【レポ】くら寿司原宿店は本当に「世界一映える寿司店」か

【レポ】くら寿司原宿店は本当に「世界一映える寿司店」か

「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」シリーズ第11弾は、2021年12月にオープンした「くら寿司 原宿店」へ。クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんがプロデュースし、Z世代を狙ったフラッグシップとして話題になった店舗で、オープン景気が落ち着いた今、映え具合を探ってきました。
前回記事:【聞いた】サブウェイがTikTokに取り組む理由

回復に苦しむ外食業界
回転寿司チェーンは絶好調

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参照:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p220502.html

コロナ禍でも焼肉やファストフードと並んで、売上が好調だった回転寿司業界。2022年5月に帝国データバンクが調査分析した内容によると、くら寿司やスシローなど大手を中心とした回転寿司市場は、2011年度の4,636億円から10年で1.6倍の規模に拡大しているとのこと。

日頃から回転寿司店へ行く方にとっては納得感ある動向ですよね。土日に回転寿司チェーンへ行くと、以前にも増して待ち合いスペースから人があふれて、駐車場の車の中でもたくさんの人が待つ混雑っぷりです。

飲み会や外で食事をする機会が減ったこの2年。頻度は減ったが、家族で行くたまの食事はいつもより特別な時間にしたい。ファミリー層ではこういった心理が働き、回転寿司や焼肉が盛り上がったのかなと個人的には感じています。

回転寿司チェーンが
個食や若者に焦点を合わせる理由は?

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2021年12月を少し振り返ると、さっぱり落ち着く気配を見せないコロナ環境下にありました。外食業界の売上不調の報道が多い中で、くら寿司がフラッグシップストアとして、原宿に出店するとのニュースは、回転寿司業界の勢いを代弁するかのようなニュースで驚きました。

原宿にお店を出すことよりも、そのコンセプトがすごい。「世界一映える寿司店」としてZ世代の誘引を狙い、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが参画したお店なのです。
回転寿司といえば、幹線道路沿いに広い駐車場を持ち、ファミリー層を狙う立地戦略のイメージが強いですが、実のところ、ここ5年ほどで各チェーンは都心の駅前出店を増やしていました。店舗賃料が高く、ファミリー使いが多くない駅前に出店する理由はなぜでしょうか。


売上を増やし続けるには、店舗数を増やすか、新規来店客を増やすか、既存客の頻度を増やすか、単価を上げるか、大きく分けるとこの4つがあります。

人口が減り、個食が増える中で、郊外エリアでの新規客増や頻度増は狙いにくい。結果、駅前に出店してランチタイムや一人使いを増やし、回転寿司を「ハレ」でも「ケ」でも利用する場にしてもらうことが狙いだと思います。週末の家族との食事、平日の仕事の合間のランチ、お持ち帰りでお土産に。利用動機を増やせば、購入頻度を増やせる余白ができますね。

また、点ではなく線でお客さまと繋がるのは、ファミレスなど他の業態でもおこなわれている戦略です。子供や10代から20代前半の間に良いブランド体験をしてもらえれば、いつか父親、母親になった時に子供連れで来る場所として選んでもらいやすくなるものです。

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という背景を踏まえたZ世代向けの戦略店舗は、入口を入ってすぐにカラフルに光る提灯ウォールがお出迎えをしてくれます。Z世代が喜ぶ要素は何かと考えた時に、寿司ネタでも安さでもなく、体験を重視したのが「すばらしいなぁ」と勝手に感心してしまいました。

原宿店限定
スイーツ屋台でクレープ

「いやいや映えはわかるけど、あくまでもくら寿司でしょ?」と心のどこかで思っていましたが、いざお店に足を踏み入れると、そんな中途半端なものではありませんでした。
お店の中央にはスイーツ屋台と呼ばれるブースがあり、そこでは色鮮やかなスイーツを提供してくれます。

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原宿ゆえにクレープ。しっかりくら寿司のオリジナリティも掛け合わされており、ツナサラダやイベリコ豚のsushiクレープやしっかりスイーツなマンゴーWクリームやいちごWク
リームが用意されています。

クレープの生地は自動クレープ機が焼き上げていて、その様子を目の前で眺めたり、もちろん動画を撮影することも可能です。クレープ生地は、ピンクと黄色の目を引く色味を使い、自動で焼くロボットを使うことで、クレープ店などでも見られるクレープを焼く工程も特別なシーンに。

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sushiクレープには中にお米も入っているのでライトミール感覚でも食べられて、クレープだけのお持ち帰りも受けているのだとか。

スタッフの姿が見当たらない
省人化、非接触を実現

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今回はEPARKで事前予約して訪問。お店に到着してチェックインをすれば、間もなく呼ばれるという仕組みです。ここにもスタッフはいませんが、デジタルネイティブのZ世代が客層の中心なこともあり、やり方に戸惑っている人は見かけませんでした。

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sushiクレープはお持ち帰りも可能で、入店の列に並ばなくともスイーツテイクアウト専門のレジで注文すれば、待たずに注文、会計ができる仕組みが用意されています。

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客席は写真のようにボックス席とカウンターの2タイプがあり、245席が用意されています。原宿駅から徒歩圏内という好立地を守りながら、広いスペースを贅沢に使っていて、窮屈感が一切ありません。そこが他の回転寿司店と大きな違いだと感じました。
ボックス席はちょっとした半個室で、外からは顔が見えにくい作りになっています。食べるだけでなくおしゃべりに夢中になりやすい工夫も、Z世代には評価が高そうです。

この連載でお店に行くたびに、毎度オペレーションが気になってしまうのですが、今回も店員さんの動きが気になってキョロキョロしていました。しかしスタッフが見当たらない。先ほど紹介した屋台に常時1人いてクレープを作っている以外は、テーブルを片づけることのみがフロア業務の模様。ビールやラーメンもオーダーレーンから流れてくるので、ここでもスタッフの登場はありません。

厨房には他にもいるのでしょうが、フロアスタッフは常時1~2人いれば十分に回転できそう。すごい生産性です。

いきなりですがクイズです。下の画像、どこかわかりますか?

