創業250年以上「九重味淋」のみりん粕。昔から今、未来へ繋ぐ食材に

創業250年以上「九重味淋」のみりん粕。昔から今、未来へ繋ぐ食材に

創業250年以上の歴史をもつ「九重味淋」は、古くからの製法を受け継ぐ数少ないみりん蔵です。江戸時代後期から日本の食を支える調味料みりんの素晴らしさや、蔵の歴史をたどりながら、みりん造りの副産物であり、近年注目を集めるみりん粕の可能性についてお話をうかがいました。

お話をうかがった方

九重味淋株式会社
新規事業部 取締役部長 國松和夫氏

江戸から三河へ。
発酵の地に根ざしたみりん蔵

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九重味淋は愛知県三河地方、碧南(へきなん)市の三河湾に面した矢作川河口に位置しています。この地域は清らかな水と三河平野で採れる米、麦、大豆などの豊富な作物により、古くからみりんや清酒、味噌、たまり醤油など多くの発酵食を生み出す場として知られてきました。現在、みりんを手がける醸造所は4軒のみです。


ーー九重味淋は250年以上の歴史があるとうかがいました。

國松氏(以下、國松):創業は江戸時代後期の1772年(安永元年)。現在の愛知県碧南市にあたる大濱村で廻船問屋を営んでおり、22代目の九重味淋の創始者である石川八郎右衛門信敦がみりんの製造をはじめました。はじまりは22代目が江戸を訪れた時に、屋台でうなぎの蒲焼や蕎麦、江戸前寿司が流行っていたところから。当時は甘い=おいしいという文化もあり、鎖国などで砂糖がない中、流行りのおいしいものに甘みをつけるのにみりんを使っていました。

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みりんは、米麹と蒸したもち米、米焼酎を合わせて醪(もろみ)にしたものを糖化熟成させ、搾って作られます。碧南市や安城市は平野で気候も温暖。水も綺麗で米も豊かに採れました。知多半島には、かつて150もの酒蔵があり、多くの酒粕が出るので、これを蒸留して粕取り焼酎を作ることができます。原料が豊富に手に入り、水運も発達し各地へ運べることから、みりんの事業を始めたんです。

ーー愛知県碧南市はさまざまな発酵調味料が根付いていますよね。

國松:江戸時代頃からそうした文化が栄えて、日本酒、八丁味噌、酢など、幅広くありますね。このあたりは多くの蔵があったのですが、近年は味噌蔵などがどんどん減っているのが現状です。

ーーその中で長く続けていらっしゃるのは、すごいですよね。やはり、長年守ってきた製法やこだわりがあるのでしょうか。

國松:そうですね。ひとつは、質の良い原料を選ぶように心がけています。特にもち米は、割れた米を使うところもあるのですが、うちは国産で割れのない綺麗なものを使用しています。さらにじっくり時間をかけて作ることで、洗練された味わいに仕上げています。米麹を作るのに2日、醪を糖化熟成させて2ヶ月、さらに搾ったものを熟成させるのに6ヶ月以上。きちんと手間暇をかけていいものを作っている自負があります。

食材のうまみを引き出し
臭みをマスキングするみりんの魅力

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九重味淋の看板商品、本みりん「九重櫻」

ーーおいしいみりんは、まろやかな甘みや風味の良さがあります。その陰には多くの時間と技が注がれているのですね。

國松:いいみりんというのは前に出過ぎず、食材の味わいを引き出し、料理のおいしさの和を生み出します。臭みや味のとがりをカバーして、和ませてくれるんです。

ーー貴社のみりんを代々使っている老舗も多いのでしょうか。

國松:全国各地で使っていただいて、名店と言われる老舗料亭とも長くお付き合いがあります。照りの出方が違うので、「九重味淋じゃなきゃ」と言ってくださるお客さまもいらっしゃいます。みりん自体が家庭料理で使われるようになったのは、明治以降ですが当時はまだ贅沢品。広まったのは、戦後の酒税の大幅減税がおこなわれた昭和の半ば以降です。業務用から一般家庭に普及し、日本の家庭料理を支える調味料になりました。

みりん粕の再利用をヒントに
もろみ調味液も開発

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「休日つけ置き、平日焼くだけ」商品パッケージ


もろみ調味液は、みりんの製造過程でできる醪を応用した調味料です。食塩の入った醪に水あめ、生姜汁を加えており、みりん同様の効果のほか、みりんにはない調理効果も。

ーーみりんのほかにも、もろみ調味液など、家庭料理にも寄り添う調味料を開発されていますよね。“休日つけ置き、平日焼くだけ”というキャッチコピーが印象的でした。

國松:これは10年以上前から手がけていて、6年前に発売したものです。料理人がみりん粕に調味料を加えてペースト状にし、肉や魚を漬ける漬け床として使っていたのがヒントになりました。酒粕と同じように、みりんは醪から搾る時にみりん粕が残ります。多くは漬物店へ卸して漬物に使ってもらうのですが、一部は料理人さんが味噌漬けや西京漬を作るときのようにみりん粕を漬け床に使っていたんです。新しい商品開発を手がけるタイミングで、漬け床も作ってほしいとの要望もいただいて、開発に着手しました。

