【行った】ここは都会の竜宮城。ネオンと活気に溢れた龍之都飲食街へ

【行った】ここは都会の竜宮城。ネオンと活気に溢れた龍之都飲食街へ

「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」のシリーズ19回目は、2022年10月に新宿駅そばにオープンした龍之都飲食街(りゅうのみやこいんしょくがい)。デジタル?DX?いやいや、ちょっと懐かしくて、異国情緒漂うネオンの下でワイワイ楽しむ「超体験型」の空間でした。若者を中心に賑わう都心の竜宮城を体感して、人が集まるその魅力に迫ります。
前回記事:【行った】ひとり焼肉の文化を確立した焼肉ライクの実力

進化したフードコートスタイル

レトロ喫茶やネオン酒場が流行して久しいですが、新宿駅の東口から出て徒歩2分の駅チカに、ド派手な装飾とにぎやかな音楽をとことん追究した場所があると聞いて、早速行ってきました。

これまでの「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」では、人手不足をデジタルで補ったお店や、そこで過ごす時間を大切にした体験型店舗なども多く取材してきましたが、この龍之都飲食街(りゅうのみやこいんしょくがい)は、これまでのジャンルではくくれない新しい世界感。SNSでもよく目にすることがあり、特に若者たちが惹かれるのはなぜなのかとても気になります。

16196_image01.jpg

現実を忘れられる徹底した世界観

「龍乃都」とは深海の竜宮城のある都を指すようで、言い得て妙な雰囲気たっぷりの外観です。渋谷の宮下パークや新大久保韓国横丁など、フードコートのような広いスペースで、たくさんのお店から今日の食事の場を選べるというスタイルが近年増えています。

事前にチェックした情報では「にぎやかなフードコートかな」くらいに思っていましたが、徹底して作り上げられた世界観は想像を超えてきます。

16196_image02.jpg

真っ赤に塗られた階段を一歩ずつ降りながら、階段の数だけ現実が遠ざかっていく感覚。仕事のことを忘れたい、そんな思いでアルコールを求める大人も多いと思いますが、現実逃避、浮世離れするにはもってこいの風情が漂っています。

16196_image03.jpg

階段の途中にガラス張りになっている部分があり店内が見えるのですが、なにこれ...!

ちょっと適した語彙が見つからないくらいの、派手な空間が広がっていました。入店前から期待感が高まる仕掛けがあります。

16196_image04.jpg
ここが竜宮城の入口です。この雰囲気だけで、行ってみたいと思う人も多いのではないでしょうか。

この日は月曜日だというのに、19時30分ごろに店内に入ると8割以上の席が埋まっていました。まもなくマスク着用が自己判断となる「普段の生活」が戻ってきているとはいえ、アルコール提供の飲食店の客数はまだ2019年対比では厳しいと耳にすることが多いので、この盛況ぶりには驚きました。

客層は老若男女幅広いですが、目立つのは20代前半と思しき女性の多さ。お客さんの内、7割近くは若い女性の印象です。

16196_image05.jpg

建物の中は4つのフロアに分けられ、17店舗が境界なく営業しています。まさにフードコートで、料理のジャンルは多国籍。日本各地の料理の食べ比べ、タイ屋台、中華食堂、イタリアン、鉄板焼き・もんじゃ専門店など多種多様。

スタッフにお店の仕組みを尋ねると、最初にベースにしたいお店を選んで、そのエリアに座るとのこと。迷った末に選んだのは香港ネオン屋台です。選んだお店以外からも、料理の一部は「出前」で注文可能なのがありがたいところ。

香港ネオン屋台はその店名の通り、映画でよく見る香港の屋台そのもの。フロアの中でもネオンの派手さは群を抜いています。屋台のカウンターさながらのテーブルに案内してもらいました。

16196_image06.jpg

香港ネオン屋台の天井には龍が

つまみは料理だけでなくネオンと音楽と雰囲気も

原色系のネオンだけでなく、音楽も高めのボリュームで流れています。そのせいか、お客さんも顔を寄せ合いながら、普段より大きな声でしゃべっています。興味深いのは音楽のセレクト。洋楽、邦楽などジャンルはさまざまで、ノリの良い楽曲が選ばれているようです。

16196_image07.jpg

料理がなくても雰囲気と音楽で十分楽しい気持ちになり会話も弾みますが、いやいやあくまでも飲食店最前線巡りがテーマ。あやうく肝心のミッションを忘れてしまうところでした。