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…そうです。注文したお寿司が流れてくるレーンですね。ゴムバンドのようなタイプで、他の店舗と違ってとても長い。初めに見た時は、1本のレーンでこれだけの席数がカバーできるかと疑問に思いました。一般的なくら寿司では5〜6卓ごとに1本のお届けレーンがあった記憶があり、運びきれるのかな…と。

平日19時頃には、他店でみられるようなたくさんのお寿司がレーンで届けられる様子が全くありません。一方で通常のレーン(自由に皿を取ってよいレーン)にはたくさんのお寿司が流れているので、多くのお客さんは端末から頼まずに流れているものから取っているのかも知れません。

週末の郊外のくら寿司ではレーンに流れている皿は誰も取らず、こぞって端末から頼んでいる印象だったので、その違いに驚きました。これも、客層の違いによるものでしょうか。
「世代ごとのレーンから流れているお寿司と取る率」みたいな数字があれば知りたいです。

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チェーン店によって、オペレーションの違いが大きいのはお会計。お皿の枚数や金額をどう管理するかが回転寿司チェーンの肝になりそうです。くら寿司は、食べ終わった皿はテーブル横の投入口に入れるシステムで、ここで枚数を管理しています。お寿司の金額設定は皿の倍数に合わせているのも計算しやすい工夫。皿以外のもの、茶碗蒸しやビールはオーダー端末で管理されており、最終的にそれらが合算される仕組みでした。

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お会計の札をもってレジへ向かいますが、そこにもスタッフの姿はありませんでした。クレジットカードやQR決済、現金が使えるいわゆるセルフレジです。結局、スタッフと接点があったのはクレープを作ってもらった屋台だけ。これだけ省人化できていれば、人件費率をかなり抑えられていますよね。

原宿店のならではのメニューも

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原宿店限定の商品はクレープだけではありません。クランチロール、レッドドラゴンロール、えびタイガーロール、道頓堀たこ焼きロールもここだけで食べられます。
レッドドラゴンロールはまぐろと天かすですし飯を包んだ巻き寿司。高さと彩りの工夫から映えの意識を感じます。

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料理以外にも工夫が。自由に出入りできるテラス席があるのです。クレープを買って外で食べたり、食事中のひとやすみにも。4階からでも美しい夜景が広がっています。
グループから抜け出してちょっと秘密の話をしたり、街並みをバッグに自撮りをしたり。ロストジェネレーション世代の私でもわくわくする場所です。

チェーン店の強みを活かした価値の提供とは

モノ消費からコト消費へ変化していると言われて久しいですが、回転寿司チェーンでのコト消費を見た気がします。各チェーンは、お寿司以外にもポテトなどのライトミールやコーヒーなどを用意して、カフェ使いを訴求していますが、原宿店はまさにその集大成。

半個室はポイントが高いです。私も友人と一緒に行きましたが周りの声も気にならないし、カフェや居酒屋のオープンスペースとは没入感が全く違いました。

キョロキョロしながら各テーブルをチラ見しましたが、お寿司をガシガシ食べているグループはかなり少なかったです。ごはん時にも関わらず、です。ちょこっと食べながら、友人とのおしゃべりの場として使われているようです。

そう、「回転寿司店でおしゃべり」ではなくて「お寿司が食べられるお店でおしゃべり」なのだろうなと。学校帰りと思しき高校生、大学生の姿も多く見受けられました。食べるよりも話せる場所として選ばれる。特に回転寿司は量をコントロールしやすく、お財布事情やお腹の空き具合に合わせて食べられる、のも選ばれる理由の一つですね。

空腹でたくさん食べたい人も、お寿司2貫だけ軽く食べたい人も、クレープだけの人も、みんなが気兼ねなく集える場所でした。

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くら寿司 原宿店
▶︎https://www.kurasushi.co.jp/harajyuku/

東京都渋谷区神宮前4-31-10
ワイ・エム・スクウェア原宿4F
営業時間:11時から23時

※商品や価格、店舗情報は2022年6月時点の情報です。

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著者情報

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よしだけいすけ
2020年5月よりカラビナハート株式会社に入社。10社ほどの企業SNSアカウントのコンサル・運用支援を行っている。公式アカウントのフォロワー増や投稿のノウハウだけではなく、目的に合わせた目標設計やビジネス貢献の可視化、再現性ある仕組み作り、SNS担当者のトレーニングが得意領域。2020年4月までは株式会社すかいらーくHDのマーケティング本部にてコンテンツコミュニケーションチームのリーダー。7つの公式Twitterアカウントを立ち上げて合計210万フォロワーに。広告宣伝のほかアプリ、メルマガ、公式サイト、ファン施策、ポイントプログラムなどを担当した。店舗勤務含めて15年間在籍。
Twitter:https://twitter.com/ruiji_31
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