ーーでは、プロの声から生まれたんですね。

國松:そうですね。ただ、試作した漬け床を他のお店に持っていくと、完成した味付けでなく余白を残して欲しいといわれるんです。やはりお店ですから、あとひと手間で、その店らしさを表現できなければなりません。生姜汁なども加えて、肉も魚もおいしくつけられる分量に試行錯誤。お好きな調味料を足して、完成させて使ってくださいという業務用の製品でスタートしました。現在は家庭でも使いやすい、300ml、1.8Lのサイズもご用意しています。みりんと同じく、料理を引き立てておいしくする調味液としてお使いいただきたいです。

甘くてコク深い味わいに
みりん粕の可能性

13826_image05.jpgーー実際に使ってみましたが、簡単なのに肉がしっとりおいしく焼けて驚きました。その重要な役割を担っているのが、みりん粕なんですね。

國松:はい。みりん粕は、「こぼれ梅」とも呼ばれています。あまり知られていませんが、優しい甘みとみりんならではの風味とコクがあるんですよ。

ーーみりん粕も味見してみて、そのまま食べてもおいしかったです。みりんを丁寧に作っているからこそ、その味わいが生まれるんでしょうね。

國松:そうですね。例えば、みりんを搾る時は、こだわった日本酒を作る時にも使われる佐瀬式圧搾機で、時間をかけて進めます。佐瀬式圧搾機は醪を袋に入れて並べ、上から圧力をかけて搾る昔ながらの方法。現代では自動圧搾機を使うのが主流ですが、一気に搾ると雑味が出てしまうんです。またギュッと搾りすぎると、今度はみりん粕もおいしくなくなってしまうので、みりんもみりん粕も良い状態になるよう製造しています。

また、大量生産のみりんの場合、自動圧搾機で搾るため、みりん粕はあまり流通しません。当社のみりんの生産量に対して、みりん粕は大量にはでませんので、こうして一般に流通するのは貴重かもしれませんね。


ーークックパッドのレシピでは、みりん粕をカスタードクリームに使っている方もいましたが、どのように使うのがオススメでしょうか?

國松:漬け床や味噌汁に入れるなど、食事のほか、ケーキやクッキーなどに混ぜ込むのにも向いています。お菓子は生地がしっとりした食感に仕上がるのでおすすめですね。

ただ、アルコールが含まれているので、子どもや妊婦への料理にはアルコールを十分飛ばす必要があるのでご注意ください。

ーー漬け床やケーキに活用できる点は、酒粕にも似ていますが、どういった違いがありますか?

國松:日本酒の副産物である酒粕は糖度も低く、日本酒の風味がします。一方でみりん粕は糖度が高く、焼酎ともち米で仕込んでいるので焼酎の風味がします。似て非なるものですね。
また、健康をサポートするレジスタントプロテインという栄養素は酒粕より多く含まれていて、ビタミンも豊富です。医学的なことは謳えませんが、腸活など健康を気にされている方にもぴったりですよ。

健康志向の生活者からも反響
発酵食ブームの波も

ーー発酵ブームなど注目も高まっていますが、生活者からの反応はいかがですか?

國松:広くは販売されていないこともあり、お問い合わせも多いです。30、40代以降の女性がメインで、食で免疫力を高めることに興味をお持ちで、料理好きの方が多いんじゃないかと思います。また、今後の食にはそういった視点が不可欠になっていくでしょうね。

ーー食品企業などのtoBからの反応はいかがですか?

國松:お問い合わせもいただきますし、みりん粕は当社から食品企業へ提案する際も採用率が非常に高いです。例えば、魚加工メーカーによる、魚を使用したプロテインサプリメントにもみりん粕が使用されています。栄養価と魚特有の香りをマスキングする機能を評価していただきました。

ーー機能性も高く、これからの食トレンドにフィットしていきそうですね。今後は、どういったお客さまに広げていきたいと考えていますか?

國松:近年は健康志向も高まっていて、幅広い層が腸活に興味を持っているので、まずはみりん粕の存在を若い方やライト層にも、もっと知っていただきたいですね。最近はテレビや雑誌などのメディアでも取り上げていただく機会も増えました。今後はクックパッドアライアンスで、一緒に取り組みさせていただく上で、“手軽に作れておいしい”みりん粕のレシピが生活者へ届けばいいなと考えています。

ーーここまでお話をお聞きして、おいしさや機能性はもちろん、みりんや九重味淋の歴史も素晴らしいなと感じました。生活者、食品企業へみりんのおいしさやみりん粕のことを丁寧に伝えれば、きっと価値を感じていただけると思います。最後に今後の展望についてお聞かせください。

國松:生活者の食の考え方が変わる中で、私たちは伝統のいい部分をきちんと守りながら、時代に合わせて新たなチャレンジもしていきたいと考えています。日本らしい食を表現するみりんに軸足をおきながら、みりんやみりん粕の良さを知っていただける即食の食品を開発するなど、皆さんに健康でおいしい食を届けていきたいですね。


ーーありがとうございました。

5月26日〜6月1日、そごう横浜でイベント開催!
九重味淋の商品にも出会える

13826_image06.jpg2022年5月26日(木)〜6月1日(水)そごう横浜店8階催会場にて、クックパッド株式会社による「おいしいを楽しもう展」が開催されます。このイベントでは九重味淋の商品も並びます!ぜひ、おいしいを楽しみに会場へ!


イベントに関する詳細はこちら



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