ホクレン北海道こめ油が機能性表示食品に。潜在価値の発掘からリブランディング

ホクレン北海道こめ油が機能性表示食品に。潜在価値の発掘からリブランディング

生活者の健康意識が高まる中、「米油」の市場規模が拡大しています。そうした中、ホクレン農業協同組合連合会が販売する「北海道こめ油」が、米油では国内初となる機能性表示食品を取得。健康視点での商品リニューアルについて、ホクレン農業協同組合連合会の入宇田(いりうだ)氏にお話をうかがいました。



お話をうかがった方

ホクレン農業協同組合連合会
パールライス部 パールライス販売課

主幹 入宇田 哲史様

健康・美容意識から米油の需要増

米油は、玄米に含まれる米糠を原料として精製した油です。米油は酸化しにくいことから、揚げ物などで繰り返し油を使用した際も油の劣化が少なく経済的。揚げ物のカリカリ、カラッとした食感を生み出す「リノール酸」と、「オレイン酸」がバランス良く含まれ、素材の風味と食感を引き立ててくれる特長を持ちます。

さらに、米油にはビタミンEや抗酸化成分などの栄養素が豊富に含まれることから、健康や美容への意識が高い生活者から注目を集めています。

14625_image01.jpg【算出基礎】
*総務省家計調査>2020年食品>「食油油」総世帯支出:3,453円・・・A *総務省住民基本台帳世帯数(2020年1月1日現在):59,071,519世帯・・・B *「食用油」市場規模推計:A×B=203,973,955千円・・・C
*「こめ油」市場規模:C×4.7%=96億円*油種別構成比・・・KSP-POS(全国1,016店舗)より推計
【こめ油:4.7% (サラダ油43%、オリーブオイル28%、ごま油17%、アマニ油他7%)】
*「こめ油」市場規模:C×4.7%=96億円*道内市場規模=全国市場規模×4.7%(全国に占める北海道世帯数の割合:総務省住民基本台帳)

資料提供:ホクレン農業協同組合連合会

ーー 米油はクックパッドでも2019年以降、急速に検索頻度が伸びているキーワードです。米油全体の市場規模も拡大しているのでしょうか?

入宇田氏(以下、入宇田):米油の市場規模は、2016年の44.7億円から2021年の96億円へと成長の一途をたどっています。
「ホクレン北海道こめ油」の出荷実績もコロナ禍以降増えています。2020年は緊急事態宣言などにより、自宅で過ごす人が増えました。それにともない米油の出荷実績は大きく伸長。2021年は外食機会の増加でやや減少しましたが、その後順調に伸びています。14625_image02.jpg

クックパッドでも2015年から検索頻度が上昇し、2020年以降伸び率がより高くなっている。


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クックパッドでは、「米油」の組み合わせ検索で、「クッキー」「米粉」「パウンドケーキ」などのキーワードが上位に。クックパッドユーザーは、米粉のお菓子を作る際に米油を利用するケースが多いようです。お菓子作りに使用するバターやサラダ油の代用としての、米油使用がうかがえます。また、アヒージョやドレッシングなどのキーワードも見られます。

ーー 近年、米油や米粉など米由来の食材への生活者ニーズが高まっている印象ですが、どのように考察されていますか?

入宇田:食物アレルギーの方からのニーズも考えられますし、グルテンフリーへの注目も高まっています。そうした観点から、米油や米粉を選択する人が増えているのかもしれません。

潜在価値を機能性表示という付加価値へ。
ユーザーの声を生かしたリニューアル

米油の市場規模が拡大していく中、ホクレンの「北海道こめ油」は、米油では国内初となる機能性表示食品を取得しました。機能性表示成分のγ-オリザノールは米由来の成分。米油の潜在価値に着目したことにより、「北海道産」ブランドに新たな強みが加わりました。パッケージも含めたリニューアルには、生活者の声も取り入れながら実施されたと言います。

ーー 「北海道こめ油」のリニューアルにあたり、機能性表示としてγ-オリザノールに着目されたのはどのような背景があったのでしょうか?

