3,000円で高級キャビアが当たる“グルメガチャ”も 冷食自販機「ど冷えもん」ヒットの理由

3,000円で高級キャビアが当たる“グルメガチャ”も 冷食自販機「ど冷えもん」ヒットの理由

コロナ禍で内食・中食が増え、急伸した冷凍食品市場。街中で冷凍食品の専門店を見かけることも増えましたが、特に人気を集めているのが冷凍食品自動販売機の「どえもん」です。注目すべきは、「キャビアガチャ」「肉ガチャ」など、高単価でユニークな商品ラインナップ。開発の背景や人気の理由、今後の想定ニーズについて、「ど冷えもん」を開発したサンデン・リテールシステム株式会社の広報室長・芳賀日登美氏と、冷凍食品自動販売機のセレクトショップを運営する株式会社Dプランの代表取締役・内藤大輔氏にお話をうかがいました。

「ど冷えもん」とは?

「ど冷えもん」とは、サンデン・リテールシステム株式会社が2021年に発売した冷凍食品自動販売機のこと。ストッカーの種類や中の仕切りを変えることで、さまざまなサイズの冷凍食品を販売でき、アイスのような小さい商品からラーメン、ピザ、フレンチのフルコースで登場するような料理まで、幅広くフレキシブルに対応できるのが大きな特徴です。

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2021年1月に発売した「ど冷えもん」

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「ど冷えもん」の内部。縦吊りのコイルが回転して商品が取り出し口に送られる構造。仕切り板を左右にずらせば商品サイズに合わせて格納できる

売る側・買う側の使いやすさも支持を得る理由の一つ。利用者がスマホ感覚で商品を購入できる液晶タッチパネルは、売る側の在庫・売上管理も兼ねており、クラウドに契約すればどこからでもデータを確認できます。また温度管理も優れており、マイナス15℃以上に温度が上がった状態が90分続くと自動で販売中止になるなど、品質管理も万全です。

高単価でも好調、エンタメ感満載の商品

「ど冷えもん」で販売している商品でも特に人気が高いのが、「キャビアガチャ」や「肉ガチャ」のような、エンタメ性の高い商品。人気YouTuberが訪れるなどして注目され、各メディアで取り上げられることが増えてきています。

東京・中延にある冷凍食品自販機のセレクトショップ「PiPPoN!(ピッポン)」では、いち早く冷凍食品にガチャガチャ(カプセルトイ)のシステムを取り入れました。

店長の内藤氏によると、1回3,000円で最高35,000円相当のキャビアが当たる「キャビアガチャ」は、キャビアの養殖をしている友人と普及のアイデアを考えていたときに思いついたそう。「エンタメ要素を取り入れることで、普段キャビアを手に取らない層の認知拡大に繋げる狙いです。ガチャを楽しまれるお客さまは、1回だけでなく連続で数回購入されるのが特徴ですね」(内藤氏)。

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キャビアガチャは1回3,000円。1等は35,000円相当のキャビア100gが当たる

その他にも、最高で10,000円相当のシャトーブリアンが当たる「肉ガチャ」や本場韓国の惣菜など、さまざまな商品がラインナップされています。「当店のコンセプトは、スーパーやコンビニでなかなか売っていないお取り寄せの商品を、24時間気軽に買えること。ネット通販で購入していたような商品を、送料も時間もかけずに楽しめるのが魅力です」(内藤氏)。

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宮崎牛のガチャも1回3,000円。1等は10,000円相当のシャトーブリアンが当たる

「PiPPoN!」の商品で好調なのは、1食1,000円前後のもの。また「PiPPoN!」以外の場所に設置されている「ど冷えもん」でも、同様に高単価商品の売り上げが好調のようです。「食卓に出しても外食の味と遜色なく、高級感のある商品が人気です」(芳賀氏)。おかず以外では、ジェラートなどのスイーツも好調とのこと。ユーザーは「ど冷えもん」の商品で、ガチャガチャのようなエンタメ感や非日常の食を味わう特別感を楽しんでいると言えそうです。

