
食トレンド
“プラズマ乳酸菌”はなぜ売れる!?機能性表示食品マーケティングの戦略ポイントを考える
SNSなどで話題の「マーケティングトレース」をご存知ですか? 基本のフレームワークを使いながら成功事例を分析し、マーケティング思考を鍛える方法です。今回は、考案者の黒澤友貴さんにブランド戦略を読み解くシートを使って、「プラズマ乳酸菌」製品を読み解いていただきました。
※前回記事はこちら:https://foodclip.cookpad.com/14430/
ビールや飲料などを提供する大手食品メーカーから相次いで商品が開発されている乳酸菌飲料。店頭や記事などで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、中でも早期に「免疫」機能を付加価値として開発に着手されていたキリンホールディングスのiMUSEを中心に、「プラズマ乳酸菌」製品について説明します。
現在までに一体どのくらい売れているのでしょうか?
公開されている販売数量実績データを確認すると、プラズマ乳酸菌カテゴリーは、2021年に166%成長していることがわかります。他のカテゴリーと比較するとダントツですね。
さらに、キリンホールディングスの事業方針を確認すると、プラズマ乳酸菌のカテゴリーは、「7年で5倍成長」を目指すとのことです。
「プラズマ乳酸菌はキリンHDの機能性素材で、健康な人の免疫維持を助けるとされる。免疫分野で初めて2020年に消費者庁に機能性表示食品の届け出が受理された(参照1.2)。キリンHDはすでに森永製菓 やカンロ、大正製薬などにプラズマ乳酸菌を外販しており、20年に約100億円だった関連商品の売り上げを27年には500億円に引き上げる計画だ。」
キリンホールディングスの長期経営構想 キリングループ・ビジョン2027(KV2027)を確認すると、「ヘルスサイエンス領域」に注力する方針詳細を確認することができます。
「食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵&バイオテクノロジーに磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を活用し、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成していきます。」
引用元:キリンホールディングス 長期経営構想 キリングループ・ビジョン2027(KV2027)
参照1:https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42206140671202
“プラズマ乳酸菌”のマーケティング戦略。成功のポイントは?
ここまでの情報で、”プラズマ乳酸菌”の事業領域が伸びており、さらに事業拡大の計画が立てられていることがわかりました。
では、プラズマ乳酸菌のマーケティングは何が成功ポイントとなっているのでしょうか?
筆者が分析する中で導き出した仮説を2つご紹介します。
①比較表現をつくる:今までのアプローチと何が異なるのかを示す
機能性表示食品を試す人は、今までも健康食品・サプリメントなどを試している可能性が高いです。そんな方々が気になるのは、「今までの同カテゴリー商品と何が違うの?」ということです。
プラズマ乳酸菌のCMやオウンドメディア内では、普通の乳酸菌との違いが明確に説明されていて、この表現づくりは学びになります。
「ふつうの乳酸菌は、免疫機能の一部にしか働きかけません。」
引用:プラズマ乳酸菌 免疫ケアガイドブックより引用
https://www.imuse-p.jp/plasma/pdf/guidebook.pdf
この比較表現があるだけで、どんな効果が期待できるのかわかりやすくなりますね。
市場・顧客に受け入れられているブランドは、比較表現の活用方法が上手なことが特徴だと考えています。
もう一つの例として、「ヤクルト1000」をご紹介します。
「ヤクルト史上最高密度の『乳酸菌シロタ株』」
引用:Yakult(ヤクルト)1000 / Y1000とは?
https://www.yakult.co.jp/yakult1000/
話題になっている「ヤクルト1000」も、過去のヤクルトとの違いを明確に示しています。
このように、
・今までの同カテゴリー商品と何が違うのか?
・その違いをわかりやすい対象を置いて表現すると?
この2つに答えてメッセージをつくることで、顧客に“伝わる”メッセージになります。
ポイント
比較対象をつくり、何が違うのかを明確に示す
②伝えるには比喩(メタファー)を使って理解・納得度を高める
2つ目は、ユーザーの記憶に残り、メディアも使いたくなるような「比喩(メタファー)表現」を使うことです。
例えば「iMUSE 朝の免疫ケア」は“プラズマ乳酸菌”は免疫の司令塔という比喩表現を使って、効果を説明しています。
“プラズマ乳酸菌”のSNS訴求・キャンペーンでも、 #免疫の司令塔 というハッシュタグが使われています。
また、キリンホールディングスと学研とのコラボコンテンツでは「免疫のひみつ」という漫画コンテンツが紹介されており、「免疫の司令塔」の喩え表現を活用しながら解説されています。
ポイント
独自の研究成果・技術を比喩(メタファー)を使って示す
比較+比喩、この2つの表現の結晶が、タモリさんと乳酸菌のCMです。
とても学びが多いので、ぜひ見てみてください。
“プラズマ乳酸菌”は、上記に示してきた通り「比較+比喩」を使って、「わかりやすく顧客に伝える工夫」をしていることがわかります。
キリンが培ってきた研究・調査結果を、顧客に伝わる表現に落とし込むことで、メディアや顧客が情報を広げやすい構造になっていると考えることができます。
まとめ
機能性表示食品は、どのブランドも「直接的な健康効果を表現」します。しかし、○○改善、○○効果の表現では、差別化につながりません。そこで、比較+比喩を活用して表現を研ぎ澄ますことが鍵になってくると考えています。
ここまでの機能性表示食品のマーケティングにおけるポイントをまとめます。
機能性表示食品のマーケティング戦略のポイントは、「ブランドが長年積み重ねてきた調査結果や技術資源」に「比較・比喩表現」をプラスすることで、“人の記憶に残る”ブランドになる。
原材料の高騰、円安の影響により、多くの商品が値上げが求められ、単に値上げをするだけでは、顧客は離れてしまうと懸念されている現状ですが、マーケティングに関わる人に求められるのは付加価値をつくって「伝える」ことであり、そのヒントになるキリンの“プラズマ乳酸菌”飲料に関する分析をご紹介してきました。
自社のマーケティング戦略を見直すために、少しでも参考にして頂けましたら嬉しいです。
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著者情報

- 黒澤友貴
- 1988年生まれ。ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室 室長。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに6,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ#マーケティングトレースを運営。2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」を出版
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