【行った】ワタミの脱アルコール戦線。世界2,500店の「bb.qオリーブチキン」初上陸の裏側

【行った】ワタミの脱アルコール戦線。世界2,500店の「bb.qオリーブチキン」初上陸の裏側

「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」はシリーズ13回目を迎えました。韓国発祥で世界25か国で2,500店を展開するチキン専門店「bb.qオリーブチキンカフェ」が日本でも出店が続き24店となりました。一過性のブームではなく、すっかり人気が定着したチキン市場において何が評価され、どう伸ばしていくのか。実際に店舗に行き、日本でのFR展開を運営するワタミ株式会社の事業本部長にお話を聞いてきました。
前回記事:【レポ】スターバックスの“モバイルオーダー比率”が低い意外な理由とは?



お話をうかがった方

ワタミ株式会社
bb.qオリーブチキン事業本部 本部長
小副川裕久 さん

まずは実体験!
吉祥寺店でオリーブチキンをいただく

フライドチキンやから揚げは、冷めても美味しいヘルシーな食べ物として老若男女に愛されてきました。これまでも何度もブームが起き、その度に「第〇次から揚げブーム」などとメディアでは騒がれますが、もはや一過性のものではありません。コンビニでも当たり前に販売され、から揚げ専門店もたくさん見かけるようになりました。特にコロナ環境の中では、行動制限により外食がしにくくなった結果、家で油を使って調理するのは手間がかかるけど、美味しくて低価格で買えるものとしてチキン料理の人気が高まっていったように感じます。

前置きが長くなりましたが、bb.qオリーブチキンは全国に24店舗、東京には9店舗が営業をしていますが、今日は吉祥寺店にお邪魔してきました。吉祥寺駅の北口を出て、吉祥寺サンロードを歩いて8分ほどです。

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外観はいわゆるチェーンのファストフードと差はなさそうです。入口に入らずとも、ポスターなどでしっかりメニューが掲示されているので入ろうかどうかを決めやすいのが嬉しいですね。ただ、ここに来るまでにモスバーガーとロイヤルグループが運営するLucky Rocky Chickenがあって、チキン競争が激しいエリアと驚きました。

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店内に入ってすぐにオーダーマシンがお出迎え。大きなタッチパネルで注文を選びます。季節限定商品らしい「麻辣ホットチキン」に惹かれましたが、今日は初めてのお店なので定番を…とチキンバーガー、オリーブチキン、生絞りレモネードを選びました。

最近の飲食店はオーダーや会計なども非接触、デジタル化が進んでいて店員さんと会話をせずとも注文、会計が進んでいきます。決済は現金の他にクレジットカードやQR決済など、各種キャッシュレス決済も準備されています。

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席は2階にありました。テーブル席とカウンターを合わせて20席ほどでしょうか。決して広くはないですが、無理に席数を増やさずに1席ずつにスペースが保たれています。ピークタイムの回転率を考えると、ついつい「もっとイス増やせばいいのに」と思ってしまいますが、後ほど小副川さんのお話を聞いて納得しました。

平日のランチタイムで半分ほど席がうまっています。私以外は全て女性。おひとりの方が多いです。店内のデザインや装飾も女性を意識した印象で、Wi-Fiや電源も整っているのでランチやカフェの合間に仕事をするにも使えそうです。

油っぽさを感じさせないサクサクなチキン

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フライドチキンを扱う飲食店でよく課題になるのが、油の管理。酸化具合によって仕上がりが全く異なるので、チキンのチェーンやコンビニで「店舗によって味が違う」と言われる所以でもあります。

オリーブチキンさんのチキンは全体的に白っぽく、一般的なフライドチキンよりも外側がサクサクでした。このあたりのこだわりポイントは後ほど質問したいと思いますが、女性客が多いのも納得です。揚げ物のイメージとして持っている「がっつりな食べ応え」をしっかり裏切ってくれて、むしろあっさりと言っても過言ではない食べ応え。くどくなく、油の質の高さを感じました。

事業本部 本部長に聞く
新業態の狙い

ーー日本で「bb.qオリーブチキン」ブランドを始めた狙いは何ですか?

韓国でワタミを展開しているのが「GENESIS(ジェネシス)」で、彼らが世界に「bb.qオリーブチキン」を拡げていました。日本ではうまくいっていなかったようで、日本で運営してくれないかとお声かけをいただいた形です。ちょうど私たちワタミは脱アルコールの路線を狙っていたのでチャレンジすることを決めました。
女性の利用が高いブランドであり、どんどん高まっていく女性の社会進出を食でサポートできる部分も魅力的に感じました。

ーーから揚げやコンビニのチキンなど、チキン全体の流行を感じます。なぜチキンの流行が起きていると感じていますか?

他の肉よりも原価が安いので、結果的に価格も安く抑えられることと、ヘルシー志向ともマッチしていると思います。また、宗教上でも食べられる人が多いのが特徴です。あまり知られていませんが、環境負荷の視点でも牛や豚と比較すると、鶏は1キロあたりのCO2排出量が一番低いと言われています。原価の部分は、近年どんどん上昇していて決して「安い」とも言えなくなってきています。

ーー油っぽさが少なくあっさり食べられました。チキンのこだわりを教えてください。

チェーン店のメリットは工場での加工で生産性を高められることですが、チキンはかなりの部分を店舗調理で行っています。スパイスをもみ込むなどマリネと呼んでいる味付けの重要な工程も店舗でしています。
気づいていただいた通り、油が品質を大きく左右します。スペイン・カタルーニャ地方の契約農家から買い付けたエキストラバージンオリーブオイルを使っています。コレステロール0のソイオイルと配合します。揚げた後に表面の食感のカリカリをしっかり残すための粉を使用しています。
店舗ごとに仕上がりがブレないように、油の管理のマニュアルはかなり細かく定めています。

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フライドチキンのこれから
店舗数は増やす?

