
食トレンド
テンペとは?納豆とは違うインドネシア発祥の大豆スーパーフードにブームの予感
納豆でもない、豆腐とも違う、お肉のような食べ応えの大豆発酵食品「テンペ」。インドネシアなど日常使いする地域だけでなく、代替肉として世界中のベジタリアンやヘルシー志向の人に注目されています。日本ではまだ広く流通していない食品ですが、日本人に馴染みのある味わいと栄養価の高さで人気に火がつきそうな予感。国産大豆でこだわりのテンペを企画・販売する株式会社hakko projectの高橋晴香氏にテンペについて教えていただきました。
お話をうかがったひと

株式会社hakko project
代表 高橋晴香 氏
ヘルシーかつ高タンパクで注目のテンペ。その味や食べ方は?
テンペとは、インドネシアで伝統的に食べられている大豆発酵食品。「大豆を発酵させる」というと納豆を思い浮かべますが、菌に違いがあり、テンペには納豆のような粘りや強い匂いはなく、クセがない淡泊な味わいです。
インドネシアではテンペがスーパーで手軽に買えるのはもちろん、家庭で手作りすることも。作り方は、乾燥大豆を水に浸し、皮を外して煮た後、テンペ菌を振りかけ、2日間ほどかけて発酵させます。
テンペ菌とは、バナナやハイビスカスの葉についている白カビの一種で、市場ではバナナの皮に包んだテンペが売られているのだとか。
大豆の粒をつなぐ白い部分はテンペ菌の菌糸。菌糸というと強い匂いがしそうですが、ナッツや栗のようなほのかに香ばしい香りです。大豆の粒がしっかり残っていて食べ応えがあり、粘りはなくホクホクとした食感。包丁でも素手でも扱いやすく、スライス、サイコロ、細かくつぶしてと好みの大きさに成形できます。
東南アジアで30年間暮らした高橋さんによると、「テンペはインドネシア料理には欠かせない食材で、健康食品というよりは、食卓に当たり前に並ぶ日常食。日本人にとっての豆腐や厚揚げといったイメージでしょうか」とのこと。
現地でのテンペの食べ方は、スライスして油で揚げたテンペをご飯やチキンと一緒にサンバルで味付けしたり、鶏肉のココナッツミルク煮に加えたり、唐辛子と一緒に炒めたりとさまざま。生食もできますが、揚げる・炒める・煮るなどの調理を加えることが一般的です。
ベジタリアンやヘルシー志向の人、宗教上の理由で肉を食べない人にとっては、肉の代わりの食材としてテンペを使うことも多いようです。
プラントベースフードの認知拡大に伴い、2023年はテンペブームの兆し
テンペの魅力はやはり、低カロリーでありながら、タンパク質や食物繊維、ビタミンなどが多く含まれる栄養価の高さ。発酵することで大豆の栄養価がさらに高まります。
実は十数年前、テンペは健康食品として一躍ブームになりました。クックパッドでのレシピ検索頻度をみてみると、2009年にはテンペを使ったレシピを検索する人が多くみられました。しかし数年でその傾向はなくなり、ブームが一過性だったことがうかがえます。
高橋さんによると「結局、スーパーなど身近な小売での流通量が少なく、馴染みがない食材という印象のままブームが過ぎ去ってしまったようです。食べ方がよくわからない変わった食材として、日々の食卓には定着しなかったみたいですね」とのこと。
hakko projectが販売するテンペを製造する工場も、もともと納豆とテンペをどちらも製造していましたが、テンペは食卓向けではなく、インドネシア料理店に卸すために細々と扱っていたといいます。
クックパッドのレシピ検索頻度は横ばいから2022年に上昇
しかし、ブームから十数年経った2022年、クックパッドでのレシピ検索頻度は上昇傾向です。理由としては、コロナ禍によって今まで以上にヘルシー志向が高まり、糖質を抑えながら高タンパクな食事を摂りたいという健康意識の高い人が、テンペに注目していることが考えられます。また、SDGsにつながる環境負荷の少ないプラントベースフードが、近年注目されるようになったことも大きく影響しているようです。
日本産テンペの発売に踏み切った理由
一時、影を潜めてしまったテンペですが、大豆ミートやアーモンドミルクといったプラントベースフード市場が拡大したいま、再び注目を集めています。2022年11月にhakko projectは、秋田県産大豆・リュウホウを使った国産テンペの「nattojanese(ナットージャネーゼ)」を発売しました。ユニークなネーミングは、「大豆発酵食品だけど納豆ではない」という意味を込めていて、テンペとあえていわないことで、馴染みのない食材への警戒心を解きたい狙いもあります。
代表の高橋さんはコロナ禍のマレーシアでテンペを販売し、その需要を実感したといいます。
「マレーシアはインドネシアのお隣ですが、テンペはまだメジャーな食品ではありませんでした。マレーシアがコロナでロックダウンのときに、テンペを作りご近所で販売したところ、予想以上に大好評だったのです」
健康意識が高いマレーシアの都心部の地区で、テンペがおいしいスーパーフードとして受け入れられたことに自信をつけて、日本に帰国するとともにテンペを企画・販売することに。
「苦労したのは製造工場を見つけることでした。大豆を発酵させる時の温度がポイントで、26℃以上の環境がマスト。インドネシアやマレーシアの気温は年間を通して23~33℃のため、特別な設備がなくてもテンペ作りができますが、四季のある日本では難しい。テンペと製造過程が似ている納豆の製造工場に声をかけては断られるなか、インドネシア料理店へ卸すテンペを約20年前から製造している納豆工場を見つけ、ODM生産ができることになりました」
材料は秋田県産大豆・リュウホウとテンペ菌、少量の米粉のみ。本場インドネシアのテンペより早い段階で発酵を止めることで、よりクセの少ない味に仕上がるといいます。
一番手軽な食べ方は、スライスして素揚げし、好きな調味料をつけること。中はほくっと、外はサクッとした食感で、煎り豆のような香ばしい風味と大豆本来の味がシンプルに味わえます。他にも和洋中のメインにも副菜にもなり、唐揚げに、ガパオ風に、ひじきの煮物に入れてと調理法は自由自在。揚げてシナモンシュガーをかけるとチュロス風、クランチのようにチョコレートに入れてスイーツにもアレンジできます。
日本人の味覚にも合うテンペ。今後の展開は?
hakko projectは、生食でも食べられるテンペの特徴を活かして、袋から取り出してそのまま食べられるように味付けをした商品を発売予定。ターゲットは筋肉をつけるために、高タンパクな食事を摂りたい男性がメイン。サラダチキンがヒットしているように、運動の前後に手軽に摂れる“筋肉飯”は今後ますますニーズが高まりそうです。常温で長期保存が可能なところもメリットといえます。
発酵中のタピオカ粉入りテンペ
ほかに、マレーシアで好評だった「テンペチップス」の販売も予定しています。作り方は途中までテンペと同様ですが、タピオカ粉を混ぜることでより固めの仕上がりに。筒状の袋で発酵させた後、スライスして揚げます。チップスの形ならばテンペに馴染みがない人にも受け入れられやすく、ポテトチップスよりも罪悪感なく食べられそうです。
納豆とは違いクセもなく、加工もしやすいテンペは、商品展開のさらなる可能性を感じさせる食材といえます。日本は発酵文化が根付いたお国柄。加えて、健康意識が高まっている時代の流れから、高タンパクで食物繊維の豊富な大豆発酵食品・テンペの期待値は高まるばかりです。
writing support: Ayu Ito
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