
企業・業界動向
950万食達成のアパ社長カレー アパホテル元谷専務に聞く「串カツ田中」コラボの狙い
「串カツ田中」は、アパホテルが販売する『アパ社長カレー』とのコラボメニューを2月28日まで展開している。「串カツ田中に限らず、これまで多くのコラボをしてきたアパ社長カレーこそ、当社の“営業部長”です」と語るアパホテル元谷専務に、コラボの狙いを聞いた。。
※この記事は ITmediaビジネスオンライン([乃木章]/2023年2月23日掲載)からの転載記事です。
一部店舗を除く全国の「串カツ田中」は、アパホテルが販売する『アパ社長カレー』とのコラボメニューを2月28日まで展開している。アパ社長カレー&串カツセット 880円(串カツ:チーズ、串カツ豚、イカ、レンコン、玉ネギ)、アパ社長カレーかすうどん 850円、アパ社長カレーソース単品 150円の3品目を提供し、コラボ記念として賞品が当たるSNSキャンペーンも実施中だ。
アパ社長カレー&串カツセット
アパ社長カレーかすうどん
串カツ田中ホールディングスの坂本壽男社長は、「コロナ禍の中で値下げキャンペーンが多かったため、物価の上昇もあって付加価値のあるキャンペーンを打ち出したかった。そんな中、アパホテルさんからコラボ企画を提案していただき実現した」と説明する。
串カツ田中ホールディングスの坂本壽男社長
アパ社長カレーは、金沢カレーをベースにしたオリジナルのスパイスの風味と、牛肉と野菜を煮込んで引き出された自然の甘みが特徴。帽子を被ったアパホテル・元谷芙美子社長の顔がパッケージとインパクト抜群で、2011年の発売以来、950万食を記録している。「アパ社長カレー」を開発し、今回のコラボを企画・プロデュースし元谷社長の次男・元谷拓代専務は「カレーと串カツが合わないはずがない」と太鼓判を押す。
実際に試食したところ、アパ社長カレーかすうどんは、上品なコクと濃厚な味わいがあり、うどんとの相性が良かった。アパ社長カレーソースも、今までありそうでなかったカレーのうま味が溶け込んでいる。「串カツ田中に限らず、これまで多くのコラボをしてきたアパ社長カレーこそ、当社の“営業部長”です」と語る元谷専務に、コラボの狙いを聞いた。
元谷拓(もとや・たく)アパホテル専務、アパ社長カレープロデューサー。1975年石川県小松市生まれ。県立金沢二水高校卒、中央大学経済学部卒。大学1年時に当時最年少で宅地建物取引士に合格。北陸銀行にて3年間勤務後、アパグループに取締役として入社。常務取締役後、アパホテル専務に就任。リポビタンD300万本、ベビースターラーメン柿の種3種ミックス100万食配布など、各企業と400事例超のサンプリングやコラボレーションを実現。ポカリスエットプール(東京ベイ幕張)、キリンレモンプール(横浜ベイタワー)、味ぽんプール(新潟駅前大通)のネーミングライツに従事。累計950万食達成したアパ社長カレーをプロデュース
商売は“飽きない”が大事
――「串カツ田中」とのコラボの決め手は?
前提として、当社の会長・創業者である元谷外志雄の「ブランドアップ戦略」にのっとっています。これは各業界を支えるトップ層の中で、相性が良い企業とコラボすることによって付加価値を生み、お客さまに喜んでもらえるという戦略です。
今回の串カツ田中さんとのコラボも、当社がアパ社長カレーを売り込みたいだけではなく、アパホテルが背景にあります。ビジネスマン、観光客、スポーツ団体などアパホテルは2000万人ほどの会員を有し、その方々が串カツ田中さんのお客さまになり得るわけです。
そして串カツ田中さんにはブランド力があって、全国区でファミリー層のお客さまが多いのです。当社はビジネス層が多いので、串カツ田中を訪れるファミリー層へ訴求したい狙いがありました。
――具体的にはどのような相乗効果が期待できますか?
