[アメリカの食トレンド予測2023]レシピ雑誌「Eating Well」が2023年の食トレンドを分析

[アメリカの食トレンド予測2023]レシピ雑誌「Eating Well」が2023年の食トレンドを分析

アメリカの人気レシピ雑誌「Eating Well」が、自社が運営するウェブサイトのトラフィックデータ分析などに基づく、2023年の食のトレンド予測TOP10を発表しました。代替コーヒーや食のアップサイクル、脱炭素やサステナビリティに配慮した食品に加えて、3位には日本でもおなじみの「柚子(ユズ)」、5位には昆布などの「海藻」がランクインしており注目です。本稿ではTOP10の抄訳をお届けします。

2022年のアメリカの食トレンド・食業界の動向を総まとめ

2022年から得られる教訓があるとすれば、それは「食べることに対して恐れるのをやめ、喜びをもたらすものを栄養源にしていく」ことでしょう。

2022年は「健康」を再定義する1年でした。健康は個人的なものであり、一概に「これがいい」というものはありません。体のサイズについても、歌手のリゾをはじめとするセレブたちが、「外見は健康の指標にはならない(そして他人には関係ない)」と声を上げています。

健康の定義がより個人化され、ソーシャルメディアのトレンドが急速に移り変わるなか、私たちは次のトレンドを予測できるのでしょうか。今回、Eating Well編集部は2023年のトレンドを特定するために、市場に出回る新商品や食品イノベーションについてのリストをまとめました。そのうえで、トレンドデータとウェブサイトのトラフィック分析を重ね、リストを絞り込んでいきました。

2022年に私たちが目にした共通のテーマは、フードシステムを未来へと導くような、サステナビリティと製品イノベーションに大きな注目が集まったことです。2022年はEating Wellがこれまで探求してきた、おいしさと栄養とサステナビリティの交差について、多くの人が賛同していると感じられるエキサイティングな年でした。

レシピから見る2023年の食トレンド予測TOP10

1. Alternative Coffees(代替コーヒー)

多くの愛好家がいるコーヒー。EatingWell.com では2022年、コーヒーに対する関心が前年よりも36%高まりました。前年に続き、市場には代替コーヒーの商品が数多く出ています。

なかでも注目のキーワードは「サステナビリティ」です。生産者たちは、コーヒー文化をよりよいものに変えようとしています。「atomo(アトモ)」のコーヒーは、コーヒーのような味わいやカフェイン含有量でありながら、コーヒー豆を使っていません。気候変動や、生活者からの需要が増え続けるなか、atomoはコーヒー愛好家たちにもっとサステナブルな選択肢を提供したいと考えています。

もうひとつ注目を集める商品は「FigBrew(フィグブリュー」、イチジクから作られた代替コーヒーです。EatingWellのフェローであるダニ・デアンジェリス氏が試したところ、「これまでに飲んだ代替コーヒーとは全く違う」と、その際立つ独自性を感じたといいます。コーヒーの味を再現するのではなく、イチジクの甘みを苦みのなかに取り入れることで、完璧な一杯に仕上がっているのです。

また、2021年のトレンド予測以来、チコリやキノコのコーヒーについても引き続き注目しています。

2. Upcycled Foods(食のアップサイクル)

コーヒーの生産においては、大量の廃棄物が発生します。しかし、コーヒーの副産物であるカスカラ(コーヒーの実の皮と果肉部分を乾燥させたもの)は再利用され、タマリンドやレーズンの香りがするハーブティーのような飲み物として楽しむことができます。

コーヒーの生産国では長く親しまれてきたカスカラティー。近年ようやくアメリカでも入手可能になり、コーヒーショップのメニューに登場するようになりました。スターバックスにもあるカスカラ・ラテは、実際はコーヒードリンクなのです。Googleトレンドでは「カスカラ ラテ カロリー」の検索が急上昇し、「カスカラ フィズ」は前年に対して150%増となりました。

コーヒーの他にも、食品製造で生じる副産物を再利用しようと模索する生産者が増えています。生活者は、アップサイクルされたチップスやチョコレートバー、ミックス粉など、あらゆる種類の製品を、食料品の棚で目にするようになるでしょう。自然食品小売大手のホールフーズは、2023年春にオーツミルクの製造工程で発生するパルプをアップサイクルした、チョコチップクッキーを発売すると発表しました。

3. Yuzu(ユズ)

WhiteClaw(ホワイトクロ―。全米売上ナンバーワンの炭酸アルコール飲料)のフレーバーにもあるように、アメリカでは今、ユズが旬です。ユズは香りが高く酸味のある柑橘類で、日本料理や韓国料理でよく使われます。抗酸化作用があるとされ、コスメの主要成分になることもあります。