入宇田:リニューアル前の「北海道こめ油」は、ビタミンEで栄養機能性表示食品を取得していました。「北海道こめ油」の機能性表示申請に先立ち、他社の玄米商品が2021年にγ-オリザノールという、米由来の成分で機能性表示食品※として、消費者庁に初めて受理されたという事例が上がってきたのです。

米由来の成分であれば、当然、米油の中にもγ-オリザノールは含まれます。先行事例を受けて、「北海道こめ油」も栄養機能食品から一つ上のグレードの機能性表示食品の取得を目指し、とりすすめをおこなってきました。

“北海道産”という形で原材料の産地を指定した展開は、そもそも圧倒的な強みでした。そこに、米油としては「国内初の機能性表示食品」という大きな付加価値が加わりました。商品価値を高められるタイミングで、パッケージも同時にリニューアルしました。

※機能性表示食品とは、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品のこと。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
【ホクレン北海道こめ油の届出表示】
本品には血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能が報告されている成分を含みます。
機能性関与成分 γ-オリザノール22,3mg

ーー 機能性表示食品取得にともないパッケージもリニューアルされたとのことですが、意識された点はありますか?

入宇田:今回のリニューアルに際しては、付加価値・価格帯に見合った高級感のあるパッケージを目指しました。事前に生活者への調査も実施。デザイン案が何種類かありましたので実際に見ていただき、「どんなパッケージだったらスーパーで手に取りやすいか?」などの意見をうかがいました。生活者の感覚を大事にしながら、販売者として伝えたいことも表現しつつ、デザイン案を固めていきました。

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入宇田:実は、米油に関するアンケート結果をもとに、TVCMのカットも変更したんです。米油には抗酸化成分が含まれており劣化しにくい性質から、何度も使いまわせるという特長があります。そうした性質から、揚げ物に利用する方が多いと想定していたのですが、炒め物に使ってる方が圧倒的に多くて。
もともとTVCMは、天ぷらのカットを予定していましたが、調査結果を受け炒め物のカットに変更しました。

ーー ユーザーの声をマーケティング戦略に生かしていったのですね。
今回の北海道こめ油リニューアルに際してのプレスリリースでは、「米油のユーザーは健康意識が高い」との記載がありましたが、意識調査などをおこなったのでしょうか?

入宇田:リニューアルにあたって、北海道の主婦をメインにしたアンケートを2021年に実施しました。家庭で常備している油の種類や、こめ油を使用するメニューについてなど、油に関する設問を用意。こめ油を使う理由に関する設問では、「健康に良いから(59%)」「コレステロールの低下作用があるから(20.3%)」という回答が得られ、健康意識が高いことが見えてきたのです。

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資料提供:ホクレン農業協同組合連合会

ーー 約60%の方がこめ油について「健康にいい油」という理由でこめ油を選択しているのですね。国内製造、国産原料というのも、購入の際に重視するポイントというのが、アンケート結果からうかがえます。
こめ油の原料となる米糠は、精米時のものを使用するなど、アップサイクル的な観点もあるのでしょうか。

入宇田:ホクレンのパールライス工場で、玄米を精米する際に出る米糠を使用しています。北海道産の米糠から米油を製造し、生活者の方にお届けするという、循環型の商品設計になっていますね。

米油市場は今後も拡大。価値ある商品を生活者へ

米のもつ潜在価値を発掘し、生活者のニーズを汲み取りながらおこなわれた「北海道こめ油」のリニューアル。今後も成長が見込まれる米油市場で、ホクレンはどのような展開を構想しているのでしょうか。

ーー 今後構想されていることはありますか。

入宇田:本業である精米事業のほかに、米関連の加工食品で「簡便、時短、健康」といったキーワードで商品開発をしていきたいです。

健康志向の需要が高まる中で、サラダ油からの代替品として真っ先に手に取っていただけるのが米油になるのではと考えています。
ホクレンは、油専門のメーカーではありませんから、「北海道」という強みを生かしながら他社と異なる領域に商品を投じていく必要があります。米油全体の市場規模拡大にともなって、「北海道こめ油」も需要を増やしていけたらと思います。

油は日本に限らず世界各国で使用するもの。海外にむけて発信し、販売拡大につなげていきたいですね。

生活者の健康意識の高まりや食嗜好の多様化を受け、新たな健康習慣として、今後も米油の市場規模は拡大が見込まれます。



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