【世界の台所から】インドネシア・スラウェシ島で学んだ「自家製ココナッツオイル」の作り方

【世界の台所から】インドネシア・スラウェシ島で学んだ「自家製ココナッツオイル」の作り方

世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんのレポートから、世界各地の家庭料理を通じて、さまざまな食の文化と歴史、それぞれの暮らしを感じることができます。
※毎日の食卓を楽しくする「料理の知恵」メディア【クックパッドニュース】より

香りが素晴らしい「ココナッツオイル」。インドネシアのスラウェシ島で教わった作り方と、決して買うことのできないやみつき副産物のおいしい楽しみ方を紹介します。

実は簡単!手作りココナッツオイルとフン
https://cookpad.com/recipe/5298747

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「ココナッツオイルのフン」のサンバル
https://cookpad.com/recipe/5292803

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スラウェシ島って?

赤道直下にある島で、一年中夏のような熱帯気候です。私の滞在した山間の村では、カカオ豆・コーヒー・コショウなどのさまざまな熱帯作物が畑で栽培されており、世界中に売られていきます。農業は島の経済を支える基幹産業です。

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家の回りに実るパパイヤ・バナナ・パッションフルーツなどの熱帯フルーツは、子どもたちのおやつ。散歩をしては、手を伸ばして甘い果実にかじりつきます。この土地の暮らしは、稼ぐのも食べるのも、熱帯の恵みに支えられています。

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そんなスラウェシ島の家庭に滞在し、毎日の食事を一緒に作っていたのですが、一番びっくりして印象的だったのが「ココナッツオイル」でした。

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この家庭でふだん料理に使うのは、市販の安価なパーム油。インドネシアは世界一のパーム油生産国であり、パーム油は日本の「サラダ油」に相当する必須アイテムです。
しかしたまに、香りがほしい時や少し特別な時、ココナッツオイルが登場します。瓶を開けるとふわっと花のような香りが広がり、なめるとほんのり甘い味。この油で揚げたバナナはいくらでも食べ続けたいおいしさです。

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この家庭で一番最初にココナッツオイルを口にした時、自分が知っているココナッツオイルとまったく別次元の味と香りに感動し、聞いたら自家製だとのこと。どうやって作るのか見せてもらいました。

まずはココナッツを割るところから!

ココナッツオイルは、ココナッツの実から作ります。
まず、家の裏からとってきたココナッツの実5個を斧で割ります。たわしのような繊維質の外殻部分を剥ぎ取り、内殻部分を適当な大きさに割ります。

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十分に歳とったココナッツの中には「ココナッツの赤ちゃん(胚芽)」がいるのですが、これはお手伝いした子供だけが食べられる特別なおやつ。ふわふわシャキシャキして甘くて、不思議な感じです。

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次はすりおろし

割り分けたココナッツの内殻は、おろし金ですりおろします。おろし金は、金属板に引っ掻いた小さなとげとげがある程度で、おろす効率は決して良くありません。お母さんは、力を入れて1〜2時間もかけてココナッツをすりおろし終えました。ココナッツを斧で割るだけで結構な力仕事なのに、追い打ちをかけるようにこのすりおろし作業。オイルになりそうな液体すらまだ見えていないのに、すでになかなかな重労働です。

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搾ると見慣れた液体が...

そこに水を注いで搾ると、ミルクのような白い液体が出てきます。これがじつは、ココナッツミルク。あの白い液体は、ココナッツを割ったり切ったりして出てくるものではなく、こんなに手間のかかったものだったのですね。

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ようやくオイル作りのスタートライン

水に入れて搾るのを3回繰り返したら、出てきたミルクを鍋に入れて火にかけます。ここからは根気の作業。焦げ付かないよう時折まぜながら、とにかくひたすら煮詰めて水分を飛ばします。

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加熱を続けると…

ずっと加熱をしていると、最初は白かった液体が徐々に透明の液体とアクのような固形分に分離してきます。

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あたりはよい香りに包まれ、2時間ほど経つと固形分もまとまってきて、濾すと透明のココナッツオイルが完成します。

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副産物の 「フン」の美味しさに感動!

できたてのココナッツオイルも素晴らしいのですが、さらに素敵な副産物があり、それが濾して残った土のような茶色い固形物。その見た目と性質から、「ココナッツオイルのフン (タイミニャ, Tahi minyak)」とよばれます。

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そのままつまんで食べると、香ばしさに手が止まらなくなるやみつきおやつ。唐辛子などとあわせて炒めると、ごはんが止まらない絶品おかず!オイルよりもむしろ「フン」に魅了され、このためにもう一度作ろうかと思うくらいでした

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買えないおいしさのために手作りする

ココナッツオイル作りにかかった時間は丸一日、できたオイルはたった200mlほど。力も時間もかかり、まったく効率の良い作業ではありません。それでもどうしてココナッツオイルを作るのかとお母さんに尋ねたら、たった一言「おいしいから」。
この言葉には、ココナッツオイルだけでなく「フン」のことも含まれます。ココナッツオイルはお金を出せば買えても、副産物であるフンは捨てられてしまい市場に出ません
実の中の「ココナッツの赤ちゃん」にしても「フン」にしても、大規模生産では効率性の論理で捨てられてしまう"少しずつの小さなおいしさ"を楽しめることが、手作りの真価なのかもしれません。

日本でも簡単に体験!

とはいえまるごとのココナッツの実を買って来て斧で割るのは大変。しかしココナッツミルクを買ってきたら、日本でも簡単に作れます!

実は簡単!手作りココナッツオイルとフン
https://cookpad.com/recipe/5298747

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ココナッツオイルが手作りできることにびっくりし、「フン」のおいしさにもう一度びっくり。普段からすべてを手作りすることはできないけれど、手作りでしか味わえない特別な味を、ぜひ一度体験してみませんか?



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著者情報

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岡根谷実里
台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。2014年クックパッド入社。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
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