アメリカの食料品店では、トレーダージョーズのユズ辛ソースといった食品や、炭酸水や缶入りカクテル飲料で、ユズ風味の商品を見かけることが増えています。Googleトレンドでは、アメリカでの「ユズ」に関する検索が前年に対して80%増加しました。

4. Copycat Recipes(模倣レシピ)

新型コロナウイルスによるパンデミック初期には、お気に入りのレストランの味を家庭で再現する動きがありました。興味深いことにこの傾向は、自宅での隔離がほぼ必要なくなっても衰えていません。むしろ逆のことが起きています。

EatingWell.comでは、「模倣」レシピへの関心が167%も高まり、 Pinterestでは「スターバックスのエッグバイツ 模倣レシピ」の検索が前年に対して8,000%、「タコベルのメキシカンピザ 模倣」が100%と大きく伸びています。Googleトレンドでも同様の傾向が見られ、特定のレシピ検索が増加しています。

人はなぜ、本物が手に入るのに完璧な模倣を目指すのでしょうか。例えばナトリウム摂取を控えているのなら、レストランでの外食は特別な日のためにとっておくのがよいでしょう。Panera(パネラブレッド。サラダやサンドイッチの人気チェーン店)の「グリーンゴッデス チキンコブサラダ」のナトリウム含有量は1,050mgですが、EatingWellの模倣レシピではわずか479mgに抑えられています。

もうひとつのメリットは、コストの削減です。サプライチェーンの問題やインフレ、養鶏場での病害影響により、食料価格は上がり続けています。そしてそもそも、外食はお金がかかります。スターバックスのエッグバイツも、お店では2つで5ドルしますが、家庭での模倣レシピだと1.75ドルほどに抑えられるでしょう。

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エッグバイツ(Egg Bites)の模倣レシピ

5. Sea Plants(海藻)

海藻類は、2023年の食のトレンドリストのすべてに入っていると言っても過言ではありません。ホールフーズも、2023年には昆布がくると予測しています。(EatingWellの2022年リストにも入っています)

EatingWellのエディター、アレックス・ロー氏は「2023年は昆布関連の商品が増える」と話します。「昆布チップスやヌードルなど、海藻類は栄養価が高い上に汎用性があり、環境にもよいのです。昆布は空気中の炭素を吸収するし、育てるのに淡水や栄養も必要ありません。環境に配慮する時代において、これらの2点は大きなメリットと言えるでしょう」。

Pinterestの2023年予測によると、「最もホットなスーパーフードは海のもの。アジアでは古くから親しまれている海洋由来の食品およびミネラルは、ミレニアルやZ世代にも人気」とのこと。Pinterestでは、「海藻スナックレシピ」が前年比245%、「海苔レシピ」が60%と伸びています。

さらにGoogleトレンドでは、「サリコルニア(シーアスパラガス) 塩」の検索が2022年に急上昇しました。比較的新しい商品であるこのグリーンソルトは、メキシコのバハ・カリフォルニア生まれの植物性代替塩です。グリーンソルトは、塩分の多い河口や沼地に自生するサリコルニアを乾燥させて粉末にしたもので、ナトリウム含有量が少なく、塩の代替品として作られています。

6. Spritzes(スプリッツ)

カクテルを飲みたくなったり、飲みたくなかったり、あるいは微糖や低アルコールで飲みたかったり。Pinterestは2023年の飲料トレンドを「Free Spirits(フリー・スピリッツ)」ととらえ、「おしゃれなノンアルドリンク」の検索が前年より220%増加したと発表しています。EatingWell.comでは「モクテル」に関する記事やレシピ検索が118%、「ノンアル」は365%に増加しました。

また、低アルコールや微糖カクテルに対する関心に加えて、生活者はブランチや「シャワー」と呼ばれるお祝いイベントに回帰しており、あらゆるタイプのスプリッツカクテルに注目が集まっているようです。「ワインのスプリッツァーだけでなく、アペロールやカンパリ、コントラット、ジン、ウォッカ、リモンチェッロやメスカルにも注目です。なおEatingWell.comでは、スプリッツのレシピ閲覧数が52%増加しました。

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ジンとブラックベリーのスプリッツ

7. Sustainable Seafood(サステナブルなシーフード)

EatingWell.comでは、シーフードのコンテンツが常に人気です。2022年は特に、サーモンのレシピ閲覧数が前年よりも28%増加しました。ロブスターへの関心も29%増加し、エビ関連のレシピや記事の閲覧数も8%増加しました。Pinterestでも「サーモンボウル」の検索が前年より245%増加したといいます。

小売店も、シーフードのサステナビリティに注目しています。2022年10月、アメリカのスーパーマーケット業界2位のアルバートソンズは、全てのシーフードをサステナブルな方法で調達すると発表しました。

