
日配
食ビジネスで始める「営業改革」虎の巻
人材不足や働き方改革、テレワーク推進などによって、ビジネスの効率化が求められています。
そこで、営業活動における共通課題に対する改善方法として、BtoBビジネスの業界で注目を集め、成果を上げている戦略的マーケティングについてご紹介します。
最近よく見るあのCM
ここ数年、テレビのほか電車やタクシーの車内などで「社内業務を改善するITツール」のCMをよく目にしませんか?
たとえば、営業部長役の照英さんが、ふくらはぎのヒラメ筋を見せつけ、中途入社の社員を唖然とさせる「ベルフェイス」や、松重豊さんが「それさぁ、早く言ってよぉ~」と嘆く「Sansan」のCMなどが特に有名ではないかと思います。
SaaS(Software as a Service)と呼ばれるこれらのサービスは、社内ITの管理を担う情報システム部門で使われるものではなく、営業マンをはじめ営業事務に関わる実務者たちが、便利なアプリケーション感覚で使うことによって、営業効率を改善する管理ツールです。
ビジネスの変化にどう対応する?
上記のような法人向け(BtoB)の営業管理ツールが躍進している背景には、人材不足や働き方改革の推進によって、業務の効率化を迫られてきたことが関係しており、今後もテレワークが推進されるとなれば、その流れはさらに加速していくと予想されます。
ビジネス業界や各企業ごとの構造や慣例の違いによって、業務効率化に向けた変化のスピードには大きな格差が生じているようです。ビジネスとしての歴史が長く、原料生産・商品製造・流通卸し・小売など業種が多岐に渡る食ビジネスの領域においても、まさにそうした状況にあると感じており、組織体制の改革と同時に業務の改善が求められているのではないかと思います。
今回は営業における業務改善を目指す方々が「自分ごと化」できるよう、主にBtoBのマーケティングや営業活動におけるよくある課題点や、それらの改善策として注目されている考え方をご紹介します。
BtoBのマーケティングや
営業活動における課題
皆さんの会社では、以下のような課題をお持ちではないでしょうか?
- 新規取引先の開拓をおこないたいが営業のリソースが足りない。
- 大量にあるアタック先のリストに対して、どこの誰に注力して営業をかけていけばいいのかわからない。
- エース営業マンに業務が集中してしまい、なんとか効率化したい。
- 担当営業が異動や退職してしまってからの引き継ぎに時間をとられてしまう。
- 関係を築いてきた先方担当者が異動してしまったことで、顧客との状況がガラリと変わってしまった。
- 受注確定前の営業アクションやステイタスが可視化しづらい。
- 一度受注した顧客との関係性維持や継続受注が難しい。
ある程度の規模の組織であれば、少なくとも1つは当てはまる部分があるのではないかと思います。これらの課題の共通ポイントは「営業の属人化」です。
このような課題の解決方法として、冒頭でご紹介したツールが提供されているわけですが(「ベルフェイス」は1,3、「Sansan」は2,4,5の解決を主に強みとします)前述の通りツールを入れただけでは宝の持ち腐れになってしまいます。
根本的な改善を図るためには、課題に対して必要な「組織」と「意識」の両方を整えなければ意味がないのです。
そのために参考になりそうなキーワードを2つご紹介します。アルファベットやカタカナが少し多めになりますが、できるだけ解りやすく説明していきたいと思います。
キーワード 「ABM(アカウントベースドマーケティング)」
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、アメリカで発祥したマーケティング手法のひとつです。7-8年の間で主流のトレンドになり、日本でもこれを取り入れる企業が数多く現れてきています。
ABMとは、全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連繋によって、ターゲットアカウントからの売上最大化を目指す戦略的マーケティングと定義されています。要するに、「売上拡大のために顧客のあらゆる情報を組織内で可視化し共有する」という考え方です。
引用:究極のBtoBマーケティング ABM/日経BP社
https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/16/258180/
全社的に顧客情報を整理し可視化することで、注力ターゲットを戦略的に定め、伝えるメッセージを明確化し、より高い成果を得ることができます。
顧客の経営状態や的確な組織体制の把握、担当窓口の異動情報などを、担当者個人だけでなく組織全体できちんと把握しておくことで、予想以上の効果を生みます。
「そんなの当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、顧客情報は担当者以外にはブラックボックスになりがちで、いざ実現しようと手を動かしてみると意外と難しいことがわかると思います。
キーワード 「THE MODEL」
経理や商談管理ツールとして馴染みの深い企業も多い「Salesforce」が提唱している、非常に合理的な営業管理の考え方です。
「THE MODEL」では営業活動を4つの段階に分けて分業し、段階ごとの成果や進捗を管理していきます。
【マーケティング】
商材のコンセプトやターゲットに即したメッセージ戦略を考え、自社HP・広告出稿・展示会・商談会・セミナーなどで潜在顧客との接点を創出し獲得する。
活動を通して獲得した「見込み顧客数」がKPI(=追うべき数字になる)。
【インサイドセールス】
すぐに営業が対応するような商談には繋がらなさそうだが、今後取引の可能性のある見込み顧客に対し、定期的なコミュニケーションやアプローチを図り、顧客状況の管理や商談化への興味関心の醸成を行い、案件の創出を目指す。
【フィールドセールス】
課題が露見している顧客に対して具体的な提案活動を行い、受注を得る。
【カスタマーサクセス】
一度受注した既存顧客の受注継続やさらなる受注拡大のために、継続的なフォローをおこなう。
この4つの段階プロセスに、前述のABMの考え方をプラスし、効果的なターゲティングをおこなうことで、さらなる効率化につなげることができます。
もちろん業界のビジネス構造によっていきなり全てを分業するのは難しいことですし、全てをこの通りに実行する必要はありません。ただ、これを自社のビジネスに当てはめて最適化していくことで、業務改善のきっかけになるのではないかと思います。
まずは自社の課題を整理するのが大事
各企業にいろいろな課題があるので、まずは課題を抽出しながら、それぞれに合った考え方や手法を取り入れていくことが重要だと思います。また、体制や業務内容の急速な変化はネガティブな反応も引き起こしやすいので、目的を明確に共有しつつ理解をしてもらいながら、忍耐強く進めていくことも大切です。
当社でもご説明した内容の全てをそのまま取り入れるのではなく、必要なものや時期を見極めながら進めていますし、私自身も前職でお世話になった大手IT企業の先進的な取り組みをお手本にしながら、自社で改善できるよう取り組んでいる真っ最中です。
同じような課題や悩みをお持ちの方とは、情報交換もしたいと思いますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
▶FoodClipお問い合わせ:https://foodclip.cookpad.com/contact/
著者情報

- ヒガシナオキ
- BtoB向けWebメディアを運営する会社に新卒で入社し、大手IT企業のメディアを使ったマーケティング支援に携わる。
2019年、クックパッドに法人向けサービスの営業として入社し、社内の営業管理やマーケ施策を並行して推進する中で「FoodClip」の立ち上げに関わり、2020年よりマーケティング専任に。
FoodClipでの担当領域はマーケティング・フードテック周辺。
休日は劇団をやっています。
https://twitter.com/nao181715