アプリで注文、その日に届く生鮮ECの新スタイル

これまで、専業主婦世帯を主体に築かれてきた日本の買い物環境。共働き世帯や単身世帯の増加に伴い、その生活スタイルも大きく変化する中、買い物に関する課題解決に取り組んでいる「クックパッドマート」のピックアップ型生鮮ECの仕組みをご紹介します。


世帯構造の変革と買い物事情の変化

日本では長い間、母親が夕方に町の商店街やスーパーで夕飯の買い物をしたり、サザエさんの三河屋サブちゃんように、誰かが常時在宅していることを前提とした御用聞きスタイルの配達など、専業主婦世帯を前提とした買い物環境がつくられてきました。

しかし昨今では、共働き世帯や単身世帯の増加に伴い、自分の欲しい食材を求めて商店街の精肉店や鮮魚店などの専門店を巡るような買い物スタイルは減り、忙しい時間の合間にスーパーへ立ち寄り、短時間で買い物を済ませるという生活者が多くなっています。

生活者にとって、食材を1箇所で揃えることのできるスーパーはとても便利な一方で、自宅周辺スーパーの品揃えに食生活が依存してしまい、本当はもっと新鮮な魚が食べたいけど諦めるなど、食生活に物足りなさを抱えている人も多いのではないでしょうか。

また小さい子どもを持つ家庭では、保育園や学童のお迎えなどもあり、平日に買い物へ行く時間すら取れないというケースも多く、現在の生活スタイルと買い物環境は必ずしもマッチしているとは言えません。


日本の食品EC化率2.64%
食材宅配サービスの課題

ここ数年で、ネットスーパーをはじめとする食材宅配サービスも多く登場していますが、2019年度の経済産業省の発表によると、日本の全産業のEC化率5.79%に対し、食品EC化率は2.64%と低く、食品はEC化が進んでいる業界とは言えません。その背景や理由を生活者の視点で考えてみると、以下のような点が挙げられるのではないでしょうか。

まず、多くの食材宅配サービスが配達希望時間帯を16時から18時、18時から21時のように2-3時間枠で指定するため、配達待ちで外出ができない、急な仕事の都合で配達指定時間帯に帰宅が間に合わないなど、共働き世帯や単身世帯にとっては行動が制限されるなどの不自由さがあるかもしれません。

もちろん、留守宅の玄関前や宅配ロッカーへ「置き配」をしてくれるサービスも増えてはいますが、オートロック付きマンションで置き配のできない住宅環境であったり、冷蔵対応の宅配ロッカーが普及していなかったりと、生活者のさまざまな住宅環境に対応することは難しいように思います。

次に、宅配サービスの大きなネックとなるのが送料の問題です。従来のネットスーパーや食材宅配サービスでは、最低注文金額が定められているものや、一定の注文金額に満たない場合には別途送料がかかるものが多くあります。数日分のまとめ買いや、ホームパーティーの買い出し、持ち帰り荷物がかさ張る生活日用品類などでは大いに利用価値がありそうですが、毎日の食材での買い物利用となるとハードルとなりそうです。

また例えば、数日分の食材をまとめ買いする場合にも、先々までの献立をある程度考えておく必要や、食材ごとの適した保存をおこなわないと届いた時には新鮮だった食材も食べる頃には鮮度が落ちてしまうなど、生活者側の手間やスキルが必要とされます。


買い物課題を解決する「ピックアップEC」

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これら買い物に関する課題を解決する仕組みとして、2018年9月、クックパッドが都市圏に提供を開始したのが生鮮食品EC「クックパッドマート」です。

クックパッドマート公式サイト:https://cookpad-mart.com/

クックパッドマートは、生産者と生活者をつなげるECプラットフォームで、地域の農業生産者、精肉店、豆腐店などの専門店、市場の仲卸など多様な生産者が出店して生鮮食品を直接販売しています。サービスの特徴としては、アプリから注文した食材を地域の店舗・施設に設置された生鮮宅配ボックス「マートステーション」で受け取る「ピックアップEC」というスタイルです。

ECでありながら自宅で配達待ちをする必要がなく、帰宅途中など自分の都合の良い場所で都合のいい時間に商品を受け取りに行けることから、ライフスタイルを問わず、無理なく買い物をすることができます。

生鮮食品販売のため、特にターゲットの絞り込みは必要としていませんが、アプリに寄せられるご意見やSNSでの投稿をみてみると、日中仕事をしている共働き世帯の利用が多く、他にも単身世帯の利用者も多いようです。


朝注文して当日に受け取り
市場で買うような新鮮な食材

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クックパッドマートは、朝8時までに注文すれば当日に商品を集荷・配送するため、17時以降には利用者が選んだ受け取り場所「マートステーション」で商品を受け取ることができます。

この当日集荷・配送の仕組みにより、朝収穫した野菜や当日精米したお米、市場に入ったばかりの魚介、食肉加工したばかりの肉、フレッシュチーズなど、これまでのECでは取り扱いが難しく、直接お店や市場に行かなければ手に入らなかった新鮮な食材を日々の食生活に取り入れることができます。

また、1品から送料無料で購入できるため、週2−3回利用するスーパーで買い物をするような感覚でその日や翌日に必要な食材だけを購入して、新鮮なうちに食べ切る負担の少ない買い物として利用できるのが特徴です。


共同配送で送料無料を実現!

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商品の受け取り場所である生鮮宅配ボックス「マートステーション」は、QR錠を備えた専用の冷蔵庫で、新鮮な食材を適切な温度で保存することが可能です。購入者のみがアプリからQRコードで解錠することができ、購入者以外が冷蔵庫を開けてしまうこともありません。また、購入者の商品をマートステーションへ共同配送することで、配送コストを抑え1品からの送料無料を実現しています。

マートステーションは、ドラッグストア、コインランドリー、カラオケボックスなどの店舗の他、集合型商業施設、マンションの共用部などに設置され、2020年2月からは東京メトロ駅にも設置を開始しています。現在は東京都23区内、神奈川県横浜市、川崎市に70箇所ほど設置されています。今後も利用者の生活動線上への設置を進めていき、2020年内には数百箇所への設置を目指しています。

マートステーション設置に参画する小売店やサービス店においては、注文商品のピックアップに来店する利用者のついで買い購入や、商圏範囲として400〜500m以内の周辺地域に住む主婦層・家族層へアプローチできる点を新たな商機と捉えているようです。


生活者との新たなタッチポイントに期待

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「ピックアップEC」という新しい買い物スタイルによって、生活者の食事情がどのように変化していくのかも、とても興味深いところです。

またクックパッドマートでは4月17日より、別途送料を支払うことで商品を自宅まで届ける宅配サービスを開始し「体調不良で外出できない」「週末用に大量購入するため持ち運びが大変」など、マートステーションでの受け取りが困難な場合にも対応できるようサービスを拡充しています。在宅勤務や休校措置など、外出自粛の長期化によって需要もさらに高まることが予想されます。

これまでのクックパッドが、オンラインのレシピサービスでは得られなかった生活者との直接的でリアルな接点を持ち、それが新たなマーケティングの場としても展開可能となれば、今後まったく新しいカスタマージャーニーが誕生することもあるかもしれません。

text support : Emiko Tanaka





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