コンビニのテストマーケティングの変化から読み解く商品開発トレンド

コンビニのテストマーケティングの変化から読み解く商品開発トレンド

SNSなどで話題の「マーケティングトレース」をご存知ですか? 基本のフレームワークを使いながら成功事例を分析し、マーケティング思考を鍛える方法です。今回は、考案者の黒澤友貴さんに、コンビニのテストマーケティング手法の変化と今後の商品開発トレンドついて読み解いていただきました。
※前回記事はこちら:https://foodclip.cookpad.com/15651/

生活インフラとして根付いているコンビニエンスストア。

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の統計データによると、コンビニは日本全国に55,825店舗(2022年11月現在)存在しています。

店舗数が多く、各地域で生活の一部となっているコンビニは、食関連メーカーにとって重要な存在です。

コンビニの棚に商品が並べられるかによって、売上規模や顧客獲得効率が大きく変わってきます。

中でも、ファミリーマート、ローソン、セブン-イレブンの大手3社で、店舗数シェアは89.9%(2022年1月データ)となっており、食関連メーカーはこの大手3社のマーケティング方針を理解しておきたいところです。

今回は、「テストマーケティング」をテーマに、ローソンとファミリーマートの2022年度の特徴的な動きから、コンビニのテストマーケティング手法の変化や最新トレンドを読み解いていきます。

ローソンはテスト品の商品化をTwitterで決める

最初にローソンのテストマーケティング手法について解説していきます。

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あなたの推し商品に投票していただくことで、投票数上位1~3位の商品が後日ブラッシュアップ後、正式発売されます! ※ローソン公式サイトより引用

商品発売に合わせてローソンの公式Twitterアカウントにて人気投票を実施し、投票数が多かった上位3品を、2023年6月以降に正式販売するといったキャンペーンが実施されています。

テストマーケティングが実施されたのは下記の7品です。

1.味のしない?飴
2.スポーツドリンクテイストサワー
3.プロテinチューハイ
4.くらレモン
5.ポテトチップスガーリックマヨネーズ味
6.マヌルパン風 ガーリックチーズ味塩ラーメン
7.あたためておいしいカフェラテ

「#ローソンテスト品総選挙」のハッシュタグで展開され、Twitter上では多くのツイートがありました。派生して各種メディアでもテスト品が紹介されています。

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参考:ロケットニュース24

注目トレンド・コンビニが顧客共創型の商品開発アプローチを強化

顧客を商品開発のプロセスに巻き込む共創型アプローチは、以前からメーカーで実践されています。身近な食関連メーカーでは、江崎グリコによるwith Glico(ウィズ グリコ)というコミュニティサイトの事例が有名です。

今回のローソンの事例で注目したい動きとしては、顧客共創型の商品開発をコンビニが主導で行っている点です。

今までは、コンビニはメーカーに対して売り場を提供する役割がメインでした。

これからは、商品開発・テストマーケティング支援をする役割を担っていく可能性があると考えられます。

ローソンのキーコンセプトに注目

ここで、ローソンのIR資料から戦略コンセプトを見てみましょう。

2022年度のキーコンセプトには「お客さまのマインドシェアで優位に立つマーケティング戦略」との記載があります。

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引用:株式会社ローソン IR資料より

ローソンが使っている言葉の意味を読み解くと、「地域社会にとって必要不可欠な存在となり、顧客と深くつながるためのマーケティングを強化していく方針」と解釈できます。

今後も「#ローソンテスト品総選挙」のような、顧客とつながりを深めるための取り組みを強化していく方針が大いにあるのではと推測しています。

上記の動きに対するメーカー側のメリットを整理します。

メリット1. 自社だけでは情報を届けることが難しい顧客と接点を持てる
メリット2. 商品開発前からブランド認知を高める・購買意向を高めることができる

食関連メーカーにとっては、商品開発段階からコンビニとの付き合い方を考えていく重要性が、今後高まってくると予測できます。

ファミリーマートは外部コラボレーションと商品開発前の意向調査を強化

続いてファミリーマートの動きについてです。

ファミリーマートは、2022年に「コンビニエンス ウェア」「ファミマソックス」といったキーワードをつくり、コンビニで衣料品を購入するという新しい購買行動を生み出して、注目を集めています。

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参考:Business Insiderより

コンビニで衣料品という変わった仕掛け方のファミリーマートですが、裏側のテストマーケティング手法はどのようなものでしょうか。

開発秘話から読み解くと、商品開発前のマーケティング調査のプロセスが変わっているようです。

売場で購入するシーンをイメージしてもらうため、本物に近いモックアップを制作し、モニターへの意向調査(パッケージのデザインなどを確認する行程)を新たに設けたといいます。

商品の認知度をあげるために、「コンビニエンス ウェア」専用の棚を設けて、カテゴリーとしてアピールできるよう、販促物やパッケージなどのクリエイティブの質も強化しています。

先ほど紹介をしたローソンとやり方は異なりますが、販売前に顧客と接点をもち、購買意向を徹底的にリサーチした上で商品開発やマーケティング投資に踏み切るスタイルは、双方に共通していると考えられます。

購買意向調査はマーケティングの基本ではありますが、大手コンビニにおいて、より投資の強化と、調査結果の重要度を上げている流れがあることは注目すべきポイントです。

ローソン・ファミリーマートのテストマーケティング手法の変化を整理

ローソンとファミリーマートの動きに共通しているのは、商品開発の早いタイミングで、顧客に商品を見せて、フィードバックを受ける流れが強くなっていることです。

流れを整理します。

1. 商品開発段階から顧客との接点をつくり、早いタイミングでフィードバックを受ける
2. 本販売前に購買意向調査にお金と時間を投資をする
3. 前段階で獲得した認知を活かして本商品の販売を行う

上記の流れを踏まえて、食関連メーカーのマーケティングにも発想の転換が求められてくるのではないでしょうか。

・商品開発・広告宣伝・販売を切り離して考えるのではなく、統合する
・社内で議論し続けるのではなく、早いタイミングで顧客からフィードバックをもらうための方法を考える

といった発想が求められると考えます。

ご紹介したローソンやファミリーマートの動きを踏まえ、自社ブランドの仕掛けを考える機会にしてもらえれば幸いです。



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著者情報

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黒澤友貴
1988年生まれ。ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室 室長。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに6,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ#マーケティングトレースを運営。2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」を出版
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