
企業・業界動向
ユーザーのアイデアから商品価値を再発見。レシピコンテストの共創マーケティング事例
天明2年(1782年)創業のちきり清水商店は、メーカーズタウンを活用して、自社商品「まるごと粉末だし」のアレンジレシピコンテストを開催しました。レシピコンテストでの気づきや効果、商品販促への活用法、今後の展望など、代表取締役社長の清水喜市郎氏に詳しいお話をうかがいました。
お話をうかがったひと

ちきり清水商店株式会社
代表取締役社長 清水喜市郎 氏
『粉末調味料を使って何つくる?』ユーザー参加型のレシピコンテスト
―――今回、レシピコンテストのお題となった「まるごと粉末だし」はどんな商品ですか?
清水氏(以下清水):「まるごと粉末だし」は管理栄養士の中野ヤスコ先生に監修していただき開発した商品で、だしパックと違い、粉末をそのまま沸騰したお湯の中にいれて煮だすだけでだしが取れます。味は「かつおぶし・昆布・椎茸」と「いりこ・椎茸・かつおぶし」の2種類で、簡単なだけでなく、だしの素材をそのまま食べられるので栄養価も高い商品です。
―――どのような課題感からレシピコンテストを開催されたのですか?
清水:「まるごと粉末だし」はだしパックと違ってそのまま料理にふりかけて使うこともできますが、使い方のバリエーションに対して、具体的なレシピ数が足りていない状況でした。社内でも、味噌汁やスープのだしを取るというスタンダードな使い方がメインでした。
そこでメーカーズタウンを活用して、料理好きのユーザーがどんな使い方をしてくれるのか、アレンジレシピコンテストを開催することにしました。
メーカーズタウンとは
食関連メーカーと料理への関心が高い月間5,290万人※のクックパッドユーザーが、双方向のコミュニケーションを継続的に取りながらさまざまな課題を解消していく、企業マーケティングを支援するユーザー参加型のプラットフォーム(※2022年12月時点)
ユーザー発信のアイデアから新たな商品価値を発見
―――実際、集まったレシピはいかがでしたか?
清水:こんな使い方をしてくれるんだ、という驚きが大きかったですね。やはりスープ系や鍋のレシピが多くなるだろうと予想していたので、スティック野菜のディップソースや春雨サラダなど、この料理に粉末だしを入れるの?と思うようなレシピが集まったのは意外でした。
スープ系でも、肉団子スープのレシピでは肉団子の方に粉末だしを混ぜ込むことで味の深みを出していたりして。スープのうま味ではなく、具材のうま味をだすために粉末だしが使われるというのは発見でした。
なにより、どのレシピも実際食べてみてとてもおいしかったのが、一番嬉しいポイントでしたね。
―――個性の光るレシピが集まったのですね。
清水:社内でレシピを考えるとなると、どうしても「だしを取る」というイメージからスタートしてしまうのですが、 ユーザーは先入観なく自由にレシピを考えてくれたと感じています。
また、メーカー発信のレシピはつい、何か凝ったものを、と考えすぎて難易度が高くなりがちですが、日常的に料理をするユーザーのレシピは、誰でも簡単に作れておいしいものばかりでした。レシピを見たほかのユーザーがすぐに日々の食卓に取り入れられる、広がりのあるレシピだと思います。
―――レシピからの気づきはありましたか?
清水:「まるごと粉末だし(いりこ、椎茸、かつお)」でグランプリとなったレシピは「粉末だしと鶏もも肉の和風ラーメン」なのですが、ラーメンならではの満足感がありながら、罪悪感なく食べられるレシピとして社内でも大好評でした。
ちょっと身体に悪いとわかっていながらも食べてしまうラーメンですが、「まるごと粉末だし」を使うことで、「余計なものが入っていない」「罪悪感がない」レシピを実現できるというのは、新たな商品価値の発見でしたね。
受賞レシピ発表>>
https://makerstown.cookpad.com/brands/chikiri/rooms/5#room-ancho
レシピコンテストの結果を商品販促へ活かす
―――レシピコンテストの取り組みは今後どのように活かされるのでしょうか。
清水:受賞レシピでつくれぽ※キャンペーンを行って、「まるごと粉末だし」のレシピを実際に作って食べたユーザーのコメントを商品販促に活かしていく予定です。
エビデンスとしてユーザーの満足度を見せられるのは魅力ですね。商品導入のきっかけにもなり得るので、小売店への営業資料にも活用していきたいと思っています。レシピをポップにして小売店に置いてもらうなどの活用法もありそうです。
※「つくれぽ」…つくりましたフォトレポートの略。クックパッドに掲載されたレシピをもとに作った料理のおすすめポイントを、写真とコメントとタグで他のユーザーへ紹介する機能
社員のモチベーションアップにつながったユーザーの声
―――受賞レシピを決めるために試食会を行ったそうですね。
清水:そうなんです。社員で集まってレシピを分担して料理し、試食して受賞レシピを決めていきました。社員で集まって料理をするような会は初めてで、大変盛り上がりました。
社員にとっては意外性のあるレシピが多かったこともあり、「家でも作ってみたい」「もっとほかのレシピでもまるごと粉末だしを使ってみたい」という声が多く聞かれました。
―――社員のみなさんが商品の魅力を感じる機会にもなったのですね。
清水:「まるごと粉末だし」は社内販売の商品ラインナップにはなかったのですが、加えてほしいという要望があがるほどでした。試食会に参加できなかった社員に向けてレシピをコピーして社内に置いているので、持ち帰って家で作っている社員も多いようです。自社商品により愛着を持ってくれたように感じます。
―――これまでもユーザーの声を聞く機会はあったのでしょうか?