同じ頃にモントレーベイ水族館は、シーフードを「サステナブルなので買ってよい=グリーン」「よき代替品を探すことも考えつつ買ってほしい=イエロー」「購入を避けるべき=レッド」の基準で評価し、アメリカンロブスターを「レッド」に格下げしました。では、アメリカンロブスターを食べてはいけないかというと、それもまた複雑です。しかし一部の業界はすでにこの基準に対応しています。11月にホールフーズは「グリーン」か「イエロー」など同社の基準を満たさない場合は、メイン州(ロブスターの名産地)のロブスターを調達しないことを明らかにしました。

シーフードの調達や養殖方法において、イノベーションが果たす役割はますます大きくなっています。アメリカで最も人気のシーフードであるエビは現在、アメリカ全土の屋内プールで養殖されており、植物由来の代替シーフードも増えつつあるのです。

8. Adaptogen Drinks(アダプトゲン飲料)

アダプトゲンとは、ストレスを緩和するなどの作用をもつ植物やハーブの一種として、中医学やインドのアーユルヴェーダで古くから用いられてきたものです。アダプトゲンを取り入れた製品は増えており、アシュワガンダ(インドに自生するナス科の植物)もそのひとつです。現在では、スマートウォーターや缶入りのスパークリング茶といった飲料など、あらゆるものに含まれています。Googleトレンドでは、「スキサンドラ(五味子) 効能」「ロディオラ(イワベンケイ)」「最高のアダプトゲン飲料」といったキーワードの検索が急上昇しました。

ノンアルに注力するアダプトゲン飲料もあります。アルコールなしでリラックスできる飲み物を探している人にとって、アダプトゲン飲料は興味深い代替品となるでしょう。その分、価格も高めですが、ストレスフルな現代社会において、1缶5ドルほどで「落ち着いたクールな心持ち」になれる飲み物なのです。

EatingWellの栄養部門エディターであるジェシカ・ボール氏(科学修士、管理栄養士)は「アダプトゲンの効能にはいくつかのエビデンスがあります」と解説します。しかし摂取する頻度が重要なようです。「でも、多くの人たちは、アダプトゲンの効能を得るためには何週間も摂取する必要があることを知らないでしょう。毎日飲むだけの余裕がある人にとっては良い選択肢になり得ますが、時々たしなむぐらいでは効能はほぼ得られません」。

9. Ginseng(高麗人参)

アダプトゲンと言えば、中国やネイティブアメリカンの伝統医学で何世紀にもわたり用いられた植物、高麗人参に新たな関心が集まっています。血糖値を下げ、炎症を抑える効能があるとされ、サプリとしても人気があります。また、エナジードリンクでもよく使われます。

Googleトレンドでは、高麗人参に関する検索が前年に対して8%増加しました。また、有識者によると、生活者は高麗人参茶、とりわけ韓国産の紅参茶の効能に関心を寄せているといいます。

「一般的に、高麗人参は成人が摂取する分には安全だとみなされています。しかし、血糖値やインスリン分泌に影響するかどうかは、いくつかの相反するエビデンスが見られます」とジェシカ・ボール氏(科学修士、管理栄養士)はコメント。「血糖値を下げる物質は、糖尿病で薬を服用している人にとっては気になるかもしれません。新しいサプリや高麗人参のようなアダプトゲンを試す際には、事前に必ず医療機関に相談してください」。

10. Purple Tomatoes(紫トマト)

2022年9月、アメリカ農務省(USDA)は、アントシアニンの含有量を増やし、印象的な紫色になるように遺伝子組み換えされたトマトを承認しました。EatingWellのPinterestエディターで管理栄養士のアニー・グエン氏によると、「アントシアニンなどの抗酸化物質には、多くの病気の原因となる炎症を引き起こす原子結合をブロックする働きが期待されます。アントシアニンを多く含む食品を摂取することは、その抗炎症作用によって、心臓病や糖尿病患者の役に立つかもしれません」とのことです。

これまで、健康志向の生活者のなかには遺伝子組み換え食品を避ける人もいました。一方でこの紫トマトは、健康志向の生活者に訴求すべく開発されています。果たして、ターゲットユーザーに刺さるでしょうか。

ジェシカ・ボール氏(科学修士、管理栄養士)は「野菜や果物には、色や色素に関連したさまざまな種類の抗酸化物質が含まれています。“虹のようにカラフルなものを食べましょう”とアドバイスされるのはそのためです」と説明。「とはいえ、紫トマトのような、特定の抗酸化物質を増やすことを目的とした商品は、あまり市場に出回っていません。今後普及するとしたら、農業のあり方がどう変化するか、興味深いところです」。

ちなみに、紫トマトがいつ店頭に並ぶかは未定とのことです。

writing support: Sachie Mizuno



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