ーーチキンは食事だけでなく幅広い動機で食べられる食材だと思います。利用シーンを拡げるために工夫されていることがあれば教えてください。

個で使うランチ需要用と複数利用で召し上がっていただける商品の2軸で用意しています。

ーー店内飲食、テイクアウト、宅配はどれくらいの比率ですか?今後増やしていきたい領域は特にどれでしょうか?理由と合わせて知りたいです。

店内、テイクアウト、宅配の比率は3対5対2ほどです。店舗の立地によっても大きく異なります。今後はドライブスルーモデルや店内飲食スペースをもたないパターンも検討しています。ただ、今はカフェタイプを中心に展開しているので、店内で過ごすことを大切にしたいです。場所は飲食店にとっては一番のブランド体験。料理が美味しいだけでなく、過ごしやすい空間も提供しています。

ーーコロナ環境下でも店舗数を拡大されています。近隣に出店を待っているファンも多いと思いますが、教えていただける範囲で今後の出店構想を教えてください。

9/9に大阪に1店舗オープンしたばかりですが、ありがたいことに地方からの出店リクエストが多いです。ただ、増やしていきたいとは思いつつ、業態の難易度が高くて、これまでの居酒屋などでの業態経験が活かしきれないのも正直なところです。
アルコール業態と違うことは、商品提供のスピードですね。また、居酒屋と比較するとお客様との接点が少なくて会話やおすすめのタイミングがないことが特に違います。
「ファストカジュアル(ファストフードとレストランの中間で、早い提供時間を守りながら作りたてなどの付加価値を提供する飲食店の業態)」というポジショニングを掲げています。フレッシュネスバーガーさん、モスバーガーさんに近いです。提供時間は8割の商品を5分以内に提供することを目標として掲げています。ただソースチキンなど一部の商品はオーダーごとに揚げる必要があり5分では提供しない商品も用意しています。

ーー事業を拡大する中で、最も苦労したこと、大変だったことを教えてください

1~2店舗から始まって、オペレーションの整備、マニュアル化が特に大変でした。出来るだけ店舗で調理した方が品質は高いのですが、多店舗化においては簡素化が絶対に必要でした。今でも店内調理は多いですが、今後は自動化など事業としてサプライチェーンを強くしていきたいと考えています。

ーーTwitterでは積極的にコミュニケーションを行ったりもされています。力を入れているプロモーションは何でしょうか?

短期的な売上になるかはわからないですが、オンライン上で感じていただくブランド価値もあるので、引き続きSNSには力を入れていきたいと考えています。LINEの公式アカウント活用も始まりました。Instagram専用の撮影などを始めたりしつつ、店舗での体験同様に双方向のコミュニケーションを大切にしていきます。

ーー小副川さんが個人的にいま、食べて欲しいおすすめ商品があれば教えてください。

マーラーチキン&ピーチラッシュです。季節限定のため、2022年10月3日までの限定販売ですが機会があればぜひ。辛いものがお好きならヒーヒー言いながら食べられる。得意な方はトッピングで特製ソースも試して欲しいです。ハバネロの5倍の辛さと言われています。飛びます!笑
10月4日からはハロウィーントリートチキンが始まります。これも自信作です。メープルバターガーリックの味…そうですね、例えていうならテーマパークの風味です。

小副川さん、ありがとうございました。

飲食店の価値は「食べる」「過ごす」
料理だけでなく場所にもこだわる

食肉の消費量が気になって調べてみました。最新のデータが見つからず2016年時点のものですが、このあたりで鶏肉が豚肉を上回っていました。牛肉は横這い、豚と鶏が共に増やしながら伸びている印象です。特に2005年以降の鶏肉消費量の伸び方が大きいですね。

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参照:https://www.nippon.com/ja/features/h00223/

飲食店という事業の面白いところは、プロダクトが料理だけではなく体験する場所も含まれるということ。テイクアウトや宅配需要も高まりがある中でも、店舗で食べる時間を大切にして、提供時間が計算され、そのための調理工程が作られ、サプライチェーンを設計していきます。小副川さんのお話を聞きながら、パーツではなく、全体での視点が大切だと改めて感じました。

帰り際、ブランドのスタンスが垣間見えた部分を紹介して終わりにします。ゴミの仕分けコーナーには他の飲食店では見かけたことがない仕分け方法が。プラスチックカップを重ねて捨ててもらう工夫ですね。1個1個捨てるとゴミ袋があっという間にいっぱいになるけれど、みんなで協力して重ねれば圧縮できますよね。

【店舗情報】
店  名:bb.qオリーブチキン 吉祥寺北口店
住  所:東京都武蔵野市吉祥寺東町1-5-25
営業時間:10:00〜22:00


その他の店舗情報はこちら
https://bbq-olivechickencafe.jp/shop/

※2022年9月の取材時点での情報です。



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著者情報

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よしだけいすけ
2020年5月よりカラビナハート株式会社に入社。10社ほどの企業SNSアカウントのコンサル・運用支援を行っている。公式アカウントのフォロワー増や投稿のノウハウだけではなく、目的に合わせた目標設計やビジネス貢献の可視化、再現性ある仕組み作り、SNS担当者のトレーニングが得意領域。2020年4月までは株式会社すかいらーくHDのマーケティング本部にてコンテンツコミュニケーションチームのリーダー。7つの公式Twitterアカウントを立ち上げて合計210万フォロワーに。広告宣伝のほかアプリ、メルマガ、公式サイト、ファン施策、ポイントプログラムなどを担当した。店舗勤務含めて15年間在籍。
Twitter:https://twitter.com/ruiji_31
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