ライフPB「ビオラル」の「手に取りやすいオーガニック」戦略とは?

ライフPB「ビオラル」の「手に取りやすいオーガニック」戦略とは?

食品スーパー大手の「ライフ」のナチュラル系プライベートブランド「ビオラル」が、今ひそかに人気を集めています。ライフ店舗内にコーナーを設けるだけでなく、ビオラル単独で店舗を出すほどに注力しているブランドですが、好調の理由は一体何なのでしょうか。2023年3月にオープンしたばかりのビオラルパルコヤ上野店を、FoodClip編集部が取材しました。

スケールメリットで叶う「初心者も手が届く値段」

「ビオラル」は、食品スーパー大手のライフコーポレーションが2020年12月からスタートしたプライベートブランド(以下PB)。「オーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナビリティ」がコンセプトで、体に優しい素材や製法、健康や自然志向に合わせた商品が展開されています。

「ビオラルのターゲットは、オーガニック・ナチュラルなライフスタイルをこれから始めてみたいと思っている人。比較的手頃な価格帯と幅広い品揃えで、初心者にもオーガニック食品を受け入れやすく感じてもらうことを重視しています」と語るのは、ライフコーポレーション広報部の小川啓氏。

確かにビオラル店内を見ていると、オーガニック食品にも関わらず値段がそこまで高くないことに気づきます。例えば、オーガニック系スーパーで買うと500円以上することもあるマヨネーズは、ビオラルの「こめ油とリンゴ酢で作った平飼いたまごのマヨネーズ」だと429円、高いもので1,000円以上することもある「有機アガベシロップ」は591円です。

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左が「こめ油とリンゴ酢で作った平飼いたまごのマヨネーズ」429円、右が「有機アガベシロップ」591円

他のオーガニック系スーパーと比べて手頃な価格設定にできるのは、首都圏・近畿圏に約300店舗を展開するライフのスケールメリットがあるから。大ロット生産を前提に開発を進められるので、他のオーガニック系スーパーよりも手の届きやすい価格設定が可能になっています。

ローカル野菜で産地支援と環境配慮

ビオラルのコンセプトの1つが「ローカル」。野菜売り場を見ると、いかにローカルを大切にしているかがわかります。パルコヤ上野店には「東京育ち」の野菜コーナーがあり、清瀬で育った「ココナス」や府中で育った「東京トマトよみがえり」などが販売されています(季節により品ぞろえは変わります)。

店舗に近いエリアで栽培されるローカル野菜を積極的に取り扱うのは、地元の農家支援や、食材の輸送時にかかる環境負荷を軽減する観点からなのだそう。

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ビオラル・パルコヤ上野店の野菜売り場にある「東京育ち」コーナー。清瀬や府中の農家と提携して仕入れている

商品開発は幅広さと「置き換えやすさ」がカギ

現在のPB「ビオラル」の商品ラインナップは約300点ほど(2023年3月時点)。圧倒的な商品数を開発できるのも、ライフのスケールメリットを生かせるからこそですが、商品開発の優先度は「顧客の購入頻度の高いもの」とのこと。食用油・しょうゆ・塩・砂糖などの基本調味料や、玄米・雑穀などの主食品、乾物や加工肉など、普段の食生活で使用頻度が高い食品を開発することで、これまで買っていた商品をビオラルの商品に置き換えやすくしているのだとか。

店内でビオラルの商品を見ると、「無塩せきあらびきウインナー」や「鶏肉と塩だけでつくったサラダチキン」など、どれも素材・製法のこだわりを全面に出したネーミングになっています。ぱっと見てインパクトがある商品名にすることで、顧客の目を引きやすくする狙いもあるそうです。

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ビオラルパルコヤ上野店の加工肉コーナー

トレンドを取り入れた若者目線のオーガニック弁当

ビオラルで特に人気が高いのが、弁当や惣菜。30代〜40代の層を取り込めるよう、トレンドを意識しながら開発しているそう。「苦手意識を持つ人も多い玄米を精進料理や和食に使うのではなく、流行のアジア料理に取り入れるなどして、若年層にも手に取っていただきやすいように考えています」(商品業務部・惣菜担当の中島敬一氏)。

