
生鮮
薬膳の考えを食事に取り入れて、季節の不調をセルフケア
身体には良さそうだけど、なんだか難しそうなイメージの強い薬膳。
実は、基本的な考え方に沿って身近にある食材を取り入れながら、食事のバランスを整えるだけでもいいんです。忙しいビジネスマンにこそ知ってほしい薬膳のポイントを解りやすくご紹介していきます。
ちょい足しでセルフケアできる、薬膳
世の中の動きが大きく変わった今日この頃。新しい生活リズム、新しい仕事の進め方など昨今の大きな変化に奮闘されている方も多くいらっしゃるかと思います。これだけ大きな変化が起これば、当然私たちの心と身体にいつもより大きな負担がかかります。
そのため、なんだかイライラしたり食欲がなくなったりと、パフォーマンスが上がりにくくなることも。病院に行くほどではないけれど、なんとなく不調が続いているという方は、薬膳の考え方を「ちょい足し」する方法で、今日からセルフケアしませんか?
薬膳の考え方って?
薬膳についてお伝えする際、筆者がいただくご質問のなかで圧倒的に多いのは「そもそも、薬膳ってなに?」というご質問です。聞いたことはあるけれど、馴染みがないという方もまだまだいらっしゃるようです。
薬膳とは、中医学の理論に基づき季節や体調に合わせた食材と生薬を用いて、健康増進や病気予防などの目的を達成するための食事全般を指します。簡単に言えば、毎日の食事や間食で自分をケアしましょう、という考え方なのですね。
薬膳の起源は古く、約3000年前の中国で既にその考え方が用いられていたという記録があります。そして薬膳のベースとなる中医学は、古代中国の哲学的思想である唯物論と陰陽五行説を基盤とし発展してきました。
この世は「気」から生じていて、すべてのものは「陰」と「陽」で成り立ち、さらに5つの性質に分類されて相互に影響し合っているという概念です。昼と夜・天と地・表と裏など、どちらが欠けてもバランスを崩してしまいます。人間も自然の一部と考える中医学では、私たちの心身も例外ではありません。ココロやカラダに不調が起きているということは、どこかでバランスが崩れているというアラート。健康はすべての人にとって大切な資本ですから、アラートを放っておくわけにはいきません。不調の解消には様々な方法がありますが、忙しい毎日でセルフケアに手が回らないこともあるでしょう。そこで薬膳の出番です。
冷えたら温める・熱があれば冷やす・多すぎるものは減らす・足りないものは補う、つまり調和を図ることが中医学的な健康のコツ。そして調和を図るために食材や生薬のパワーを取り入れること、それが薬膳なのです。
なんだか難しそうだし面倒くさそうと思ったあなた、ご安心ください。簡単な法則をつかめば、毎日の食事や間食で薬膳を実践できます!なぜなら、私たちが普段食べている食材にも十分な薬効が期待できるからです。季節や体調に合わせて必要な食材を摂り、不要な食材を避けるように心がければ、自炊する時間のない方でも薬膳パワーを取り入れることができますよ。
その不調、気温のせいかも
吹き出物・頭痛・目の充血・イライラ・高血圧…、気になる症状はありますか?これらは気温が急激に上がると起こりやすい、カラダの不調です。日差しも暖かくなって気持ちのいい季節なのに、なぜこんなトラブルが起こるのか?薬膳を含む中医学の観点から解説していきます。
まずは、私たちの身体に起こる変化について。暖かくなってくると「陽気」が増え、私たちの身体は新陳代謝が活発になっていきます。冬眠から目覚めるイメージですね。冬の間にため込んだものが排出されるのもこの季節。
そして、それらのはたらきを司る要が「肝」です。「肝」とは肝臓だけでなく、爪や目、体内に血液を貯蔵する機能、感情のコントロールなど、私たちの身体に備わっている機能や役割を含んでいます。この「肝」のはたらきをアップさせることで、冬仕様のカラダから春仕様のカラダへ変わる手助けをすることができ、春を快適に過ごせるようになります。
ただし、ひたすら「肝」を酷使するとオーバーヒートして体内のバランスが崩れ、消化機能にも影響を与えます。そうすると訳もなくイライラしたり、目が充血したり、高血圧や頭痛、のぼせという症状が表れます。一方で、モヤモヤ・クヨクヨ・ついため息をつく・食欲がわかない、という症状が出る場合も。そして吹き出物ができやすくなるのも、デトックスしようと「肝」が頑張っている証拠なのです。では、こんな症状が出たら何を食べればいいのでしょうか?
ちょい足しするだけ、
すぐ使える薬膳テクニック
1番簡単な方法は、「旬のものをいただくこと」です。スーパーに並ぶ食材はもちろん、コンビニや外食先でも春限定のメニューに注目してください。
例えば、デトックスを促すためにはほんのり苦みのある「小松菜」や「にら」を取り入れましょう。身体にため込んだ余分なものを排出する手助けをしてくれます。いつもの定食に1品、おひたしを添えてくださいね。うどんやそばのトッピングには「山菜」を選びましょう。
また、頭に血が上った感じがするときや、イライラするときは「シソ」や「セロリ」など香りの強いものをどうぞ。熱を取り除いて、興奮を沈めてくれます。エスニック料理のサラダやお刺身の横に添えられた、香りものをチェック。
そして、なんだか元気が出ない、気分が塞いでいるときは「柑橘類」や「ジャスミン茶」がおすすめです。スッキリとした華やかな香りは、詰まったストレスを流してくれます。気分転換には、ドライフルーツのコーナーやお菓子コーナーでオレンジピールを探してください。ジャスミン茶はコンビニでも買えますね。
消化機能を健やかに保つためには、主食は「お米」をチョイス。「長芋」や「カボチャ」など、ホクホクした野菜も取り入れてくださいね。
このように、食べ慣れた食材で自分をケアできるのが薬膳のいいところ。外食派も自炊派も、ぜひ毎日の食事に薬膳パワーを取り入れて春の不調を乗り切りましょう!
今!食べたい食材たち
「肝」のはたらきを助けてくれる食材と、消化機能を守る食材をご紹介します。
今日は何を食べようかな?そんな時にご活用ください。
【野菜編】
肝:セロリ、にら、ほうれん草、小松菜、紫蘇、ふきのとう、菜の花、さやえんどう
消化機能:米、長芋、カボチャ
【肉・魚介類編】
肝:ハマグリ、あさり、鯛、鰯、ホタテ、豚肉、レバー
【果物編】
肝:オレンジ、グレープフルーツ、苺
消化機能:ナツメ
【ドリンク編】
緑茶、ジャスミン茶、菊花茶、ミントティー
いつものメニューで薬膳パワーを取り込もう!
スーパーやコンビニで買える身近な食材も、それぞれが薬膳パワーを秘めています。忙しい毎日で食事まで気が回らない、というあなたでも大丈夫!少し工夫するだけ、選ぶだけで、薬膳パワーを取り入れることができますよ。ちぎっただけ・切っただけのサラダも、季節と自分の身体に合わせれば立派な薬膳料理です。
行きつけのお店で、自分にぴったりな食材が入ったメニューを選ぶことも薬膳と言えるでしょう。難しく考えず、出来ることから始めてみませんか?薬膳パワーで、あなたの毎日が少しでも快適になりますように。
著者情報

- Biz薬膳アドバイザー 安藤穂奈実
- 「食で人生を切り開く」をモットーに、Biz薬膳アドバイザーとして活動中。
ビジネスマンに向けて仕事で成果を出すための簡単に取り入れられる薬膳を伝える他、マンツーマンの食生活サポートも。