
企業・業界動向
サービス解約者の5人に1人が再登録 完全栄養食「BASE FOOD」のやめさせない仕組みづくり
完全栄養食の「BASE FOOD(ベースフード)」は、定期購入型サービスの利用者が10万人を超える人気ブランドだ。その人気を支えているのは、「BASE FOOD Labo」呼ばれるコミュニティーサイトの利用者たちだ。彼らはなぜ、BASE FOODに強い愛着を抱くのだろうか。
※この記事は[ITmedia ビジネスオンライン([堀井塚高]/2022年05月27日掲載)]からの転載記事です。
ベースフード(東京都目黒区)は、1食で1日に必要な栄養素の3分の1を摂取できる完全栄養食「BASE FOOD」を同社のWebサイトで販売している。定期購入型の「継続コーススタートセット」は「パンセット」「パン&クッキーセット」「パン&パスタセット」の3種類があり、指定したセットが4週ごとに届く。
2017年に販売を開始。22年5月現在、定期購入者は10万人に上る。直近2年間で新規会員が急増。20年2月の月間定期購入者数と比べて、約10倍にまで伸長した。同社の齋藤竜太CMO(最高マーケティング責任者)は新規会員が増加した背景について、このように話す。
BASE FOODの定期購入者は10万人に上る(画像:ベースフード提供)
「BASE FOODに関する口コミはSNS上で月に9000件ほどに上る。現在はコンビニでも展開しているので、口コミを見て気になった人が購入し、そこから定期購入につながるという流れが生まれてきている」(齋藤CMO)
口コミを増やすための工夫として、商品パッケージや配送時のダンボールのデザイン、同封する冊子など、SNSに投稿したくなる工夫を施している。そうすることで、商品を受け取った新規会員が感想などの口コミを投稿する好循環が作れているという。
もちろん、BASE FOODがこれほどの人気になった理由は新規会員の獲得に成功したからだけではない。既存利用者の熱量の高さも大きなカギとなる。同社が特に力を入れているのが、継続コース利用者の交流の場となっているコミュニティーサイト「BASE FOOD Labo(ベース・フード・ラボ、以下ラボ)」だ。18年11月に立ち上げ、現在の会員数は2万人を突破した。21年6月発売の「BASE Cookies(ベースクッキー)」もサイト利用者の声を反映して開発された商品だ。
ラボから生まれたベースクッキー(画像:ベースフード提供)
齋藤CMOは、「商品の開発に積極的に関わってもらえるよう、ラボでは会員を“研究員”と呼んでいる。ラボに参加することで、商品を買って食べる以上の体験ができる」と話す。
ラボの参加者は、おすすめのアレンジを共有したりアンケート機能を利用して他の参加者に意見を求めたりとさまざまな使い方をしている。会員同士で情報交換をする以外にも、会員が食べ方に関する疑問を投稿した際には、ラボ専属の管理栄養士がコメントを残してくれる。ラボの参加者はラボに共通の価値観を見いだしているので、コミュニティーとして機能しやすいのだろう。
ラボ専属の管理栄養士がコメントを残してくれる(左)、アレンジレシピをシェアする(画像:ベースフード提供)
会員が勝手にアンケートを実施 「これ買いたい人いますか?」
齋藤CMOによれば「7万2600円分の商品を6万6000円で購入できる前払いポイントパック『いちねんポイントパック』というサービスをこの春から始めたところ、会員の一人がラボのアンケート機能を使って『金額が大きいので購入を迷う。3万円くらいのパックがあったら買いますか?』という質問を他の会員に向けてしていた」とのこと。
「ユーザーが自発的に自然な形で要望を共有してくれる。客観的なデータとともに頂けるのはありがたい。ラボの参加者は、まるで社員のようです(笑)」(齋藤CMO)
このような“熱量の高い”会員の多いコミュニティーサイトは、どのように形成されていくのだろうか。齋藤CMOは「利用者の投稿を常にチェックし、サービスや商品改善に生かしている。どのように改善したかは、常にサイトで報告して利用者から意見・感想をもらう」と話す。普段から口にしているBASE FOODに自分たちの意見が反映されていくのを見るのも“研究員”たちの楽しみになっているのだ。
定期購入に同封される冊子(画像:ベースフード提供)
また、会員たちはBASE FOODの“布教”にも熱心だという。過去にBASE FOODを友人に紹介したことのある会員は7割を超える。紹介経由での新規会員は、現在では3割近くを占める。ラボでは友人を紹介するとマイルがたまる仕組みになっているが、“研究員”たちがマイル目的でないのは間違いないという。
齋藤CMOは「新型コロナウイルス感染症拡大前は、会員を集めて工場見学などのイベントを実施していた。そうしたイベントに来てくれた人とは顔見知りになる。自分たちが普段食べているものがどのように作られているのかが分かると、よりBASE FOODを応援してくれるようになる」と話す。
なぜ解約したのに戻ってくるのか?
BASE FOODの定期購入には面白い特徴がある。継続コースを停止した人のうち、約20%が1年以内に戻ってくることだ。齋藤CMOは「やめる理由の多くは『飽きたから』というもの。そのため継続コースをやめた人には、季節の変わり目や新製品が出たタイミングで、メールやDMを送っている」と明かす。
定期購入をやめた後も続く、息の長いコミュニケーションも、商品に愛着を持ってもらうためには大切なのだ。商品ラインアップの拡充は継続コース利用者の追加購入にもつながっており、ここ2年間で客単価は39%増えた。
現在、BASE FOODのラインアップはパンの「BASE BREAD(ベースブレッド)」6種類と、生パスタの「BASE PASTA(ベースパスタ)」2種類、クッキーの「BASE Cookies(ベースクッキー)」5種類。今後はパンとパスタに限らず、主食領域を拡充していくという。
齋藤CMOは「今後は主食領域を拡大していく」と話す
同社はBASE FOODの一番の価値を「おいしくて身体にいい食事を簡単に取れること」と定義する。毎朝、BASE FOODを食べると決めていれば献立や栄養バランスを考える手間も省けるだろう。
BASE FOOD生活の目的は人によってさまざまではあるものの、同じ目的を持った人と交流することで熱量がキープされるのは間違いない。ラボ会員の求心力をさらに高め、継続コース利用者数100万人、2024年春までにラボ参加者数50万人という大台に乗れるか、勝負の局面を迎える。
元記事はこちら
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- ITmedia ビジネスオンライン
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