ちなみに「PiPPoN!」は原則無人営業ですが、無人でも商品の魅力を最大限伝えるために、人の温かみを感じられる手書きのPOPを添えて工夫しているのだとか。「例えば当店では冷蔵・常温食品の自販機も設置していますが、その自販機で販売している『キムチの素』は、使い方や漬けるのにおすすめの野菜をPOPで紹介しています」(内藤氏)。

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「キムチの素」の商品POP

コロナ禍で飲食店や女性客のニーズが増加

もともとコンビニの冷凍・冷蔵ショーケースをメインに販売していたサンデン・リテールシステム株式会社。コンビニの販売傾向から、個食向けの需要が伸びている状況を踏まえ、2019年から「ど冷えもん」の本格的な開発に着手したそうです。

当初はBtoBで冷凍食品メーカーをターゲットにしていましたが、2020年のコロナ禍以降、思わぬニーズが生まれたといいます。

「営業自粛等で困っている飲食店からの問い合わせが増えました。冷凍食品自販機であれば、営業時間外の販売が可能となり新型コロナによる制限を受けないため、多くの飲食店から注目が集まったのです」(芳賀氏)。

飲食店からの要望を受け、大きなサイズの冷凍商品にストッカーの形状を合わせるなどの修正が重ねられました。扱いやすさや管理のしやすさから多様な販売スタイルに対応できるので、人手不足に悩む飲食店でも広く活用されるようになったそうです。

「ど冷えもん」の利用客にも、女性客が増えるという想定外の変化があったそう。人と対面する必要がないため身だしなみを気にせず、24時間いつでも買い物できる点が後押しとなっていて、女性が一人では行きづらい焼肉店などの商品も好調なのだとか。

空きスペースの有効活用で異業種参入も

「ど冷えもん」を導入しているのは、飲食店だけではありません。駅の高架下、駐車場、洗車スペースなど、空きスペースの有効活用アイデアとして食以外の会社でも導入されています。

「ど冷えもん」は容量を確保しつつ、コンパクトに設計されていることも特徴。人通りが多いにも関わらずスペースが限られていて普段は活用が難しい、駅ナカや駅近、大きな集合住宅のある場所も立地の好条件のようです。

また「PiPPoN!」の内藤氏によると、道の駅とも相性が良いのだそう。「道の駅は観光客が多く客単価が高いのが特徴。営業時間外の売り上げにも繋がります」(内藤氏)。

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車通りの多い第二京浜沿いにある東京・中延の「PiPPoN!」。横に長く奥行きが浅い店舗スペースで活用が難しいと言われていたが、冷食自販機を並べて設置するのには最適だった

コロナ後はお土産・インバウンド需要がカギ

コロナ禍の内食・中食需要で一気に利用が増えた冷凍食品自販機。現在は制限が緩和され外食機会が増えつつありますが、今後も活用の幅は広がりをみせています。

「飲食店では来た人がお土産として『ど冷えもん』の商品を買っていくことが多いです。冷凍だからこそ消費期限が長く、時間が経ってからも楽しめるため購入に繋がりやすいよう」(芳賀氏)。地方のアンテナショップでも利用されており、「ど冷えもん」で購入した商品を気に入ったら通販でも購入する、といったリピートに繋がる動きもあると言います。

「PiPPoN!」の内藤氏にも数多く問い合わせが来るそうです。地方の中心街から離れた場所にあるビジネスホテルからは、周辺に飲食店がなく利用客が食事に困るため設置して欲しいという要請があったそう。

「海外観光客の増加でインバウンド需要も狙えると考えていますが、ホテルに冷凍食品自販機だけあっても電子レンジがないと解凍できなかったり、そもそも冷凍なのでお土産として持ち帰れなかったりといったデメリットがあります。今後は常温で日持ちする商品を増やすなどして、冷凍以外にも食品自販機のバリエーションを増やしていきたい」(内藤氏)。

「ど冷えもん」には冷蔵・常温食品を販売できる「ど冷えもんMULTI」もあり、今後お土産・インバウンド需要に応えることが期待できそうです。

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2023年1月に発売された「ど冷えもんMULTI」

人手不足でもリソースを気にすることなく、サブビジネスとして有効利用できる「ど冷えもん」。飲食店に人が戻ってきたあとも、普及拡大の勢いはさらに増していくでしょう。



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