「キウイブラザーズ」誕生で売り上げ1.5倍 新商品が出ないキウイが売れ続ける秘訣

「キウイブラザーズ」誕生で売り上げ1.5倍 新商品が出ないキウイが売れ続ける秘訣

ゼスプリのイメージキャラクターである「キウイブラザーズ」をご存知だろうか? キウイブラザーズ誕生から売り上げは1.5倍。幅広い層に愛され続けるための秘訣とは?
※この記事は ITmediaビジネスオンライン([大村果歩]/2022年12月29日掲載)からの転載記事です。

 キウイの輸入販売を手掛けるゼスプリインターナショナルジャパン(東京都港区、以下:ゼスプリ)は、同社のイメージキャラクターである「キウイブラザーズ」を起点にしたファンマーケティングを強化し、キウイの売り上げを伸ばしている。

 企業がイメージキャラクターを制作して販促に使用するケースは多いが、キウイブラザーズは公式Twitterのフォロワーが約44万人(12月26日時点)と人気が高い。なぜキウイブラザーズは、幅広い層に愛されるキャラクターに成長したのか。PRマネジャーの栗田麻衣さんに話を聴いた。

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キウイブラザーズ誕生で売り上げ1.5倍 新商品が出ないキウイが売れ続ける秘訣

日本におけるキウイのシェア約70%を占めるゼスプリ

 ゼスプリはニュージーランドに本部を持ち、ニュージーランド産を中心とするキウイフルーツ(以下、キウイ)の輸入、販売などを手掛ける。また、日本で生産しているキウイの販売も行っている。

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ゼスプリ社のキウイ

 キウイの販売数を示す単位として「トレー」がある。1トレーは3.5キロで、年間に約3100万トレーのキウイを販売。同社独自の調査では、日本におけるキウイの販売量のうち7割程度をゼスプリが占めているという。

 キウイは流通している時期が限られており、ニュージーランド産は4~12月、国産は10~12月のみの販売。実は、2~3月はキウイが店頭から姿を消している。

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キウイの販売時期(公式Webサイト)

真面目な「グリーン」、おちゃめな「ゴールド」

 キウイブラザーズは16年に誕生。「グリーン」は真面目で正義感が強いしっかり者。「ゴールド」は陽気で、のんきな甘えん坊というキャラクター設定だ。

 キウイブラザーズは、16年の誕生以降毎年作成しているテレビCMに加えて、店頭でのプロモーション、ポスターなど幅広い販促に登場する。キウイブラザーズのグッズ付きの箱詰めキウイなども販売しており、売れ行きは好調だという。

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キャラクター設定(公式Webサイト)

 CMではキウイのおいしさや栄養の解説に加えて、「健康を楽しむ重要性」を伝えている。22年に公開した「ヘルシーなのにアゲリシャス」では、健康のために筋トレやランニングなどの運動に励むが継続に苦しむ様子が描かれ、多くの消費者から共感を得ている。

ゼスプリ キウイ TVCM 2022「ヘルシーなのにアゲリシャス」篇 60秒

キウイブラザーズは「大体18歳の男の子」

――キウイブラザーズはどういった経緯で生まれたのですか?

栗田さん: キウイブラザーズが誕生する前は、テレビCMに芸能人の方を起用していました。ゼスプリという知名度は上がっている一方で、「ゼスプリといえばあの芸能人のCM」という印象が強く、キウイそのもののおいしさや魅力が伝わり切っていないという課題感を持っていました。よりキウイそのものに興味を持ってもらえるよう、キウイをモチーフにしたキャラクターを制作することになりました。

 とはいえ、キウイは見た目が地味で魅力的ではないため、どうやってキャラクターを作るか悩みました。中身を見せなければキウイの魅力は伝わらないので、切り口を見せて、黄色と緑の果肉が見えるいまのキウイブラザーズに決まりましたね。最終決定に至るまで400以上のキャラクター案を出した、時間も労力もかかっているキャラクターです。

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キウイブラザーズ(プレスリリースより)

――確かに、CMでも「ジャガイモみたい」と紹介していますよね。「キウイの魅力を伝える見た目」以外で、制作時にこだわったポイントなどはありますか?