注文のスタイルはいたってシンプル。紙のメニューから食べたいものを選んで、通りすがりの店員さんを大きな声で読んで頼むだけです。あえてタッチパネルなどのテーブルオーダーなどの仕組みを取り入れず、人と人のやりとりを残す姿勢もお店のコンセプトとマッチしています。

16196_image08.jpg

香港らしい辛いメニューも豊富で、マッドクラブやラム肉もあります。料理もしっかり本格的ですね。空心菜、唐辛子がたくさん乗ったラム肉、小籠包などをオーダーしました。

16196_image09.jpg16196_image10.jpg16196_image11.jpg

短時間でサクっと世界を楽しむ。飲食の場でもタイパ重視か

周りの様子を見ていると、割と回転が早いのも特徴です。1回のオーダーでダダッと頼んで、アルコールを1〜2杯飲んで1時間ほどで出ていくグループが目立ちます。20時過ぎからはさらに混雑して、席数は相当あるのに満席に近い状態が続きます。

最近、Z世代を中心に早送りで動画を楽しむなど、「タイパ(タイムパフォーマンス)」が重要視されているという傾向について、メディアでよく報じられています。もしかしたら、その波は飲食にも及んでいるのかも知れません。

一様に話し、笑い、そしてスマホで写真を撮って……みんなとにかく楽しそう。勉強や仕事のことはちょっと忘れて、今この瞬間に夢中になれる空間作りが、それを実現させているのだと感じます。

16196_image12.jpg

スタッフが言っていた通り、違うお店の一部のメニューもオーダーできます。これらは料理が届いたタイミングで個別に現金払い。辛味が蔓延した口の中を一度リセットする目的で、貝専門店から刺身の盛り合わせを頼みました。

16196_image13.jpg

徹底した世界観が選ばれる理由に

16196_image14.jpg

厚生労働省の発表によると全国の飲食店の数はおよそ140万店あるとのこと。2次会や大人数での飲み会需要が低迷している中で、人と会う、誰かと食事をする場所は偶然や通りすがりではなく、事前に調べてから「ここだ!」という店に行く傾向が、これからも強まってくるでしょう。

決して多くない機会だからこそ、その1回は大切にしたい心理。SNSなどを参考にしつつ、数あるグルメサイトで検索し、予約をするスタイルが中心になると感じています。では、どういう店が選ばれるのか。メニューの種類が多く、食事をするメンバーそれぞれが食べたいものを揃えている店よりも、特定の食材や料理などテーマを絞った、いわゆる専門店が選ばれるとも言われています。回転寿司や焼肉が好調なのはその裏付けかもしれません。

ただ、テーマを絞ると言ってもそれは食材に限ったことではなさそうです。龍之都飲食街のように、食べるものは多ジャンルから選べる魅力に加えて、屋台、ネオン、浮世離れした竜宮城というコンセプトを絞ることもそのひとつ。SNSにアップしたり「面白いお店だね」とその場で会話ができる重要性も不可欠です。

「〇〇だからこのお店を選んだ」といったハッキリとした動機が、来店の背を押しているのでしょう。そのためにはネオンやテーブル、カトラリーといった備品、装飾は妥協せずにしっかり投資することも大切と言えそうです。徹底して磨きこまれたコンセプト作りが、これからの飲食店に欠かせない要素だと感じました。

【店舗情報】
龍之都飲食街
住所:東京都新宿区新宿3丁目36−12 杉忠ビル B1&1F
地上階営業時間:
日ノ本、韓明洞、バングラ…24時間
赤煉瓦、羽衣楼…12時~24時
地下1F/2F営業時間:
小龍、炎上、肉宮…平日 15時~29時、土日・祝日 12時~29時
魚街道、貝道、TESUN、VIP…17時~29時
https://ryunomiyako.com/

※2023年2月の取材時点での情報です



この記事が気に入ったらフォロー

ニュースレター登録で最新情報をお届けします!





著者情報

著者アイコン
よしだけいすけ
2020年5月よりカラビナハート株式会社に入社。10社ほどの企業SNSアカウントのコンサル・運用支援を行っている。公式アカウントのフォロワー増や投稿のノウハウだけではなく、目的に合わせた目標設計やビジネス貢献の可視化、再現性ある仕組み作り、SNS担当者のトレーニングが得意領域。2020年4月までは株式会社すかいらーくHDのマーケティング本部にてコンテンツコミュニケーションチームのリーダー。7つの公式Twitterアカウントを立ち上げて合計210万フォロワーに。広告宣伝のほかアプリ、メルマガ、公式サイト、ファン施策、ポイントプログラムなどを担当した。店舗勤務含めて15年間在籍。
Twitter:https://twitter.com/ruiji_31
note:https://note.com/yoshiwo_note