清水:ECサイト経由でアンケートをしたことはあったのですが、今回のようにレシピ投稿も含めてユーザーの反応を受け取るのは初めてでした。実際に商品をどう使っているのかを知り、ユーザー像をよりはっきり感じることは、もの作りをする上で励みになります。自分たちが間違いないものを作ってきたという実感と、もっといいものを作りたいというやる気を掻き立ててくれますね。
特にお客様と接する機会のない製造部門の社員にとっては、大きな励みになりました。妥協せず間違いないものを作らないといけない、という使命感のようなものが強くなっていると感じます。社員への好影響という意味でも、レシピコンテストはいい取り組みだったと思います。
ユーザーがレシピで「まるごと粉末だし」の自由な使い方を示してくれたことで、開発チームでは、粉末だしのブレンドについても自由な検討が生まれています。「かつおやいりこだけでなく、サバや焼きあごの粉末を入れたらどうか」など、これまでより幅広い料理を想定して考えています。ユーザーと刺激しあって新商品が生まれていくような、いいサイクルができそうです。
ユーザーコミュニティの可能性
―――今後、メーカーズタウンを活用して取り組みたいことはありますか?
清水:オンラインの工場見学や食育イベントを開催して、鰹節のことをもっと知ってもらいたいという思いがあります。鰹節をどんな製法で、どう削って商品にしているのかをはじめ、食品表示の見方や食品添加物の種類など、知識を深めてもらうことで、無添加かつ丁寧な製法で作っている商品の魅力を、より知ってもらえると思います。
―――工場見学などはこだわりや魅力を伝えるいい機会になりそうですね。
清水:ちきり清水商店は天明2年(1782年)の創業以来、伝統の手法を守りながら、鰹節の味と品質を追求してきました。その歴史や、妥協を許さない味へのこだわり、安心・安全を徹底的に追求する姿勢などを知ってもらうことで、ユーザーとの長期的な関係を築いていけると思っています。
大正時代の作業風景
―――製法のこだわりについて少し詳しく教えていただけますか?
清水:生食で食べる際には、戻りガツオのように脂ののっているものが美味しいですが、脂ののったカツオは鰹節には向かないんです。削った際に脂の多い部分が粉状になりやすく、加工しにくいというのが理由です。
カツオは1匹から節が4本とれますが、背側を「雄節(おぶし)」、腹側「雌節(めぶし)」といいます。内臓のある腹側の雌節は脂が多いので、脂の少ない雄節のほうが鰹節作りには好まれます。雌節はロスに繋がるので、加工会社は使いたがらないんです。
ちきりの商品では、削るだけでなく粉末にするなど加工方法を工夫することで、雄節ばかりではなく雌節もバランスよく使っています。加工しやすいかどうかではなく、素材の味わいや風味を大切に商品を開発しています。オンライン工場見学や食育イベントでは、そういったさまざまなこだわりを伝えていければと思います。
―――フードロスの観点からも意義のある製法ですね。今後ユーザーとのコミュニケーションで期待することはありますか?
清水:今回のレシピコンテストでは、社内では予想もしなかったレシピを知ることができました。ユーザーとのコミュニケーションにおいて、予想外の反応を受け取ることは、会社にとって非常にプラスに働きます。今後の取り組みにおいても、ユーザーから発信される反応やアイデアには大きな可能性を感じています。
食品メーカー同士のコラボも
―――ユーザー目線の商品開発でいうと、デザイン性の高いギフト商品を販売していますよね。
清水:婚礼のギフトは父の代からずっとやってきたのですが、ドレッシングなど、鰹節やだし以外の商品と組み合わせたギフトが多かったんです。鰹節やだしで勝負したいという思いから、パッケージデザインという付加価値をつけて、まずは目にとまる商品を開発しました。
中身の、鰹節やだしの味と品質には確かな自信があるので、パッケージデザインを「誰かにあげたい」と思ってもらえるものにできれば、勝算があると思っていました。婚礼をはじめ、イベント時のギフトとして好評いただいています。
「KAGOME(うさぎマイキーVer)小箱」。2023年の干支であるうさぎ年にちなみ、陶芸家リサ・ラーソン氏が生んだ日本でも人気の猫キャラクター「マイキー」がうさぎの耳をつけた限定パッケージの商品
―――今後の展望を教えてください。
清水:商品に自信があれば、パッケージなどの付加価値をつけることで、別市場でも売ることができます。これは食品メーカーにとって非常にプラスになるんじゃないかと思っています。
他食品メーカーとタッグを組み、我々の持っているノウハウを使って付加価値をつけて、販路を拡大していくお手伝いなどできればと考えています。
―――この度は、貴重なお話をありがとうございました。
ちきり清水商店がメーカーズタウンを活用して行ったレシピコンテストのお話を聞いて、ユーザー発信のアイデアから、自社商品の新たな魅力や打ち出し方が見えてくるという過程がよくわかりました。レシピという形で発信されることで、ユーザーからユーザーへと、広がりのある情報発信が生まれています。同時に、ユーザーとの共創が、社員のモチベーションアップに直結するというメリットも感じました。
メーカーズタウンは、
食関連メーカーと料理への関心が高い月間5,290万人のクックパッドユーザーが、双方向のコミュニケーションを継続的に取りながら、さまざまな課題を解消していく、「企業マーケティングを支援するユーザー参加型のプラットフォーム」です。
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- メーカーズタウン
- 食関連メーカーと料理への関心が高い月間5,290万人※のクックパッドユーザーが、双方向のコミュニケーションを継続的に取りながらさまざまな課題を解消していく、企業マーケティングを支援するユーザー参加型のプラットフォームです。(※2022年12月時点)
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