栗田さん: 長く愛されるキャラクターにすることは意識しています。実は、「キウイブラザーズは“大体”18歳の男の子」なんです。キャラクターはどうしても、子どもっぽい印象を持たれてしまう傾向があります。しかし、キウイ購入者の多くが大人の女性。大人からも子どもからも親しみを持たれやすいであろう、“大体18歳の男の子”という設定にしています。

 キウイブラザーズの公式Twitterでは、一人称が「俺」です。グリーンは真面目、ゴールドはおちゃめといった性格の設定だけでなく、キウイブラザーズの発言、ストーリーの作り方など、細かい部分までこだわって制作していますね。

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キウイブラザーズ(プレスリリースより)

バズワード「アゲリシャス」

――キウイブラザーズは18歳なのですね、知らなかったです! キウイブラザーズといえば「アゲリシャス」というワードも話題を集めましたね。

栗田さん: アゲリシャスは「気分をアゲる、デリシャスなキウイ」の造語です。キウイは定番のフルーツで、味があまり特長的ではないというイメージがあったため、キウイのおいしさを伝えたいと思っていました。キウイを食べた後のリフレッシュした感じや、さっぱりして元気になるような感覚を、今までにはない言葉で表現してみようと考えて生まれたのが「アゲリシャス」です。

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「アゲリシャス」も話題に(プレスリリースより)

――20年に公開された「ヘルシーなのにアゲリシャス」篇のCMも印象的でした。毎年新しいCMを制作されているとのことですが、施策を行う上でこだわっていることはありますか?

栗田さん: キウイブラザーズは目立つ存在ですが、あくまで目的はキウイに興味をもってもらうこと。施策を講じるうえで、目的はぶれないようにしています。また、「いい意味で期待を裏切る」ことも意識。宣伝っぽくなりすぎると残念に感じてしまうと思うので、一方的に押し付けるような形にならないよう気を付けています。

 時代の潮流を捉えて、消費者のニーズに合わせたテーマ選びも重視。20年に公開した「ヘルシーなのにアゲリシャス」篇は、コロナ禍で健康志向が高まったことを意識して制作しました。キウイブラザーズがランニングや筋トレにチャレンジするけどどれも長続きしない様子を描いています。健康と聞くと「~しなくてはいけない」というしがらみを感じがちですが、毎日楽しんで続けられる方がいいよね、というメッセージに多くの共感を得ましたね。

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(プレスリリースより)

販売数は1.5倍に 幅広い層に愛されるキャラクターに成長

――キウイブラザーズが登場して以降、売り上げへの影響はいかがですか?

栗田さん: キウイブラザーズが生まれる前の15年は約2100万トレー、21年は約3100万トレーを販売。約1.5倍に成長しています。若い層、20~40代の女性の購入が増え、購入頻度の増加も見られています。キウイブラザーズが幅広い層から愛された結果、多くの人にキウイを好きになっていただけたのだと感じています。

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キウイブラザーズ誕生から売り上げは1.5倍に(プレスリリースより)

――最後に、今後の展望を教えてください。

栗田さん: 毎年夏に、ブランドに対するエンゲージメントを高めることを目的にさまざまな施策を実施しています。17年には東京・表参道で期間限定ショップをオープンし、キウイを使用した特製パフェを提供。今年は「24時間ARライブ配信」を実施。キウイブラザーズの“ヘルシーな生活”をリアルタイムで紹介しました。

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17年に実施したイベント

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17年に実施したイベント

 キウイは毎年新商品が出るというわけではないので、新しいニュースを出しづらい商品ですが、“新しさ”を提供し続けることにはこだわっています。今後も、社会が目まぐるしく変化する中で、時代に合った形を模索し、新しい形でキウイのおいしさを伝え続けたいです。

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24時間ARライブ配信

元記事はこちら



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