![[世界の台所探検]料理しない料理?ブルガリアで教わった「ハーブソルト」の知恵](/files/cache/c401c7b1bb85f1e2d22442c3bb339e42_f5374.jpg)
食の偏愛コラム
[世界の台所探検]料理しない料理?ブルガリアで教わった「ハーブソルト」の知恵
世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんのレポートから、世界各地の家庭料理を通じて、さまざまな食の文化と歴史、それぞれの暮らしを感じることができます。
毎日の食卓を楽しくする「料理の知恵」メディア【クックパッドニュース】より
知られざるハーブ大国、ブルガリア
料理の味付け、あれとこれを合わせて・・と考えてこんがらがってしまうこと、ありませんか? ハーブ大国ブルガリアの台所で教わったのは、たったハーブひと振りで食材が料理になっちゃう「料理しない料理」の知恵でした。
ブルガリアは、実は世界有数のハーブ生産国。ブルガリアの人々は、薬用にもお茶にも、そして料理にもハーブを使う知恵を持っていて、市場にはフレッシュもドライもたくさんのハーブが並んでいます。
そんなブルガリアの家庭で訪れたネリさんは、お庭でハーブを育てる料理好き。料理をしているとひょろっと庭に出ていって、今使うハーブをとってきます。
ハーブにはあこがれもあるけれど、なんだか難しそうで尻込みする気持ちもあります。でも、ネリさんに教えてもらったハーブソルト使いは、そんな気後れを吹き飛ばすほど簡単で、毎日の料理に取り入れたくなる気楽さだったのでした。
この地域だけのハーブ「サマルダラ」
「これから、"料理しない料理"を教えるわね」
そう言って見せてくれたのは、緑が美しいサマルダラ。
バルカン山脈にだけ育つこの地域のハーブで、にんにくのような香りと、はちみつのようなやわらかさを併せ持つことから、英語では「ハニーガーリック」と呼ばれます。すりつぶした葉っぱに塩を混ぜて乾燥させて作るので、ハーブといってもしっかり塩味があり、なんだか抹茶塩を思わせます。
パンにかけるだけで立派な料理
ネリさんが見せてくれたサマルダラ使いのすごいところは、「ぱらっとかけるだけで立派な料理になる」こと。パンや生野菜などの食材にかけるだけで、全然新しい味わいに変身しちゃうのです。
パンにバターをぬって、サマルダラを振りかけたものを「はい、サンドイッチ」。
半信半疑でかじりついた瞬間、目を見張りました。バターの脂肪分とガーリック香が絶妙に合い、"ぱらっとかけただけ"なのに、チーズ風味の立派なオープンサンドになっているのです。忙しい朝でも何もない日でも、ひと切れのパンがごちそうになってしまいます。
そこにきゅうりやトマトをのせると、もうパーティープレートのよう。朝食並の手間なのに、ぱらっとひと振りでパーティーのように華やかな一品ができてしまいます。
パン以外にも「かけるだけ」で大活躍
ゆで卵に振りかけるのも、料理。見た目にもきれいですし、卵の硫黄臭にガーリックのような風味が抜群に合って、いつもの「塩をふった卵」ではなく「卵料理を食べている」ような充実感になるから不思議です。
そして最後にとっておき。「これは夫の大好物なの」と教えてくれたのは冷たいトマトスープ。
よく熟れたトマトをフードプロセッサーにかけ、サマルダラをひとつまみ入れるだけ。
えっそれだけ?と驚いたのだけれど、旬のトマトはもうそれだけでおいしいのです。サマルダラの仕事は、はじけるような甘みと酸味をきゅっとまとめることだけ。 でもそのおいしさは、旦那さんの笑顔が証明しています。
ネリさんがこだわる”料理をしない料理”
「手のかかる料理はしなくなってしまうでしょ。若い人にも料理をしてほしいから、私は"cooking without cooking(料理しない料理)"を伝えているの」。
ネリさんは有名なフードブロガーで、手の込んだ料理だって作れる料理上手です。でも彼女がブログで紹介したり今回教えてくれたものは、最小限の手間にして充実感とおいしさがあるものなのでした。
食事は毎日のことだから、手のかかる料理は疲れてしまいます。でも食材を切っただけだとちょっとさみしいことも。
お気に入りの調味料をぱらっとかけるだけでいいのよ、というネリさんの言葉は、ひとつの心地よいバランスを示してくれたようでした。
ハーブ大国ブルガリアの家庭で教わったのは、料理をワンランクアップするためのおもてなしハーブのテクニックではなく、ぱらっとひと振りで「料理をしないで料理を楽しむ日常の知恵」でした。
かけるだけ!ハーブソルトのオープンサンド by 世界の台所探検家
https://cookpad.com/recipe/5793119
私たちの身の回りにもあるハーブソルト
実は、サマルダラ"みたいなもの"は日本にも昔からあります。使い方で似ているのは「ゆかり®」(赤しそふりかけ)。ぱらっとかけるだけで、白いご飯がおいしくなるだけでなく、切っただけの野菜も立派なおかずになります。ブルガリアの台所で教わった知恵が、こんな手の届くところにあったのです。
また、サマルダラと風味は異なりますが、オレガノと塩をまぜて作る「オレガノソルト」もネリさんのおすすめです。
パンにも野菜にもトマトスープにも、同じように使えて、かけるだけで立派な料理を作りだします。他のお気に入りのハーブを塩とあわせてみてもよさそうです。
マイハーブソルトを小瓶に詰めて、「料理しない料理」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
※編集部注:
1)ゆかり®は、三島食品の登録商標です。
2)この記事は2019年にクックパッドニュースに掲載されたものを再編集し転載したものです。
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著者情報

- 岡根谷実里
- 台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。2014年クックパッド入社。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
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