメディアがあります。ここでは、森永製菓による甘酒の研究結果をまとめ、大学との共同研究による甘酒の健康効果をエビデンス付きで発信をしています。

森永甘酒の発信やメディアでの取り上げられ方を分析すると、この研究成果をもとにしたPRや、美容や健康の情報に敏感な女性によるSNS発信を組み合わせて、甘酒の魅力が拡散されています。

リーディングブランドとして、甘酒を顧客が飲みたくなる、メディアが紹介したくなるための根拠をつくり、新たに発信。森永の「甘酒」の信頼をさらに裏付けたことで、甘酒ブームのメインストリームにポジションを確立できたと理解できます。

まとめ

ブームは外部要因のみで、偶然に生まれるものではありません。森永製菓によるマーケティングも影響していることが、分析から理解することができました。

最後に、森永甘酒のブランドを確立し、市場を牽引してきた戦略から理解できる「カテゴリーを市場・生活に根付かせるマーケティング」の考え方をまとめます。

1. 新たな消費文脈をつくり、多様な状況で想起されるブランドになる
2. 配架率を高め、手にとってもらいやすいブランドになる
3. エビデンスをつくり、メディア、口コミの起点となるブランドになる

この3つの要素を、ブランド設計に組み込み、新カテゴリーを生活に根付かせる可能性を探るヒントにしていただけましたら幸いです。



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著者情報

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黒澤友貴
1988年生まれ。ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室 室長。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに6,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ#マーケティングトレースを運営。2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」を出版
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