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ビオラルパルコヤ上野店のお弁当コーナー。カオマンガイやケイジャンチキンライスなどが並ぶ

トレンドのヘルシーな豆腐干を使った「豆腐干とデミグラスソースのラザニア風」は、ビオラルで人気の惣菜の一つ。全国の小売店を対象に毎年行われている「お惣菜・お弁当大賞2023」で、特別賞を受賞しています。
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「豆腐干とデミグラスソースのラザニア風」(645円)

弁当や惣菜を手頃な価格設定にできるのは、スーパーのライフと同じ食品加工センターを利用しているから。カット済みの野菜や肉・魚などをセンターから仕入れ、基礎調味料の仕込みを含む加工調理の7割をビオラル店内で行うことで、コストダウンにつなげているそうです。 

「ビオラルなら買える」から行きたくなる

新しくオープンしたビオラルパルコヤ上野店は「他店では手に入りにくい珍しい商品を多く取り扱っていることが強み」(店長の長谷淳平氏)だといいます。

例えば、米の栽培だけでなく精米過程まで有機にこだわった「宮城県産 有機栽培米 ひとめぼれ」(2,138円)や、ネクストトレンドと言われているA2ミルク(βカゼインのA2タイプが含まれる牛乳で、消化しやすくタンパク質の含有量が多いなどのメリットがある)を使った「ピュアナチュールオーガニックヨーグルトプレーン」(537円)などが並びます。

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右が「宮城県産 有機栽培米 ひとめぼれ」(2,138円)

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真ん中が「ピュアナチュールオーガニックヨーグルトプレーン」(537円)

珍しい商品ラインナップにしている理由は「ビオラルなら買える、と思ってもらいたいから」(長谷氏)。オーガニック食品を好む顧客からは特定の商品をリクエストされることも多いといいます。その要望に応えることでオーガニック初心者だけでなく、上級者にも足を運んでもらうきっかけを作っているそう。

また上野店では玄米や惣菜の量り売りも行っています。玄米はこだわりの6銘柄から3分づき・5分づき・7分づきと精米の程度をオーダーでき、玄米が苦手な人でも食べやすい分づき米を必要量だけ買えるのがうれしいところ。また量り売りの惣菜は「雑穀とチェーチのファラフェル風」など、パック詰めの商品とは差をつけてチャレンジングな味つけのメニューを展開しているのだとか。

必要量だけを購入できる量り売りは、フードロス防止の観点からも近年注目されています。顧客が食材を希望通りにカスタマイズできたり、百貨店や飲食店よりも身近なスーパーで珍しい料理に出会って気軽に挑戦できることは、ビオラルの店舗ならではの体験価値と言えるのではないでしょうか。

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ビオラルパルコヤ上野店の精米所では、玄米6銘柄が販売されている

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ビオラルパルコヤ上野店の惣菜コーナーで販売されている「雑穀とチェーチのファラフェル風」

「親しみやすいオーガニック」で、さらなる若年層獲得に期待

ビオラルパルコヤ上野店の店舗から1km圏内は8割が単身か2人世帯で、年齢別人口構成は30代が19.8%と最も高く、次いで40代が17.4%となっています。上野以外で関東圏にある店舗は吉祥寺、下北沢、新宿と、いずれも20代〜40代の利用客が多いエリア。ほとんどの店舗が駅近の立地で、「オーガニック初心者」をメインターゲットの一つとした戦略がうかがえます。

2023年中にライフのほぼ全店舗でビオラルコーナーを設置し、夏ごろには有明ガーデン店もオープン予定とのこと。敷居の高すぎない、親しみやすいオーガニックライフを提案するビオラルがどのように拡大していくのか、今後の展開に目が離せません。

※写真の品ぞろえ・価格は2023年3月時点のものです。
※商品の価格はすべて税込価格です。



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