今回のコラボでは、串カツ田中さんでコラボメニュー食べたお客さまがTwitterやInstagramに投稿することで、アパホテルのオリジナルまくらやアパ社長カレー、さらにはアパホテル&リゾート〈大阪梅田駅タワー〉の宿泊券、「串カツ田中」お食事券などが抽選で当たります。
当社のお客さまに「串カツ田中」に足を運んでいただくきっかけになりますし、全国の串カツ田中さんでアパ社長カレーやアパホテルのPRをしていただける。非常に理になかったコラボだと思います。
――アパホテルはコラボが多い印象ですが、どういった狙いがありますか?
アパホテルのお客さまはビジネス層が一番多いですが、ビジネスホテル、ホテル&リゾート、温泉旅館とさまざまな形態を用意することで、観光客、修学旅行、スポーツ団体、訪日外国人と、あらゆるゾーンに支持されるブランドを作っています。そこで大事なのがお客さまを飽きさせないために、常にワクワク感やドキドキ感を抱いてもらうこと。そのためにいろんな異業種とコラボをしている。
当社にしても、串カツ田中さんにしても、お客さまの満足度がどんなに高くても、同じホテルに泊まり続ける、同じ串カツを食べ続けると飽きがくると思うんですよ。商売は駄洒落(だじゃれ)じゃありませんが、「飽きない(商い)」ことが大事。飽きさせないための工夫を積み重ねていかないといけません。
――飽きさせない上で、アパ社長カレーはもってこいでしたか?
カレーは中毒性がありますから、隣の席の方が「アパ社長カレーソース」に串カツをつけて食べておいしそうな匂いがしたらカレーソース単品は180円なので、つい頼みたくなってしまう。
その時に食べなくても、串カツ田中さんにまた来店した時に食べようとなるかもしれない。そして、食べながら「アパ社長カレーとコラボしているのか。そういえば今度出張だからアパホテル予約しようかな?」と気づいてくれたらいいですよね。
――実際にアパ社長カレーの商品力の高さがあるからこそ生まれたコラボですよね。
これまでもアパ社長カレーをきっかけに、多くの異業種とつながって付加価値を生み出してきた流れがあります。アパ社長カレーは当社の「営業部長」のような存在です。日本人の大多数がカレーを好きですし、「カレーは毎週食べてもいい」「朝から食べると元気が出る」といった声も聞きます。
アパ社長カレーはパッケージのインパクトが先行したり、レトルトであったりするのですが、初めて食べると「おいしくてびっくりした」と、その意外性に驚かれる方が多いのです。老若男女問わず人気のカレーはホテルの看板メニューですから、味は本物志向で開発した背景があります。1箱390円のお手頃価格で、今なら3月23日のアパ社長カレー発売記念日に向けて、10個購入してくれた方にはゴールドスプーンを1本つけていますよ。
アパ社長カレーの試食会でマンション物件の購入も
――開発当初からここまでのヒットを予想していましたか?
まさかここまでになるとは考えていませんでした。最初はアパホテルの直営レストランの味を統一するのが目的だったので、1万食販売が目標。それが、備蓄用としても東日本大震災や西日本豪雨被災地などに寄贈したり、コンビニや郵便局にも置かれるようになったり、サンリオキャラクターの「ぐでたま」ともコラボしたり、人とのつながりによって広がっていきました。
今ではアパホテルは知らないけど、アパ社長カレーは知っているという逆転現象まで起きています。実際にアパ社長カレーの試食会で、味を気に入ったお客さまに当社のマンション物件をご購入いただいたこともありました。ここまでのマーケティング・センスは、やろうと思ってもなかなか身につけることはできないでしょう。
結局は人間関係作りにおいて、アパ社長カレーがきっかけで人と仲良くなれるようなシチュエーションが生み出されやすくなっていると思いますね。
アパホテル元谷専務(左)と串カツ田中ホールディングスの坂本壽男社長
元記事はこちら
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- ITmedia ビジネスオンライン
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